(以下、gooニュースから転載)
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広がる「子どもの貧困」 ひとり親世帯では2人に1人
2015年2月27日(金)
「子どもの貧困」が広がっている。厚労省が毎年行っている国民生活基礎調査に「相対的貧困率」によると、2012年度の調査では、子どもがいるひとり親世帯に限ると54.6%で、実に「2人に1人」という状況だ。
NPO法人「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」が運営する「夜の児童館」に通う小学6年生の女子児童(12)は、親にお金のかかることを求めないという。母子家庭で、生活保護を受けながら区営住宅で暮らすが、「うちは貧乏なんだ」と気づいたのは3歳のころだ。
病気がちの母(50)が、「お金がないなあ」とため息をついた。友達が自動販売機で缶ジュースをポンと買ってしまうことに驚いた。必要な費用が払えず、大好きだったチアリーディングも続けられなかった。常に周囲との差を感じてきた。
「友達みんなが持ってる雑誌を読んだこともないのに『持ってる』とウソをついたこともあります。学校で自分の意思をちゃんと表現できないかんじ」。だんだんと内にこもるようになり、不登校になったこともある。
「本当はもっといっぱいやりたいことがある。でも母には言いません。恨んだこともない」
国際的に見ても、日本の子どもの貧困率は高い。経済協力開発機構(OECD)の10年のまとめによると、日本は加盟34カ国中、10番目に高い15.7%。子どもがいるひとり親世帯に限ると、事態はより深刻で、50.8%に跳ね上がる。加盟34カ国の中で、ワースト1だった(平均31.0%、韓国は未算出)。
こうした「貧困」を裏付けるデータがあっても、まだピンとこない人は多いだろう。その理由について、同NPOの事務局長の天野敬子さんがこう指摘する。
「日本の貧困は、途上国の貧困とは違います。とりあえず服を着ているし、義務教育だから学校にも通っている。雨風をしのげる家もある。だから現実感が乏しい」
夜の児童館の無料塾に集う他の子どもたちも、見た目は「ふつう」だ。
「安いファストファッションがいくらでもあります。コンビニに行けば100円で大きめのパンも買える。けれど、わずかでも費用のかかる課外活動に参加できない、栄養バランスの高い食事が取れないなど、落ち着いて暮らせる状態にはありません」(天野さん)
だが、NPOなどの活動に「つながる」ことのできる人や、わずかでも収入がある人は、貧困層でも恵まれているほうだという。
13年5月、大阪市北区天満のワンルームマンションで、母(28)と男児(3)の遺体が見つかった。死後数カ月が経過していた。部屋に冷蔵庫はなく、食べ物は食塩だけ。電気、ガスは止められていた。財布に現金は一円もなく、預金の残高は数十円。「おなかいっぱい食べさせたかった」と書かれたメモが残されていた。
12年9月には、東京都小金井市で、生活保護を受けていた無職女性(43)が長女(12)と無理心中を図り、死亡する事件もあった。天野さんは、こう指摘する。
「保護者に社会とつながる力がない場合、働くこともできず、どんな行政支援があるのかも知らない。親も子もどんどん孤立していく。見えない『貧困』はもっとあると思います」
※週刊朝日 2015年3月6日号より抜粋