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多文化共生なTOYAMA

多文化共生とは永続的なココロの営み

広がる「子どもの貧困」 ひとり親世帯では2人に1人

2015-02-27 12:18:49 | ダイバーシティ
(以下、gooニュースから転載)
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広がる「子どもの貧困」 ひとり親世帯では2人に1人

2015年2月27日(金)

「子どもの貧困」が広がっている。厚労省が毎年行っている国民生活基礎調査に「相対的貧困率」によると、2012年度の調査では、子どもがいるひとり親世帯に限ると54.6%で、実に「2人に1人」という状況だ。

 NPO法人「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」が運営する「夜の児童館」に通う小学6年生の女子児童(12)は、親にお金のかかることを求めないという。母子家庭で、生活保護を受けながら区営住宅で暮らすが、「うちは貧乏なんだ」と気づいたのは3歳のころだ。

 病気がちの母(50)が、「お金がないなあ」とため息をついた。友達が自動販売機で缶ジュースをポンと買ってしまうことに驚いた。必要な費用が払えず、大好きだったチアリーディングも続けられなかった。常に周囲との差を感じてきた。

「友達みんなが持ってる雑誌を読んだこともないのに『持ってる』とウソをついたこともあります。学校で自分の意思をちゃんと表現できないかんじ」。だんだんと内にこもるようになり、不登校になったこともある。

「本当はもっといっぱいやりたいことがある。でも母には言いません。恨んだこともない」

 国際的に見ても、日本の子どもの貧困率は高い。経済協力開発機構(OECD)の10年のまとめによると、日本は加盟34カ国中、10番目に高い15.7%。子どもがいるひとり親世帯に限ると、事態はより深刻で、50.8%に跳ね上がる。加盟34カ国の中で、ワースト1だった(平均31.0%、韓国は未算出)。

 こうした「貧困」を裏付けるデータがあっても、まだピンとこない人は多いだろう。その理由について、同NPOの事務局長の天野敬子さんがこう指摘する。

「日本の貧困は、途上国の貧困とは違います。とりあえず服を着ているし、義務教育だから学校にも通っている。雨風をしのげる家もある。だから現実感が乏しい」

 夜の児童館の無料塾に集う他の子どもたちも、見た目は「ふつう」だ。

「安いファストファッションがいくらでもあります。コンビニに行けば100円で大きめのパンも買える。けれど、わずかでも費用のかかる課外活動に参加できない、栄養バランスの高い食事が取れないなど、落ち着いて暮らせる状態にはありません」(天野さん)

 だが、NPOなどの活動に「つながる」ことのできる人や、わずかでも収入がある人は、貧困層でも恵まれているほうだという。

 13年5月、大阪市北区天満のワンルームマンションで、母(28)と男児(3)の遺体が見つかった。死後数カ月が経過していた。部屋に冷蔵庫はなく、食べ物は食塩だけ。電気、ガスは止められていた。財布に現金は一円もなく、預金の残高は数十円。「おなかいっぱい食べさせたかった」と書かれたメモが残されていた。

 12年9月には、東京都小金井市で、生活保護を受けていた無職女性(43)が長女(12)と無理心中を図り、死亡する事件もあった。天野さんは、こう指摘する。

「保護者に社会とつながる力がない場合、働くこともできず、どんな行政支援があるのかも知らない。親も子もどんどん孤立していく。見えない『貧困』はもっとあると思います」

※週刊朝日 2015年3月6日号より抜粋

カゴメ/「ダイバーシティ推進準備室」など新設

2015-02-26 11:36:48 | ダイバーシティ
(以下、MakerNewsから転載)
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2015年2月25日
カゴメ/「ダイバーシティ推進準備室」など新設

カゴメは2月25日、組織変更を4月1日付で行うと発表した。

「農事業本部」に、「サラダ商品部」を新設する。生鮮野菜「サラダバンク」シリーズの本格展開と、パックサラダ・カット野菜事業などの拡大が目的。

さらに、「経営企画本部」の「人事部」に、「ダイバーシティ推進準備室」を設置する。多様な人材が力を発揮できる環境を整え、特に女性の活躍できる場と機会を迅速に拡大するため。

発達障害児を適切に支援できる親と教師の「試し力」

2015-02-26 11:36:18 | ダイバーシティ
(以下、沖縄タイムスから転載)
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発達障害児を適切に支援できる親と教師の「試し力」―教育の医療化(4)
2015年2月23日

 これまでのコラムでは、支援を組み立てる際のツールになる「診断」のことをとりあげてきました。もうひとつの大きなツールが、「試行錯誤」「試すこと」です。発達障害は、診断が出たからといって日常の対応への答えが出るわけではないので、家庭や学校などの日常生活の中でいろんな対応を試していく・模索していく姿勢が必要だということも触れてきました。その試行錯誤をひとつのプログラムの形にしたのが、ペアレントトレーニング(ペアトレやティーチャーズトレーニング(Tトレ)です。

 ペアトレは発達障害の子どもを抱えている保護者を、Tトレは難しい生徒を抱えている先生を対象にしています。全部で10回程度の学習会のような、サポートグループのようなものです。扱いの難しい子ども・生徒に対して、毎回「褒めてみる」とか「指示を出してみる」などのような対応「行動」を、プログラムの課題として日常生活で試してみて、子どもがどういう反応をしたのかをグループで共有し合いながら進めて行きます。

 例えば、次までの1週間で、「子どもに近い距離で指示を出す」っていうのが課題だとします。近いといってもどれくらいが「近い」のかいろいろですね。試しに、握り拳ひとつ分誰かに近づいてみてください。かなり威圧感(状況によっては親密感)のある距離です。日ごろ怒鳴ることの多いお母さんですが、「いやぁ、今週は静かに怒鳴りました。あんだけ近づいたら怒鳴れないですよね、ワハハハハ(笑)」っていう報告をしてくれました。私たちが思うより、言葉と行動の間にはギャップがあるようです。言葉であれこれ考えるのではなく、行動した結果を持ち寄ってみんなで共有し、次にどういうことを試していくか考えていくようなプログラムです。

 「子どもと向き合う」とか「寄り添う」とかいう抽象的な言葉もあまり使いません。日常をともに過ごす親や先生にとって、演技のつもりで具体的な対応を試みることで、感情的にならずにすむこともあるようです。忙しい生活や業務のなか、1日何回も試せるようなものでもありません。課題がストレスにならないように、次の集まりまでの1、2週間の間に、3回とか4回やってきてくださいという程度のものにしておきます。

 参加者の多くは、「引き算の変化」は苦手なようです。「引き算の変化」というのは、「○○○をしないでください、控えてください」というやつです。怒鳴ったり、叩いたりしている保護者に、「怒鳴らないでください」「叩かないでください」というのは、あまりうまくいかないようです。「怒鳴るにはそれなりに理由があるさーねー」と、「怒鳴ってしまう・手が出てしまう私」をいったん認めてあげる。そのかわり「1日2回、○○○をやってみてどうなったか報告してくれませんか」と、新しい対応を加えていく「足し算の変化」を求めていくほうがうまくいくような感じがします。

 虐待行動を放置するとか促すということではありません。「引き算の変化」を求めることは、暗に「あなたのやり方はよくない」と言っていることですね。子ども・生徒への対応に困って参加しているプログラムで、追い打ちをかけるようにダメ出しするよりも、「何か新しいことを試しませんか」というメッセージで誘ってあげる方がいいのかなと思います。試してみた行動で何か新しい手応えがあったとき、殴る・怒鳴るなどの効率の悪いアプローチが減っていくようです。

 参加者の中でうまくいっている人ほど、いろいろ試していく傾向があります。プログラムで用意している課題以外のことを試したり、それ以上のことをやってみたりするわけです。家庭や学級で培った「(現場)感覚」をもとに、「何をした方がうまくいく」のか嗅ぎ分ける「試し力」がついていくようなんです。試し力がついてくると、「専門家」の言うことよりも、自らの日常の試行錯誤からいろんなことを学んでいくようです。うまくいってないケースになるほど、「試し力」が枯渇していて、「何をして(試して)いいかわからない」という言葉がよく聞かれるように思います。そう考えると「対応力」は「試し力」だし「創造力」。それが「実践力」になるのかもしれません。

 小学2年生のクラス担任のマリ子先生(以下すべて仮名)は、授業中落ち着かず攻撃的な言動が多かったミカちゃんを、「かわいいと思えない」と漏らしていました。Tトレ初回時に、「私はあの子の顔も見たくないんです。つらいんです。なのにこれ以上課題なんてやれません」と訴えてきました。一通り先生とお話をして、参加を見合わせることをおすすめしましたが、先生は淡々と参加していました。生徒(ミカちゃん)への課題をすることもありませんでした。ところが、マリ子先生はミカちゃんに「スペシャルタイム」を試みたようです。「生徒・子どもと2人だけで、何かやってみましょう」というのがスペシャルタイムです。

 体育がすごく苦手で、しかもプライドが高いミカちゃんは、人前で体育をしたことがありませんでした。先生がミカちゃんをスペシャルタイムに誘うと、跳び箱したいと言ってきたのです。ちなみに、ミカちゃん跳び箱は全然ダメです。それでも先生とやってくれたんですね。それを境に、マリ子先生はミカちゃんのことを「少しかわいく思えるようになった」と報告されました。マリ子先生が歩いていると、ミカちゃんが手をつないできたり(それまではありえないこと)、彼女が爆発しそうになるのをマリ子先生がなんとなく察知してなだめたりと、先生自身の中に何となく変化がでてきていることが分かったそうです。

 マリ子先生は「具体的に動いてみないと何が起きるかわからない」と、試すことの力に驚いたようでした。あるお母さんは「グループに通っていると『情けない母親』が自分だけじゃないと思いました。そのうちこの人達すごい親だと思ってきました。すると自分もそこそこ悪くはないかなぁと思えるようになりました」と言っています。マリ子先生も同じように、「他の先生達の失敗談が一番の支えになった」と話しています。

 ペアトレやTトレの宣伝のような文章を書いてますが、それが今回の目的ではありません。日常生活をともにする人たちの「試し力」、そして経験の共有が及ぼす力を、私は見くびっていたのではないかと思うのです。「専門家」と言われる人たちは多くのケースに関わっていて、そこから対応方法の「仮説」であったり、検査結果やアセスメントから導かれる「仮説」であったりを提供することができます。親や先生達はそれを日常生活で具体化し検証していくことで、その子どもにとっての「答え」を見つけていくはずです。そう考えると、本当の専門家って日常生活を一緒に過ごしている人であって、我々のように非日常的な関わりをする者って「支援者」くらいの存在でしかないのではないでしょうか。

 子ども本人や日常生活をともにしている人たちを中心にした実践の大切さを、ペアトレやTトレの参加者達から教えてもらったことを、今回は伝えたいと思いました。ペアトレやTトレについての詳しいことは、『ペアレント・トレーニングガイドブック 困っている子をほめて育てる 活用のポイントと実践例』(株式会社じほう刊、岩坂英巳編著)を参考にしていただければと思います。沖縄県内のペアトレ・Tトレの実施については、ptorettore@yahoo.co.jpにお問い合わせください。

発達障害の診断名を生徒らに伝えるべきか?

2015-02-12 10:02:54 | ダイバーシティ
(以下、沖縄タイムスから転載)
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発達障害の診断名を生徒らに伝えるべきか?~教育の医療化(3)
2015年1月24日 13:30


知名孝(ちなたかし)
NPO法人ぺあ・さぽーと理事長/沖縄国際大学人間福祉学科准教授。
1962年那覇市生まれ。1986年日本福祉大学社会福祉学部(Ⅰ部)卒業。1990年沖縄県人材育成財団米国長期留学生としてスミス大学ソーシャルワーク研究科(1992年修了)。その後いくつかのアメリカの(児童思春期・成人)の精神保健福祉施設にて勤務。1998年より、いずみ病院(精神科病院)相談室、ファミリーメンタルクリニック(児童思春期心療内科)にて相談業務・地域支援業務を行う。そのかたわら、発達障害児の児童デイサービス・ショートステイを運営するNPO法人ぺあ・さぽーと設立。発達障害児をかかえる保護者のためのペアレント・トレーニング、教育・保育関係者のためのティーチャーズ・トレーニング、成人アスペルガーの会「スカイ」、ひきこもり青年をかかえる親のサポートグループ「つどい」の設立・運営に関わる。


 学校の先生方や保護者の方々から、「診断名・障害名を伝えるべきか」という相談をうけることがあります。学校の場合だと圧倒的にクラスの子どもたちに伝えていいか、というものです。

 例えば、小学校3年生のクラスを担当しているみなこ先生(以下すべて仮名)は、ADHD(注意欠陥・多動症)と診断されているまさる君とお昼の休み時間に二人でオセロをするようにしています。まさる君は、多動が著しく指示の通りにくいところがあり、クラスでも浮いた存在になっています。オセロを始めた頃から、まさる君はみなこ先生と「関係性」ができはじめ、これまでのような突拍子もない・コントロール不能な行動を起こすことがかなり少なくなってきました。ある日、クラスの子ども達数名がみなこ先生に、「どうして先生は、まさる君を特別扱いするの…」という疑問を投げかけてきます。みなこ先生は、まさる君がADHDだということを子ども達に説明すべきかどうか迷ってしまったわけです。

