(以下、読売新聞【京都】から転載)
=============================================
熱意十分 課題は漢字
献身的に入院患者の介助にあたるダルマワティさん(中)とウランダリさん(左)(山科区の洛和会音羽病院で)
インドネシアやフィリピンとの経済連携協定(EPA)で、看護師・介護福祉士を目指す研修生の来日が相次いでいる。府内では先陣を切って洛和会音羽病院(山科区)が研修生を受け入れ、両国の女性計6人が働いている。そのうち2月末に赴任した2人のインドネシア人研修生を訪ね、話を聞いた。(雛谷優)
「ダイジョウブ?気を付けて。ゆっくり歩いてね」。同病院のリハビリ病棟の一角。日本で看護師の国家試験合格を目指すダルマワティ・ダムリさん(29)とウランダリ・サフィトゥリさん(24)の2人が、脳出血後のリハビリに励んでいた同区の男性(73)の両脇を抱え、声がけする姿があった。
2人の仕事は、看護助手として入院患者らに対し、入浴や食事、衣服の着脱、歩行などの介助にあたることだ。
介助を受けた男性は「マヒもあるので、私の話す言葉は分かりにくいだろうけど、ちゃんと聴き取ってくれている。ぜひ頑張って国家試験に合格してもらいたいなあ」と話した。
EPAにより日本での就労が認められるようになったため、2人をはじめ、インドネシアからは先端医療を学んだり、母国に送金したりすることを目的に200人を超す研修生が第1陣として昨年8月に来日。研修生はまず半年間、日本語研修を受け、その後、各病院などに派遣された。
政府間の取り決めで、外国人研修生は、看護師の場合3年、介護福祉士は4年の滞在期間中に資格を取得できなければ、帰国しなければならないルールになっている。
ダルマワティさん、ウランダリさんは、ともに母国で看護師の経験があるが、今は助手の立場で仕事をこなしつつ、国家試験に向けた勉強に励む毎日。来日から約1年半がたち、患者や同僚との日常会話にはほぼ不自由しなくなったが、それでも頭を悩ませるのが「漢字」の存在だ。
患者の既往歴や連絡先、病状などは、コンピューター端末で閲覧する電子カルテに記載され、そこには漢字で書かれた専門的な医療用語がびっしり並ぶ。
例えば「手(て)」。見聞きする分には十分対応できるが、これが「義手(ぎしゅ)」のように別の漢字と組み合わさり発音まで大きく変わると、たちまち理解が難しくなる。国家試験でも問題に多くの難解な漢字が並び、外国人研修生たちには大きなネックになっている。
半年の日本語研修を終えた後、研修生たちが初挑戦した2月の国家試験では、看護師志願の受験者82人が全員不合格。2人もこの中に含まれていた。2人を身近で見守る同病院看護部の上野美帆主任は「文章の読解が難しいみたい。せめてルビがあれば……」と顔を曇らせる。
2度目の国家試験は来年2月。ウランダリさんは「合格できたら、この病院でまた働きたい」と話す。一方、ダルマワティさんの胸には「人の命を扱う責任の大きい仕事。合格して一人で働くようになった時にミスなく看護できるか」と不安がよぎることもある。
青木かおり師長は「私たちが忘れてしまいそうな優しさや家族を大事にする気持ち、わざわざ言葉の通じない国で働こうという意志の強さなど見習うところは多い」とエールを送る。
研修生の受け入れプログラムを支援する国際厚生事業団(東京都)の担当者によると、やはり日本語の読解に苦戦する研修生が多く、研修生や病院側からは受験可能期間の延長を求める声が寄せられているという。
様々なハンデを乗り越え、異国で奮闘する研修生たち。日本人にとっても、医療現場の人材不足改善のため、彼女らの活躍が強く望まれるはずだ。せっかくの新制度を形骸(けいがい)化させない工夫が必要だと感じた。
(2009年12月21日 読売新聞)
