多文化共生なTOYAMA

多文化共生とは永続的なココロの営み

外国人の教育 学習できる支援整備を

2015-02-25 10:10:57 | 多文化共生
(以下、神奈川新聞から転載)
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【社説】外国人の教育 学習できる支援整備を

2015.02.24 12:05:00

 外国人が多く生活する横浜市中、南区などで、学齢期の外国人の子どもが多く通う市立小中学校が混乱している。日本語支援の必要な子どもに対して教員が圧倒的に足りず、満足に授業を理解するにはほど遠い状態が続いている。

 教育行政はこれまで外国人の存在を想定しなかった。結果、外国籍の子どもが一定数いる学校に最大で教員2人の国際教室を設置できることが唯一の対応策となっている。

 一方、日本語指導は個々のレベルに合わせた細やかさが求められる。現状では到底、外国人の学習権を保障しているとは言い難い。

 年々、新たな外国人の家族が日本で暮らし始めているだけに、学齢期の子どもが地域の学校に編入する例は今後も続く状況が予想される。

 国は早急に、外国人のための教育カリキュラムを整備すべきである。先進国として、外国人の子どもが十分な教育を受けることができない国であり続けていいはずはない。

 中、南区の外国人が多い学校では市教育委員会や区、国際交流ラウンジをはじめ、信愛塾といった地域のNPO法人が人材を提供したり、補習教室を開いたりして懸命に支えている。学校はそうした助けを得ながら、試行錯誤でどうにかしのいでいるのが実態である。

 逆に言うなら、外国人の教育は地域の裁量任せで、問題に目を向けない地域であれば、子どもは放置されかねない状況だ。日本が批准する国際人権A規約や子どもの権利条約に明確に違反しており、大きな問題だと言わざるを得ない。

 二つの条約は、国籍や在留資格に関係なく学齢期すべての子どもに無償で教育を受けさせることを求めている。すべての外国人を日本人と同様に義務教育の対象とすることが求められている。

 だが現状では、外国人の場合は希望する場合だけ、在留資格に関係なく無償で学校に受け入れている状態にとどまっている。在留資格がない子どもの所在の把握など乗り越えるべき課題はあろうが、誠実に条文を実現していくべきだろう。

 日本語教育のノウハウも、各学校で模索している状態である。入学、編入前、あるいは通学しながら学習の前提となる語学力を集中して身に付けるための専門機関を求める声が、現場からは数多く上がる。前向きに検討してもよいのではないか。

外国にルーツを持つ子どもたちの学びの保障

2015-02-25 10:10:21 | 多文化共生
(以下、SYNODOSから転載)
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2015.02.19 Thu
外国にルーツを持つ子どもたちの学びの保障――多文化共生センター東京の現場から
枦木典子・中野真紀子 / 多文化共生センター東京

外国にルーツを持つ子どもたちは、近年、急速に多国籍化、多民族化しており、その多くは定住し、将来、地域社会を構成する住民として共に生活していく可能性が大きい。しかし、こうした子どもたちへの教育は、国レベルでも自治体レベルでも十分に保障されているとは言えない。

多文化共生センター東京は、外国にルーツを持つ子どもたちの学びの場を保障するために様々な活動を行なってきた。中でも、学齢を越えて来日した学齢超過の子どもたちに対し学びの場を保障するために「たぶんかフリースクール」を開校し継続した支援を行っている。ここでは、「たぶんかフリースクール」の現場からとして外国にルーツを持つ子どもたちが、学びの場につながることへの困難な状況について述べたい。


外国にルーツを持つ子どもたちの教育

2014年6月発表の法務省「在留外国人統計」による在留外国人数は2,086,603人、そのうち241,187人は「子どもの権利条約」で学ぶ権利を保障されている18歳以下の子どもたちである。

文部科学省によると「外国人の子どもには義務教育への就学義務はないが、公立の義務教育諸学校へ就学を希望する場合には日本人児童生徒と同様に無償で受け入れており、日本人と同一の教育を受ける機会を保障している」としている。それでは実際にどのくらい人数の外国籍の子どもたちが日本の学校に在籍しているのだろうか。



2013年5月の文部科学省「学校基本調査」では、日本の学校に在籍している外国籍の児童・生徒数(国立、公立、私立の合計)は、小学校では41,249人、中学校で22,248人、高等学校12,701人となっている。相当する年齢の子どもの在留数と比較するために在留外国人統計を年齢別に見てみると、2013年6月の時点で6歳から11歳の子どもは66,880人、12歳から14歳の子どもは34,605人、15歳から17歳の子どもの数は37,593人という数がでている。つまり小学校相当年齢で38%、中学校相当年齢で36%、高等学校相当年齢では66%の子どもが日本の学校に通っていないということになる。もちろん民族学校やインターナショナルスクールに通っている子どももいるため一概に指摘することはできないが、中にはどこの学校にも属さず、学びの場から切り離された子どもがいるだろうことは考えられる数字である。

また、これら18歳以下の子どもたちがどのような在留資格で日本に滞在しているかを調べたところ、定住や永住などの在留資格が全体数の8割を超えていることがわかった(法務省在留外国人統計「在留資格別 年齢・男女別 在留外国人」)。つまり彼ら・彼女らが将来的には、母国に帰らずに日本に定住する可能性は大きい。


さまざまな状況の子どもたち

外国にルーツを持つ子どもたちの背景はさまざまであり、置かれている状況も複雑である。

日本で生まれたが両親が外国籍であるために自身も父母の国の国籍となる子どもたちがいる。出生時から日本の社会で育てばとくに問題はないように思われるが、家庭内言語が日本語以外であるため日本語の習得がうまくいかず、勉強に十分についていけずに学校生活に影響が出るケースがある。

また幼少期に来日し日本の学校に早くから転入した場合も、年齢によっては母国語と日本語のどちらも母語として確立できず複雑な思考ができない「ダブルリミテッド」の状態となる子もいる。しかし日本語の日常会話はできるために、学校側に日本語指導が必要な生徒と判断されずに適切な支援が受けられない場合もある。

年齢別の在留人数をみると、14歳では11,000人台だが、15歳では12,000人を超えている。多くの国が15歳や16歳で義務教育相当の学校教育を修了するため、それを区切りに来日する子どもたちがいるということである。

それだけではない。「在留外国人数」および「外国籍の児童・生徒数」に含まれない子どもたちもいる。例えば両親のどちらかが日本人であったために本人は日本国籍を持っているが様々な事情で他の国で育っていた場合、日本人として入国すると「在留外国人数」には含まれない。しかし実際の状況は外国籍の子どもたちと同じである。

また、一定期間を海外で暮らして帰国した日本国籍の子どもたちは「帰国生」とされる。文部科学省「学校基本調査」によると、2012年度は小・中・高で10,476人の帰国生がいる。帰国生の中には、うまく日本の学校生活に適応できなかったり、複雑な家庭事情のせいで落ち着いた環境を得られなかったために一貫した学習を受けられなかったりという状況で問題を抱えてしまう子どもたちもいる。

このように子どもたちはさまざまな状況でそれぞれの困難を抱えている。そのため「外国籍」「外国人」ではなく、彼ら・彼女らを「外国にルーツを持つ子どもたち」として支援をしているのが「多文化共生センター東京」である。


多文化共生センター東京の活動

多文化共生センター東京は、2001年から外国にルーツを持つ子どもたちの教育支援を行っている認定NPO法人である。外国にルーツを持つ子どもたちの相談活動及び情報提供、学びの場や居場所の提供を行っている。とくに日本の義務教育相当年齢にあたる15歳を超えて来日した「学齢超過」の子どもたちを支援している。

外国にルーツのある子どもたちは、来日した時に学齢であれば小中学校へ編入することができる。また、15歳以上で9年の教育を修了していない場合は地域によっては夜間中学に編入できる。しかし母国で9年の教育課程を終えた学齢超過の子どもたちは中学校には編入できず、日本語指導など公的支援も受けられない。勉強したくても場所はなく「自力で」高校進学を目指さなければならない厳しい状況に置かれている。

「たぶんかフリースクール」は、こうした学齢超過の子どもたちへ学びの場を提供するために2005年に立ち上げられた。これまでに300人以上の子どもたちが学び、高校に進学している。荒川区と新宿区にあるフリースクールでは、今年度も約60人の子どもたちが数か月後の高校入試にむけて勉強している。


多文化共生センター東京の現場から

日本では、外国にルーツの持つ子どもたちの学ぶ権利が十分に保障されているとは言い難い。そこで、ここでは多文化共生センターの現場からみえる現状について述べていく。


1.学びの場につなぐ情報提供や相談

来日した外国にルーツの持つ子どもたちと保護者が直面する第一の壁は、教育についての情報取得が困難なことである。

日本の教育制度や手続き、どこでどのように学ぶかの情報を得るために相談場所をいくつも探したのちに多文化共生センター東京へ来る相談者は多い。資料2のグラフからわかるように来所での相談件数は、2010年からは、毎年100件を超え、さらに増加傾向にある。今年度は、11月段階ですでに荒川校、新宿校を合わせ約120件となっている。電話等の相談件数も合わせるとその数はさらに多い。1日に2件、3件と来所の相談者が重なる日もある。保護者や子どもたちが学びの場への情報をいかに必要としているかがわかる。




相談内容は、多岐に渡っているが、小中学校編入に関する相談、日本語や学習指導の場を求めての相談が多い。とくに学齢を越えて高校進学をめざす子どもたちの学ぶ場所を求めての相談は切実である。来所した学齢超過の子どもたちの多くは、「たぶんかフリースクール」で学び、高校へと繋がっている。

他に子どもの来日前での相談や経済的事情、在留資格等についての相談も増えている。遠く海外からの電話相談もある。

また、卒業生から大学進学や就労についての相談も増えつつある。

●相談の具体的事例から

1)小中学校への編入 区役所の窓口での対応

公立中学校への編入希望に対し、日本語が十分でないと判断され「日本語ができるようになってから相談に来てください」と対応されたため、家庭で半年、あるいは1年を過ごしている子どもたちがいる。

Aさん兄弟は、来日して区の窓口に公立中学校への編入の相談に行ったが、日本語の問題を指摘され、公立中にすぐに編入できず、家庭で1年を過ごした。その間、下学年編入の相談にも行ったが認められず、日本語を学ぶ場を探しで多文化共生センターに来所した。「たぶんかフリースクール」で学習後、あらためて区の窓口へ同行し下学年への編入許可を得て、現在は中学校生活を送っている。


2) 保護者の情報取得

Bくんは、日本のレストランで働く父親にひきとられ13歳で来日した。日本で子どもを学校に通わせることができるとは思わず、Bくんは父を手伝ったりしながら、1年半を家で過ごしていた。しばらくたって日本人の知人が心配して「たぶんかフリースクール」に連れてきて勉強することになり、その後に中学校につながった。卒業後は再び「たぶんかフリースクール」で学び高校進学を希望しているが、母国と日本の学習内容が違うことと13歳で学習から離れたため、忘れてしまっていることも多く教科でほとんど点数がとれず苦労している。


3)高校入試での資格や手続き(学齢超過の子どもたち)

(1)提出書類に訳をつけること
高校入試の出願で母国での成績証明書の提出の際に訳をつけることを求められることがある。その場の口頭の説明ではなく、あくまでも公的機関での訳をつけるようにと言う高校もあった。保護者は、対応に苦慮し高額で訳をつけた書類を提出している場合もある。