 以前同じような状況で、保護者の了解のうえで、子どもの発達障害のことをクラスで説明したケースがいくつかありました。そのなかで、「○○は伝染病だ」とか「○○はADHD/アスペルガーだよな、病気だよな」というセリフが子ども達から聞かれ、こちらが伝えたいことがうまく伝わっていない結果になったことがありました。おそらく現場でこういう子ども達の勘違いを目の当たりにされた方も少なくないはずです。

みなこ先生は、疑問をつきつけてきた子ども達に「説明する」(伝える)かわりに「尋ねる」ことを始めました。

先生:「みんなは、先生が、まさる君にひいきしてる感じがするの?」

子ども達:「45分の休み時間にオセロやってるって、まさるが自慢してたよ」

先生:「どうして、先生はまさる君とオセロやってると思う? 当ててみてよ」

子ども達:「えーっ、わからん」

先生:「じゃぁ、みんなからするとまさる君ってどんな子ね?」

子ども達:「あー、あれさー、うるさいよ」

先生:「どんな、『うるさい』なの?」

子ども達:「授業の時席離れるし、意味ないのに走ったりするし、すぐ怒るし」

先生:「それは、みんな困ってるの?」

子ども達:「はぁ、でーじ(とても)困ってるさ-」

先生:「どうして、まさる君は授業中うるさくなっちゃったりするのかな?」

子ども達:「んーっ、授業わからんからじゃない」「まさる、幼稚園の頃から落ち着かなかったよ。昔はもっとすごかったよ」

先生:「先生はね、先月の運動会の後からまさる君とオセロやってるわけ。オセロやると、まさる君少し落ち着くってわかったわけよ。さっきの時間、まさる君席立たなかったんじゃない?」

子ども達「…だね。相変わらずしゃべるけど、席は立たない」

先生「でしょ。少しずつだけど、落ち着くようになってるし、まさる君もがんばってるわけ」

子ども達「あーはー、それでか。あいつ最近、オセロの自慢して、でーじ(とても)機嫌いいから、あまり怒らないよ・・・」

 みなこ先生ほどうまくいくことは少ないかもしれませんが、これをひとつの基本形だと考えてみましょう。基本形は尋ねられた時には「説明する・伝える」前に、まずは答えを求めている本人達がある種の答えを持っていないか「尋ねる」わけです。しばしば子ども達は既に自分の言葉で「診断名」を持っているということです。まさる君の例では「うるさい」「席離れる」「走る」「怒る」等々・・・、彼らがいつも見ている具体的な行動が彼らにとっての診断名です。ここで「ADHD(という医学的診断)があるからオセロをやってるのよ」という説明をするよりも、子ども達自身がもっている診断名を活用してみるわけです。「まさる君ってどんな子ね?」という質問で彼らの「診断」を引き出し、それに対してオセロをやっているのですという説明にもっていく「やりとり」を展開していったわけです。

 子ども達の中からまさる君のような子の行動を「自己チューだから」とか「甘いから」とか、行動に対してマイナスの解釈が出てくる可能性もあります。子ども達に医学的診断を説明することで、マイナスの解釈や感情が中和される可能性もありますが、逆にさらなるマイナスを生み出す可能性もあるようです。それに通常このような状況で求められるのは、解釈の方向性よりも解決策だと考えると、とりあえずの(解決への)試みに同意してもらうようなやりとりをつくっていく方が得策のようにも思えます。

 子ども達は毎日自分のクラスメートと生活しているわけです。大人が思うよりも、子ども達自身がお互いのことを知っていることは不自然ではありません。行動が激しい子どもになるほど、他の子ども達は日常の経験から、その子への支援の必要性をわかっていることも少なくないようです。したがって、「診断を伝える」ということの基本形は、周りの子ども達自身が日常の経験から構築された「診断名」を引き出しながら、彼らがまさる君のような子どもにどういうまなざしを向けているかを確認することが基本になるのではないかと思うのです。彼ら自身の「診断名」は、彼ら自身がその子どもと生活をともにするにあたっての「困り感」と重複することも少なくありません。もちろん、すべてこの基本形通りにいかないかもしれませんが、試してみる価値はあると思うのです。

 周囲ではなく本人に「診断名を伝えるべきか?」という問いに対しても、同じく「説明」よりも先に「尋ねる」ことから始めるとどうでしょうか。本人が自分のことをどう思っているか、困り感やつまずき感があるのか、それらの困り感・つまずき感をどのようにとらえているか・・・、こういうことが「診断」を理解する際のベースになるように思うのです。友達とうまくいかない、先生や上司とトラブルになる、仕事がうまくいかないなどの生活上の困り感。しかし本人が困り感・つまずき感を持っていても、それが親、先生、上司など「他人のせい」になっている限りは、(自分に対する)「診断」に納得するのは難しい可能性が高いはずです。

 「診断」は「自分についての困りごと」に名前をつけたものと考えると、自分についての「困り」のないところには、「診断」が成立しにくいことになるのでしょう。これは心理検査でも何でも言えると思うのですが、「伝える」という行為は、伝えられる側の準備性ができていなければ、伝わるべきものが伝わらないと思うのです。伝える前に尋ねるというのは、伝えられる側の準備性を確認するという(情報共有前アセスメント)作業だと考えていいのではないでしょうか。

 冒頭のみなこ先生は、結局クラスの子ども達みんなでオセロ大会をしました。まさる君もクラスのみんなとオセロを楽しみました。「勝ち負け」のあるゲームを、喧嘩や騒動なしにまさる君が楽しめたというのは、彼の大きな前進だったとみなこ先生は思いました。負けても楽しいと思える、成長の証が見えた一時だったようです。

発達障害児も共に学び「不登校ゼロ」を実現した奇跡の小学校

2015-02-12 09:57:02 | ダイバーシティ
(以下、DIAMONDonlineから転載)
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発達障害児も共に学び「不登校ゼロ」を実現した奇跡の小学校


大空小学校に学ぶ児童と教師 (c)関西テレビ放送
「不登校ゼロ」の公立小学校の映画ができたと聞いて、試写を観に行った。

 舞台は大阪市住吉区にある大空小学校だ。

 隣の小学校の児童数が増えすぎたことをきっかけに、2006年4月に開校した。

 全校児童は約220人。発達障害のある子や、自分の気持ちを上手くコントロールできない子などの特別支援の対象は30人を超える。それでも、すべての子どもたちが同じ教室で学ぶ。

 教職員は、クラスや担当の垣根を越えて、みんなで子どもたちを見守る。地域のボランティアや保護者も、サポーターとして子どもたちを支える。

 校舎に貼ってあるのは、「みんながつくる、みんなの学校、大空小」。開校以来、木村泰子校長を中心に、みんなが一緒になって、誰もが通い続けることのできる学校を作り上げてきた。

 そんな“誰にとっても居場所のある学校”づくりの取り組みを取り上げた関西テレビのドキュメント『みんなの学校』は評判を呼び、2013年度に様々な賞を受賞。そのドキュメンタリーを拡大する形で製作したのが、今回公開される映画『みんなの学校』だ。

みんなの学校、唯一のルールは
「自分がされていやなことはしない」

 監督は、番組でディレクターを務めた関西テレビ報道局報道番組部の真鍋俊永さん。実は、同校の取材を始めたのは、職場の同僚で妻でもある迫川緑さんで、真鍋さんは引き継ぐ形で、本格的な長期取材を始めたという。

「(彼女は)元々、障害者の方々と関わる機会が多く、学校で障害を持った子がどのように過ごしているのかを何度か取材していました。その中で、大阪市内にこんな学校があるよと教えてもらったのが大空小との出会いのきっかけです」

 10分ほどのニュース内での特集にした後、迫川さんは、子どもたちの自然で生き生きとした表情を引き続き取材したいと交渉。同じ部署にいた夫の真鍋さんが後を継いで、2012年4月から翌年3月まで、取材を続けたという。

「私自身は、詳しくなかった状況で、1年間の取材が始まったんです。やはり、いろいろな子が同じ教室にずっといてるというのは、驚きました。世界的に見れば、当たり前だということは、後になって知っていくのですが、自分の中では、当たり前とは思えていなかったんです」(真鍋さん)

 大声を出しながら歩いていく子がいる。そんな中で、普通に授業が行われている。

「“冷たく見えるやろ、周りの子ら”って、校長は私に説明しましたが、実際に周りの子らは障害のある子を無視しているように見えかねないほどに自分のやることに集中している。そんな映像を映画の中でも使っていますが、こういう環境でも学んでいけるんだということが、驚きでした。難しい環境に置かれている子はゼロではないですけど、その子たちを見捨てずに、必ずアプローチするので、みんなとのつながりを持てているように、私には見えました」(真鍋さん)

 いじめについても、ないわけではなく問題を認識して解決へと向かう。ただ、市教委から調査依頼が来れば、いじめのような問題を隠すことなく記述する。なかったことにするのではなく、解決に向けて可視化できることが誇るべきことだと、木村校長は話しているという。

 同校の唯一のルールは“自分がされていやなことは人にしない。言わない”。

 子どもたちは、このたったひとつの約束を破ると、やり直すために“やり直しの部屋”という名前の校長室にやって来る。

 映画の中で、木村校長が全校児童だけでなくそこにいる教職員や地域の大人も含む全員に、こう問いかけるシーンがある。

校長「大空小学校は誰が作りますか?」
児童「一人ひとりが作ると思います」
校長「一人ひとりって誰ですか」
児童「自分」
校長「自分って誰ですか?手を上げてください」

 すべての人たちが手を上げる。

校長「大空小学校は、自分の学校だから、自分が作るんです」

学校から飛び出す児童には
校長自ら追いかけて話しかける


(c)関西テレビ放送
 映画の出演者は、「大空小学校のみんな」。中でも象徴的な存在は、大阪市内の別の小学校から転校してきたセイシロウ君だ。

 校長は、全校児童にこう紹介する。

「セイちゃんは4年生になりましたが、みんなのように毎日、学校へ行くことができませんでした。行けても2時間くらい。それは、セイちゃんが学校で1人でいることが落ち着かなかったからです。でも、今日から大空小学校に来て、みんなと一緒に安心して暮らします」

 そんなセイちゃんの最初の課題は、1日中学校にいること。何度も学校を飛び出していくセイちゃんに、校長は自ら追いかけていき、話しかける。

「友だちのことを信用せなあかんと思う。人を信用してへんから、セイが居にくいと思うんや。でも、大空小学校は、みんなでつくっている学校です。セイが安心して居れないわけがない」

 安心できる場とは、周りの支えとつながりがカギを握っているのだ。

 また、6年生のカズキは、5日間、学校に来ていない。毎朝、なかなか学校に来ることができないため、先生たちが迎えに行く。

 校長は、こう言う。

「(カズキが新入生として入学して来るとき)あの子が大空へ行くのなら、みんな大空はやめとこうという噂が広がった。あの子のそばにいたら、怪我させられるし、落ち着かない。でも、そんな子は、じゃあどこへ行けばいい?」

 ユニークなのは、同校ではPTAとは呼ばないことだ。親と教員ではなく、サポーター(保護者と地域の大人)と教職員で作る「大空SEA」と呼ぶ。

 さらに、授業参観も家庭訪問もない。学校の窓ガラスも、すりガラスから透明なガラスに入れ替えた。

 いつも授業は開かれているし、家庭訪問も問題が起きたときに、担任が自主的に行けばいいという考え方だそうだ。

 どんなことも、決まりごとを一度解体して、新たに構築する感じがしたという。

 こうした全国にも前例がないであろう「大空文化」を6年かけて作りだしてきたという。

不登校がなくなったのは
「周りの子」が変わったから


(c)関西テレビ放送
 木村校長は、「学校に来られない子がなぜ来られるようになるのか」と言う問いかけに、こう答える。

「その子が学校に来れるのは、周りの子が変わったから。その子を見る目が変わったから。だって、彼は何も変わってへん。彼は、彼やから」

 このコメントは、不登校にとどまらず、「大人の引きこもり」をはじめ、様々な社会的課題の当事者への向き合い方を考える上でも、大きなヒントになるのではないか。

 真鍋さんは、映画の「ディレクターズノート」の中で、こう振り返る。


大空小学校の校舎には綺麗な大空が広がっている
(c)関西テレビ放送
<校長は「“みんな”の中には“関西テレビの真鍋さん”も入ってますよ」と言っていた。私にはその言葉が指すものがよく分かっていなかったが、1年間、学校に通い続けることが、私自身にとっても「ともに学ぶ」日々であったことが、終わってみれば良く分かった。学校とは、教師が一方的に子どもたちに知識を与える場ではなく、様々な人が関わり合って学び合うところであった。そして学校だけではなく、社会という存在そのものが「大きな学校」であり、いろいろな人たちが関わり合うことで、学び合う場だと、いまは感じている>

 筆者も映画を通して、木村校長がどのようにしてこのような考えに至ったのか。ぜひ、この学校へ学びに行きたくなった。

 社会という大きな学校の中で、自分は何ができるのか、映画の中から大事な何かが見つけられるかもしれない。

『みんなの学校』は、2月21日(土)から、渋谷「ユーロスペース」ほかで順次公開される。

 お問い合わせ:「東風」(とうふう)TEL03-5919-1542 fax03-5919-1543 info@tongpoo-films.jp(送信の際は「@」を半角の「@」に変換してお送りください)