=============================================
熱意十分 課題は漢字
献身的に入院患者の介助にあたるダルマワティさん(中)とウランダリさん(左)(山科区の洛和会音羽病院で)
インドネシアやフィリピンとの経済連携協定(EPA)で、看護師・介護福祉士を目指す研修生の来日が相次いでいる。府内では先陣を切って洛和会音羽病院(山科区)が研修生を受け入れ、両国の女性計6人が働いている。そのうち2月末に赴任した2人のインドネシア人研修生を訪ね、話を聞いた。(雛谷優)
「ダイジョウブ?気を付けて。ゆっくり歩いてね」。同病院のリハビリ病棟の一角。日本で看護師の国家試験合格を目指すダルマワティ・ダムリさん(29)とウランダリ・サフィトゥリさん(24)の2人が、脳出血後のリハビリに励んでいた同区の男性(73)の両脇を抱え、声がけする姿があった。
2人の仕事は、看護助手として入院患者らに対し、入浴や食事、衣服の着脱、歩行などの介助にあたることだ。
介助を受けた男性は「マヒもあるので、私の話す言葉は分かりにくいだろうけど、ちゃんと聴き取ってくれている。ぜひ頑張って国家試験に合格してもらいたいなあ」と話した。
EPAにより日本での就労が認められるようになったため、2人をはじめ、インドネシアからは先端医療を学んだり、母国に送金したりすることを目的に200人を超す研修生が第1陣として昨年8月に来日。研修生はまず半年間、日本語研修を受け、その後、各病院などに派遣された。
政府間の取り決めで、外国人研修生は、看護師の場合3年、介護福祉士は4年の滞在期間中に資格を取得できなければ、帰国しなければならないルールになっている。
ダルマワティさん、ウランダリさんは、ともに母国で看護師の経験があるが、今は助手の立場で仕事をこなしつつ、国家試験に向けた勉強に励む毎日。来日から約1年半がたち、患者や同僚との日常会話にはほぼ不自由しなくなったが、それでも頭を悩ませるのが「漢字」の存在だ。
患者の既往歴や連絡先、病状などは、コンピューター端末で閲覧する電子カルテに記載され、そこには漢字で書かれた専門的な医療用語がびっしり並ぶ。
例えば「手(て)」。見聞きする分には十分対応できるが、これが「義手(ぎしゅ)」のように別の漢字と組み合わさり発音まで大きく変わると、たちまち理解が難しくなる。国家試験でも問題に多くの難解な漢字が並び、外国人研修生たちには大きなネックになっている。
半年の日本語研修を終えた後、研修生たちが初挑戦した2月の国家試験では、看護師志願の受験者82人が全員不合格。2人もこの中に含まれていた。2人を身近で見守る同病院看護部の上野美帆主任は「文章の読解が難しいみたい。せめてルビがあれば……」と顔を曇らせる。
2度目の国家試験は来年2月。ウランダリさんは「合格できたら、この病院でまた働きたい」と話す。一方、ダルマワティさんの胸には「人の命を扱う責任の大きい仕事。合格して一人で働くようになった時にミスなく看護できるか」と不安がよぎることもある。
青木かおり師長は「私たちが忘れてしまいそうな優しさや家族を大事にする気持ち、わざわざ言葉の通じない国で働こうという意志の強さなど見習うところは多い」とエールを送る。
研修生の受け入れプログラムを支援する国際厚生事業団(東京都)の担当者によると、やはり日本語の読解に苦戦する研修生が多く、研修生や病院側からは受験可能期間の延長を求める声が寄せられているという。
様々なハンデを乗り越え、異国で奮闘する研修生たち。日本人にとっても、医療現場の人材不足改善のため、彼女らの活躍が強く望まれるはずだ。せっかくの新制度を形骸(けいがい)化させない工夫が必要だと感じた。
(2009年12月21日 読売新聞)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます