(以下、日本経済新聞から転載)
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経営者は国籍を超えられるか
2013/12/4付
武田薬品工業が英製薬大手幹部のクリストフ・ウェバー氏を来年6月に社長に迎える人事を決めた。ウェバー氏はフランス出身の47歳で、これまで武田との接点はない。異例のスカウト人事の狙いはグローバル化の加速である。
江戸時代に創業した武田は老舗中の老舗だが、一方で海外企業の買収や幅広い人材の登用に積極的な企業としても知られる。
取締役8人のうち外国人が2人を占め、次代の取締役候補であるコーポレート・オフィサーをみると、11人中7人が外国人だ。
そんな企業でも、トップに外国人が座るのはやはり驚きだ。人事を決めた長谷川閑史社長は「買収した海外企業を本社から統治する能力が問われていたが、我々に力が足りずできなかった」と述べ、新社長にグローバル化の先頭に立ってもらう考えを示した。
見知らぬ外国人がいきなり日本企業に来て、本当に力を発揮できるのか。過去にも外国人トップを起用して、経営の混乱を招いた日本板硝子のような例もある。
そうしたリスクを知りつつも、武田の大胆な「実験」に注目したい。日本の製薬産業は欧米企業に比べて立ち遅れが指摘され、競争力を高めるために、人材を世界に求めるのは自然な発想だ。
同社に限らず、多くの日本企業で有能な現地人材の獲得や登用は待ったなしの課題だ。年配の日本人男性で固めた取締役会を改革し、国籍や性別、年齢を多様化すれば、組織の内側から新たな活力がわき上がるかもしれない。
一方で、グローバル化にたくましく対応できる日本人幹部を数多く育てるのも重要だ。そのためのひとつの道が、事業本部単位の海外移転である。日本たばこ産業は海外事業の司令塔をスイスに置き、パナソニックは航空機向け娯楽機器の事業本部が米国にある。
こうした部門を単なる出先扱いせず、一定の権限と魅力あるポストを用意すれば、意欲的な外国人が門をたたき、彼らと机を並べる日本人も育つだろう。
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経営者は国籍を超えられるか
2013/12/4付
武田薬品工業が英製薬大手幹部のクリストフ・ウェバー氏を来年6月に社長に迎える人事を決めた。ウェバー氏はフランス出身の47歳で、これまで武田との接点はない。異例のスカウト人事の狙いはグローバル化の加速である。
江戸時代に創業した武田は老舗中の老舗だが、一方で海外企業の買収や幅広い人材の登用に積極的な企業としても知られる。
取締役8人のうち外国人が2人を占め、次代の取締役候補であるコーポレート・オフィサーをみると、11人中7人が外国人だ。
そんな企業でも、トップに外国人が座るのはやはり驚きだ。人事を決めた長谷川閑史社長は「買収した海外企業を本社から統治する能力が問われていたが、我々に力が足りずできなかった」と述べ、新社長にグローバル化の先頭に立ってもらう考えを示した。
見知らぬ外国人がいきなり日本企業に来て、本当に力を発揮できるのか。過去にも外国人トップを起用して、経営の混乱を招いた日本板硝子のような例もある。
そうしたリスクを知りつつも、武田の大胆な「実験」に注目したい。日本の製薬産業は欧米企業に比べて立ち遅れが指摘され、競争力を高めるために、人材を世界に求めるのは自然な発想だ。
同社に限らず、多くの日本企業で有能な現地人材の獲得や登用は待ったなしの課題だ。年配の日本人男性で固めた取締役会を改革し、国籍や性別、年齢を多様化すれば、組織の内側から新たな活力がわき上がるかもしれない。
一方で、グローバル化にたくましく対応できる日本人幹部を数多く育てるのも重要だ。そのためのひとつの道が、事業本部単位の海外移転である。日本たばこ産業は海外事業の司令塔をスイスに置き、パナソニックは航空機向け娯楽機器の事業本部が米国にある。
こうした部門を単なる出先扱いせず、一定の権限と魅力あるポストを用意すれば、意欲的な外国人が門をたたき、彼らと机を並べる日本人も育つだろう。