「自殺を防ぐ」? 「分離を加速」? LGBTの子供の学校設立をめぐって激論

2015-01-22 11:58:11 | ダイバーシティ
(以下、Huffington Postから転載)
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「自殺を防ぐ」? 「分離を加速」? LGBTの子供の学校設立をめぐって激論
The Huffington Post
投稿日: 2015年01月20日 07時24分 JST

LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーら性的少数者)のための学校を作って、いじめをなくそう――。イギリス・マンチェスターで始まったこのアイディアを巡って、イギリスで賛否が渦巻いている。

きっかけは、LGBT支援団体のLGBT Youth North Westが、マンチェスター市内にLGBTのための学校の設立を計画していると1月15日にイギリス有力紙のガーディアンなどが報じたことだ。団体は、チャリティで集めた6万3000ポンド(約1115万円)を研究調査に使い、実現へ向けて動き出すことを発表。LGBTコミュニティのための交流センターを作って、その中に40人の生徒を受け入れる学校を設ける構想だ。

この報道をめぐって、議論が白熱。Twitterなどソーシャルメディアでは賛同する意見も多いが、政治家や他のLGBT団体は「分離を加速させる」と否定的だ。

LGBT団体「Stonewall」は、「(いじめをなくそうという)狙いと目的については共感できるが、LGBTのための学校がその答えだとは思わない。我々の経験から言えるのは、わざわざ分離しなくても、すべての子供が自分自身であり、安全な環境を確保することができると思う」とコメントした。

また、保守党下院議員で、元教育大臣のティム・ロートン氏は「専用の学校は隔離と同じ。いじめと闘うことのほうが大事」と警鐘を鳴らす。さらに現・教育省補佐官も、「既存の学校において、LGBTへのいじめ撲滅を推進すべき」とし、学校設立には否定的な見方を示している。

こうした中、ガーディアンは16日、「LGBTの学校は現実的な問題に対処する、現実的な答えだ」とする社説を掲載。この問題を左右の構造に捉え直し、多文化主義の左派にとっては、似た人たちだけを集めた学校は望ましくない。だがLGBTの権利は認めたいという矛盾があり、右派にとっては、LGBTに対しては慎重だが、均一化せず自分の文化を守る闘いをしてきた経緯がある。左右両方にとって、矛盾を抱えた問題である、と指摘した。

一方、企画したLGBT Youth North Westの担当者は、「命を救うため」とその目的について語り、LGBTであることを原因に自殺した子供の事例を紹介している。ただし、現在のところ具体的な計画ではなく、あくまで検討段階であるという。

「分離」か「救い」か――。議論はまだ続きそうだ。

患者望む暮らし 手伝い 有償介護支援 キャンナス高岡設立

2015-01-13 16:06:15 | ダイバーシティ
以下、北陸中日新聞【富山】から転載
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患者望む暮らし 手伝い 有償介護支援 キャンナス高岡設立

2015年1月12日
キャンナス高岡の発会式であいさつする江畑美由紀さん(右)=高岡市末広町のウイング・ウイング高岡で


 高岡市の介護支援専門員、江畑美由紀さん(49)が十一日、看護師が在宅介護を有償ボランティアで支える「キャンナス高岡」を立ち上げた。県内の「キャンナス」は南砺市に次ぎ二カ所目。同日、高岡市のウイング・ウイング高岡であった発会式で江畑さんは「いろいろな人の『できる』をつなぐ会にしたい」と笑顔で意欲を語った。(高島碧)

 キャンナスは「できる(Can)」と「看護師(Nurse=ナース)」を合わせた造語。「介護に疲れた家族を休ませたい」と一九九六年に神奈川県の看護師菅原由美さんらが始め、全国に広がった。菅原さんが代表の全国訪問ボランティアナースの会では高岡が七十二番目。

 キャンナスでは看護師が、宿泊しながらの夜間見守りや、遠出の旅行、買い物の付き添いのほか、通常は主治医の許可なしにはできないみとりも行う。

 江畑さんはもともと訪問看護師だったが、五年前の交通事故をきっかけに右腕が不自由になり断念。同市の地域包括支援センターで相談員となった。

 そこで聞いたのは「介護保険のしばりが多く、お年寄りに合わせた支援が難しい」との現場の声。訪問看護は訪問看護ステーションに属する看護師しかできず、江畑さん自身も相談に訪れた末期がんの男性に「あなたに介護してほしい」と言われながら、実現できなかったことを経験していた。

 「お年寄りがその人らしく生きられるようにしたい」との思いからベテラン看護師の二人とともに設立に踏み切った。さらに看護師らの参加を求めている。

 発会式には菅原さんや江畑さんの「背中を押した」というダイバーシティ研究所の柴垣禎客員研究員が駆けつけた。ものがたり診療所(砺波市)の医師佐藤伸彦所長の記念講演もあった。江畑さんは「話し相手になる主婦でもいい。おせっかいさんの集まりにして、地域でお年寄りを支えたい」と話す。事務局は高岡市東上関の「コミュニティハウスひとのま」内。問い合わせは、事務局=電080(8995)1992=へ。

藤沢市小規模多機能事業所連絡会の副代表として1月16、17日の全国大会を取りまとめる

2014-12-26 11:38:53 | ダイバーシティ
(以下、神奈川新聞から転載)
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藤沢市小規模多機能事業所連絡会の副代表として1月16、17日の全国大会を取りまとめる

菅原 健介さん
鵠沼橘在勤 35歳
掲載号:2014年12月26日号


つなぐケアで地域の絆を

 ○…住み慣れた街で、顔馴染みのスタッフによる訪問・通所・宿泊などのサービスを提供する「小規模多機能型居宅介護」。その全国ネットワークの総会を藤沢で開催すべく、2年前から地盤を固めてきた。「良い事例があっても、認知度が低くて広まらないのが現状。もっと魅力や可能性を知ってほしい」―。その一心で同じ志の仲間と切磋琢磨し、開催した市民向けセミナーは80回にも及ぶ。「最初の参加者はたったの2人。でも、ボトムアップを図ろうと諦めずに続けてきた」

 ○…「介護もその人に合わせて多様性を」。理学療法士として藤沢駅前のマンションの一室に開設した小規模多機能『絆』では、料理やプールなど個々に合わせたオーダーメイドのリハビリを組み込む。「家族や友人、近所が手を携え、元々の生活につなぎ直すことが、結果、自立支援になる。これからは街レベルで支え合うことが大切」と熱く語る。