(2)厳封した書類の提出を求められること
日本の中学校は、厳封した成績書類を提出しているが、来日した外国にルーツを持つ子どもたちは、厳封した成績書類は持って来ていない。そもそも厳封という文化がない国が多く成績証明書をインターネットから取得する国もある。また、例え厳封してあったとしても、書類に訳をつけたり、内容に問題がないかを確認したりするために開封が必要である。にもかかわらず、再度母国に書類を郵送し厳封して提出するように求める高校もある。


上記のいくつかの事例から外国にルーツを持つ子どもたちが、学びの場へつながることへの困難さと学びたくても学校教育から疎外された状況にあることがわかる。とくに公的機関の対応に対しては、「どのくらい日本語ができるようになったら学校に入ることができるのだろうか」「なぜ、国の公式なサインもあり、証明されている書類なのに認められないのだろう」などと多くの不安と疑問ももっている。学校教育への受け入れを拒否されている、あるいは、自国に対して差別があるのだろうかという気持ちを話す保護者もいる。子どもたちができる限り早く学びの場へつながるために、受け入れ側の意識や体制の改善が必要である。


2. 学齢超過の子どもたちの学びの場と公的支援

中学生の高校進学率は98%を超えており、大多数の生徒は、公教育のサービスを受け、高校進学を果たしている。公教育の狭間に置かれている「たぶんかフリースクール」に在籍する、外国にルーツを持つ学齢超過の子どもたちは、公的支援が受けられない状況にある。


学齢超過の子どもたちの状況

母国で9年の教育を修了している学齢超過の子ども達は公的データにカウントされていないため、実態が把握されず公的支援を受けられない状況にある。そのため、学びの場や進学のための情報取得が困難である。行政の窓口では、学齢であれば、小中学校への編入ということで教育委員会が対応するが、この子どもたちは、多文化推進課などの窓口で相談することになったり、外国人相談窓口、教育相談センターなどを転々としたりしている場合もある。

やっと「たぶんかフリースクール」のような民間の学びの場につながっても、教材費、交通費(通勤定期使用)などの軽減はされず、公立学校に在籍している生徒たちが当たり前に受けているサービスを受けることができない。そのため保護者の経済的負担は大きい。就学援助「受験生援助チャレンジ支援貸付事業」の利用ができない場合もある。

「虹の架け橋事業(定住外国人の子どもの就学支援事業)」によって、学齢超過の子どもたちも2012年度より積算対象となり一部公的支援が受けられるようになったことは、大きな励ましであった。(資料3参照)

しかし、唯一の公的支援である「虹の架け橋事業(定住外国人の子どもの就学支援事業)」は、2015年2月を持って終了する。

たいへん厳しい教育環境に置かれている学齢超過の子どもたちであるが、唯一の公的支援である「虹の架け橋事業(定住外国人の子どもの就学支援事業)」終了にともなう後継事業として文部科学省は、平成27年度概算要求で新規に「定住外国人の子どもの就学促進事業」として1.2億円を要求中である。しかし、予算としては、大幅な減額となり、子どもたちの学びの場や進路が閉ざされることのないようさまざまな形での行政の支援が必要である。


終わりに

外国からの観光客数は、すでに1000万人を越えており、また、2020年のオリンピックを見据えて、さまざまに国際化計画が進行している。

しかし、外国にルーツを持つ子どもたちへの学びの場の保障については多くの課題が山積している。長期に渡り学校教育につながらない子どもたちがいること、その理由の一つとして日本語習得の問題が、受け入れ側の行政の窓口から指摘されている状況は、子どもの学ぶ権利の視点からも国際化とは言い難い。

また、学齢超過の子どもたちについて言えば、虹の架け橋事業の後継事業として概算要求が提出され、公的支援継続の可能性が出てきたことは前進である。しかし、予算規模の減少などを考えると課題は大きい。

多様な文化的背景を持つ子どもたちの多くは、将来、多様性のある地域社会の担い手となる豊かな可能性をもっている。共に暮らす住民として、外国にルーツを持つ子どもたちにとって切実な問題である学びの場が保障され、充実していくよう求めたい。