 ○…鎌倉市出身。両親は共働きで、「幼少期はサザエさん一家が憧れだった」と本音をポロリ。中学・高校は福祉の街・デンマークの日本人学校へ、学生時代はアフリカを旅するなど、福祉の「礎」になる経験を積んできた。東日本大震災時には母親率いる訪問看護師らと8カ月間支援に奔走し、「地域力が防災力になる。どうしたら地域の絆を強められるか」と模索した。

 〇…亀井野で小規模多機能を実践する加藤忠相さんとの出会いが転機に。「『介護する、される』の関係ではなく、お年寄りの周りに子どもや地域住民がごく自然に集まって一緒に過ごす姿を見た瞬間、『これしかない』って」。現在は人と人、衣食住、商業、自然との共生を軸とした「村づくり」を企て中だ。「互いに支え合い、最期までその人らしく楽しく過ごせる場をつくりたい」。少年のように瞳を輝かせて夢を語る表情からは人間愛があふれている。北欧やサザエさんの世界を体現、いや、それを超えるコミュニティを愚直にめざす。

女性クオータ制度への対応はじっくりと

2014-12-26 11:38:14 | ダイバーシティ
(以下、経済産業研究所から転載)
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女性クオータ制度への対応はじっくりと


安倍政権の続投により本格化する女性登用

2014年末の選挙の結果、女性の活躍推進を旗印に掲げる安倍政権の政権基盤は安定的なものになった。2015年は女性ポストの数値目標が課されるクオータ制度の導入が本格化するであろう。

いくつかの例をあげよう。2014年12月に発表されたコーポレートガバナンスコード原案の中には「上場会社は、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、会社の持続的な成長を確保する上での強みとなり得る、との認識に立ち、社内における女性の活用を含む多様性の確保を推進すべきである」との原則が掲げられている。この原則に基づいて各企業は役員に占める女性比率を公開し説明責任を負うことになると報道されている。また大学評価の各種指標の一部として女性教員比率が取り入れられ競争的資金の配分に当たって考慮されるケースが増えている。このような政府の方針に対応して、北海道大学や九州大学などの有力大学では女性に限定した経済学者の公募広告が出されるなど採用現場にも変化がみられる。

このようなクオータ制度導入の流れに対して、女性の積極的な採用・昇進を数値目標で実現しようとするのは女性に対する逆差別を招き、女性に対する偏見を助長するという意見がある。たとえば自身が経営者として活躍してきた南場智子氏は随所で女性に対する優遇策は頑張っている女性に対して失礼であり、かえって女性管理職に対する偏見を助長しかねないと指摘している。女性経営者の声であるだけに説得力がある。

しかしそもそもクオータ制度の導入が検討されるようになった背景には、女性が差別的な処遇を受けているとの指摘があることを忘れてはならない。日本企業において女性が差別的な待遇を受けていることと整合的な結果を示す実証研究は相当数存在する(たとえばKawaguchi 2007, Siegel, Kodama and Halaburda 2014)。女性に対する差別にはいくつかの種類があるが、女性であるがゆえに早くに職を去ってしまうと判断し採用を控えたり、重要な仕事を任せるのを控えたりするという統計的差別がとりわけ深刻であると山口一男氏は指摘し、その克服を訴えている(山口 2014)。統計的差別が女性の活躍機会が限定されていることの原因であるならば、性別という安易な指標によらず労働者各個人の資質を判断するよう情報収集の努力水準を引き上げることで、採用基準や昇進基準を引き下げることなく適切な人材を採用したり昇進させたりすることは可能である。

海外でのクオータ制度の評価
クオータ制度の導入は統計的差別の克服につながるのか、あるいは単なる逆差別に陥ってしまうのか、すでにクオータ制度が導入されている国々で逆差別的な採用・昇進が行われているかどうかを評価した研究を紹介しよう。2000年にまとめられたサーベイ論文はアファーマティブアクションの結果として雇われたマイノリティは学歴など目に見えやすい基準でマジョリティに劣るものの、仕事への評価は必ずしも低くはないとしている。その理由として採用において一見するとわかりにくい特性にまで十分配慮することで良質な労働者を採用できている可能性があることや、マイノリティに十分な訓練機会を与えることでマジョリティに技能的に追いつく機会を与えている可能性があることが指摘されている(Holzer and Neumark 2000)。一方、短期間のうちに役員に一定の女性を採用するように求めたノルウェーでは、女性役員がいなかった企業の株価が下落したことも報告されている。これは技能が伴わない女性役員の登用によって企業業績が下がることを予想した投資家が多かったことを意味している。役員レベルの経営者を育成するには長い育成期間がかかることを考えると当然ともいえる(一連の研究のサーベイはSmith 2014)。

望ましい政策設計と対応でクオータ制度を生かせ
これら諸外国の経験も踏まえてクオータ制度導入にあたっての留意点を記す。まず政策設計にあたっては目標達成までの期間を十分に与えることが必要である。これは適切な人材の探索や養成に時間がかかるためである。そのため政策の長期的安定性が必要であり政権交代などで政策の枠組みがコロコロと変わるようなことがあれば政策効果は半減する。政策当局が企業に目標達成までの計画を提出させたうえで途中経過を公開する仕組みも有用であろう。

数値目標を課された企業や組織はどれだけの期間をかけて目標を達成すればいいのかを十分に検討することが大切である。中期的目標から逆算して年次計画を立て、その達成状況をこまめにチェックすることが欠かせない。また、人材育成や評価を行うのはそれぞれの現場であることを考えると、経営層や人事部だけが目標を叫ぶだけでは十分な成果は望めない。目標と現在の達成状況を現場の採用担当者・現場管理職と共有することが重要である。女性割合の目標を明確に意識するだけで、男女で同等の候補者がいる場合に女性を優先するケースが増え、採用・昇進基準を緩めることなく目標を達成することができることも多いだろう。加えて目標達成の締め切りが近づくにつれて、目標達成が危うい企業が優秀な女性を引き抜きにかかることも予想しなければならない。優秀な女性を確保しつづけるためには実力に見合った適切な処遇を与え、将来の見通しを伝えることがより重要になってくる。

クオータ制度の導入が女性差別の解消につながるのか逆差別を招いてしまうのかは政策設計の巧拙と数値目標を課された側の対応にかかっている。時間的な猶予を与えない突然の政策実行は女性に対する採用・昇進基準の安易な引き下げという逆差別を生む。逆差別が行われることは、女性に対する統計的差別を克服することにつながらないどころか問題をより深刻なものとしかねない。また逆差別が横行してしまうと、男性からの反発が強くなったり、女性の中で待遇に対する不平等感が蓄積したりして政策の方向を逆戻りさせる政治力学が働く可能性もある。そのため、数値目標を課された企業や組織も即座に安易な採用・昇進基準の引き下げで対応しようとするのではなく、時間をかけて優秀な女性を発掘し彼女たちへの訓練機会をより充実させることで対応するべきだ。じっくりと取り組めばクオータ制度の導入は女性の活躍機会拡大の起爆剤となるだろう。

2014年12月26日

LGBT、どう受け入れれば...企業の採用担当者向けセミナーで「ルール明確化を」

2014-12-24 10:19:57 | ダイバーシティ
(以下、The Huffington Postから転載)
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LGBT、どう受け入れれば...企業の採用担当者向けセミナーで「ルール明確化を」

The Huffington Post | 執筆者: 吉野太一郎
投稿日: 2014年12月23日 09時55分 JST

あなたの職場に、性的少数者のLGBT(レズ、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)はいるだろうか。そしてその人たちにとって働きやすい職場だろうか。

国籍や人種、性別や性的指向の幅広さを認める「ダイバーシティー」(多様性)が言われて久しいが、企業として、LGBTをどう受け入れたらいいか分からない…。そんな企業の人事担当者を対象にした「LGBT人材採用セミナー」が12月19日、東京・恵比寿で開かれた。

LGBTに特化した人材紹介業を手がけるワイルドカード株式会社(東京)の主催。WEBシステム会社を経営し「オネエタレント」としても活動するニューハーフ(トランスジェンダー)の如月音流(きさらぎ・ねる)さんが、「面接や昇進、昇給で不利になるのではないか」と心配でカミングアウトできないLGBTが多いとし「企業側からLGBTの雇用のルールを明確に発信してほしい」と訴えた。

また、Googleダイバーシティビジネスパートナーの山地由里さんが、多国籍企業としてダイバーシティー(多様性)をどう支援しているのかを解説したほか、現場社員が集まってLGBTを支援する社内グループ「Gayglers」の取り組みを、同社の高沢数樹さんが説明した。

参加した企業の担当者からは「面接でカミングアウトしやすい環境はどうすればいいのか」「何から取り組めばいいのか」など、率直な疑問が寄せられた。

東洋経済新報社の「第9回CSR調査」によると、LGBTの権利尊重や差別禁止などの基本方針を定めるなど、何らかの社内的な取り組みを「行っている」とした企業は、回答した604社のうち13.2%。「今後予定」とした企業は4.8%にとどまる。

「あり」と回答した114社のうち、資生堂グループは行動基準の中で「あらゆる差別や虐待、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントなどのモラルハラスメントを行わない取引先を支持します」との項目に、人種や性別などと並んで「性的指向」を入れている。また、野村グループも倫理規程の「人権の尊重」項目で、以下のように定めている。「国籍、人種、民族、性別、年齢、宗教、信条、社会的身分、性的指向、性同一性、障害の有無等を理由とする、一切の差別やハラスメント(いやがらせ)を行わないものとする」と定めている。

セミナーの発言概要は以下の通り。

■如月さん「LGBTの特性を生かせる環境があれば、能力を発揮できる人は多い」

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如月音流さん

如月:LGBTの人たちは情報感度が高いと言われることがあります。おしゃれな人が多い、流行ものに詳しい、コミュニケーションスキルが高い。一説によると、LGBTは結婚しないし子供をつくらないので、可処分所得が高いと言えます。自分のための投資がたくさんできたり、芸術に触れる機会があったり、ファッションやコミュニケーションを十分楽しめる余裕がある。仕事の面でも、デザイン、ファッション、マーケティングでは有利な能力があるかもしれません。有名なところではイタリアのファッションブランド、ドルチェ&ガッバーナのドメニコ・ドルチェとステファノ・ガッバーナがいます。最近では、アップルのティム・クックさんがゲイであることを公言しています。

このような話をすると「LGBTは優れている」と聞こえるかもしれませんが、私たちLGBTは多様性の中で一つの側面として捉えています。ある側面から捉えた場合、我々LGBTは能力を発揮できる場所があるかもしれませんが、逆に不利益に働く場面もあると思っています。平均的に何でもこなせる人間もいれば、ある一点だけ特出している人もいる。決してLGBTだけが特別なのではありません。LGBTの特性を理解して頂いて、これを生かせる仕事や環境がもしあれば、能力を発揮できる人は多いのではないかと考えています。

LGBTの人数についてはいろいろ言われていますが、カミングアウトできる状態にある人は少ないのではないかと考えています。カミングアウトできない原因は、たとえば就職や転職の面接、自身の昇進や昇給で問題が発生するのではないかという心配があるからです。同僚の方が理解を示してくれるかどうかも心配です。

トランスジェンダーの場合は、カミングアウトしないで就職するのがそもそも難しいのが現状です。LGBであれば、言わなければ外見上では分かりませんが、T(トランスジェンダー)は外見上で見て分かることもありますので、就職のタイミングでもはや隠しきれない。さらに隠し通すことがストレスになることもありますので、隠すこと自体避けたいと思っている方も多いです。

面接時にカミングアウトしたら受からないだろうという企業の場合、チャンスを自分から諦めてしまうことがあります。特にトランスジェンダーの場合は、カミングアウトなしで面接を通過することは非常に難しい。カミングアウトできる環境にある企業の面接をあえて選んでいかなければいけない現状があります。

雇用時に検討しなくてはならないことは、企業側からLGBTへの理解を発信しているかどうか。企業側からLGBTの雇用のルールが明確に発信されていなければならないと考えています。たとえば雇用に関してLGBTであることは不利益にならないと明言している企業、もしくは昇任や昇進に影響しない企業であれば働きやすい環境であると言えます。本人にストレスのない環境であると発信しているだけでも当事者としてはハードルが下がり、就職しやすくなると考えています。

トランスジェンダーが男女どちらのトイレや更衣室を使用するのか。これは常に難しい問題で、トランスジェンダーは明日望めばその性に見た目がすぐ変わるものではなく、移り変わる過程にある方もたくさんいます。私の例だと、初めはヒゲが生えていて、脱毛、整形して髪の毛を伸ばすのに1~2年かかるんですけど、その間はどちらの性で生きていけばいいのか、どちらの性で見られるのか。会社のルールとして、どちらのトイレが使えるのかという規定、もしくは多目的トイレや専用のトイレが必要かと思います。

LGBとTが違うとか、すぐに女性らしい体になれるわけではないとか、そういう人たちがそもそもいるということなど、当事者だけでなく社員にも共有されているかも大事です。当事者にとって望ましくない呼び方もたくさんあります。オカマ、ホモ、レズ、オナベ、女装…。「私はこれは大丈夫だけどこれを言われたら傷つく」だったり、「当事者間同士なら使って良いけど、そうでない人はだめ」と思う人がいたり。そもそも本人の属性を形容するような言葉を使わない方が無難という気もします。

私は以前、LGBTしか雇わない、取締役は全員ニューハーフという会社を経営していたことがあります。2006年ごろ、当時はまだLGBTに偏見がかなりあった時代です。その後「オネエ」という言葉が一般的になり、テレビでもたくさん見かけるようになり、オネエが一般社会に進出しました。当時はゲイやレズは夜の仕事をしているというイメージが強く、LGBTと言えば新宿2丁目方面で働く人たちのことを指すイメージがありましたが、最近はどんどん昼間に働ける環境もつくられてきています。10~15人の小さな会社でしたけど、全員LGBTでそろえてみますと、単純に4種類では分けられない。髪の毛の長い男性、背の高い女性、昔男性だった女性、女性を愛する女性…その中にもたくさんの多様性があり、LGBTでくくる必要さえないと思えるぐらい多様性を感じました。本来、LGBTという言葉自体も、多様性の中の一側面ではないかと考えています。

■Google「多様な人材がいてこそイノベーションが生まれる」

山地由里:よく「Googleさん、ダイバーシティーを促進するためにどういった取り組みをしていますか」と聞かれますが、ややスタンスが違います。初めにダイバーシティーありきではありません。ダイバーシティーがあって、多様な人材がいてこそイノベーションが生まれる。国籍、性別、障害の有無、LGBT、文化の違い、それから内向的な性格、外交的な性格。同じ日本人でも一人として同じ人はいませんよね。ことあるごとに「ダイバーシティーこそが未来」と、社員だけでなく外部にも常に語りかけています。

面接では個人的なことを聞かず、とにかく仕事のことにフォーカスします。たとえば出身地も言語も、仕事が出来る限りにおいてはまったく関係ありません。

LGBTに関して言うと、性への考え方、あり方は仕事に関係ないという人もいるかと思いますが、その人がすべてを出し切る環境を徹底的にサポートします。逆に言うと、制度がいくら整っていても、自分らしさを出せない環境は正しくない。働きやすい職場作りを考えなくてはいけない。あまり特別なことではなく、社員へのトレーニングの中で「気がつかない偏見に気がつこう」と、LGBTに限らず差別のない、誰でも働きやすい環境を目指します。マネジャー層へのトレーニングではケーススタディーベースで、たとえばLGBTの人がカミングアウトしようか迷っている状況で、マネジャーとしてどうサポートできるかなどを、正解はありませんが意見を出し合ってディスカッションします。

男性、女性で更衣室を分けると、どちらを使えばいいのか迷いが出るようではよくない。ジェンダーニュートラル更衣室を用意したりしますが、すべてをカバーできる制度はないと思っています。人によってニーズが違うので、マネジャーに簡単に相談できる環境を常につくろうとしています。それから、ダイバーシティーを語るときにありがちなのが「また人事だけでやってるよ」と受け止められること。現場レベルで自分にも関係あることと認識してもらうために、役員レベルが積極的にサポートする態勢もつくっています。

制度をいくら整えても、一般社員が「トイレはどちらを使えばいいの?」と迷うとか「あの人が女性トイレ使ってるってどうなの?」ということを平気で言うような人がいる環境では、その人らしさを発揮できるとは到底思えません。ですので、制度の有無ではなく、誰にとっても働きやすい職場をどうつくったらいいのか、人事、一般社員も含めて真剣に取り組んでいます。

次に社員がボトムアップでどのようにダイバーシティー、特にLGBTについて取り組んでいるのか説明します。

高沢数樹:弊社では研修や新入社員トレーニングで、ある程度どうすればいいのかトップダウンでお話ししている部分もありますが、それ以外に現場で何かの配慮が必要な方が入ってこられたとき、ボトムアップの活動を担っている団体です。

私たちは、有志グループとして社内に発足した「Gayglers-jp」です。グローバルでおそらく数十のオフィスにあります。LGBTに限らず、職場の環境を考えるにおいて、特定の関心を持って集まったグループを、ERG(Employee Resource Group)と呼んでいます。身体障害者のERG、働く女性、お子さんをお持ちの方々などがあります。Gaylgersは、LGBTに関心を持っているグループとして、アメリカで最初に発足しました。アメリカの活動を聞きつけた現場の社員が、ERGをそれぞれのオフィスで立ち上げて現在に至ります。

グローバルである程度、横の連携も取っていますが、才能あるLGBTが弊社に魅力を感じて入社していただけるような環境をつくっていくこと。すでにいる社内の人材にもオープンで受容性のある、魅力ある職場環境を維持すること、それからLGBTコミュニティーの中でも、Googleが職場として魅力的だと浸透していくといいなと考えています。ただ公平な職場環境をつくるだけでなく、才能のあるLGBTがGoogleに入ってくれるように、会社に貢献する活動の一つです。LGBTに興味がある他の社員も賛同者として参加してくれています。

Diversity – Google

直近ですと今年の夏、東京レインボープライドに協賛してブースを出したりしています。社外活動は、10月にも大阪のプライドパレードにみんなで参加してきました。去年は札幌にも参加しております。ブースを出して、ポジティブなコメントをフリップボードに書いてもらって記念写真を撮ってGoogle+にアップして、多様性をセレブレートしています。社内でこうしたイベントのボランティアを募集して、それを通じた理解の向上を狙ってもいます。

社内で受容性の高い環境を作るために、プライドパレードへの協賛や、社内イベントへの企画をしています。直近ですと、社内で他社のLGBTと弊社の当事者やいろいろな人たちを集めてディスカッションをしました。また社内活動として、困ったこと、気になったことを抱えた社員へのサポートをもっとやろうと思っています。人事にダイバーシティー担当がいますので、困ったことがあったら相談できますが、人事に話す前の窓口として機能していけたらいいと思っています。

LGBTは普通にオフィスにいるし「こういうことが嫌だと思っている」ということを現場の声として伝えていくことが重要だと感じています。同じ社員として同じオフィスで働く者として、みんなが気持ちよく働ける環境をつくっていこうと、ボトムアップの施策としてやっています。

【質疑応答】
Q やったことがない企業は、何から取り組めばいいのか。

A(山地)LGBTにとらわれず、社長が社員にメッセージを送るケースはどこにもあると思う。大事なことは「とってつけ」感がないこと。ある日突然、社長から「LGBTのコミュニティーグループをサポートしましょう」というメッセージが送られると、逆に「何があったんだ」とざわめきが起こるし、引いてしまう人もたくさんいる。LGBTだけが特別なのでなく、ダイバーシティーの一側面です。日頃からのコミュニケーションがとても大事です。たとえばプライドパレードに参加したら「こういうイベントを協賛しています」「こういうことに気づきました」という内容を発信するのも大事ですし、LGBTだけでなく女性や外国人など、いろいろなダイバーシティーを日頃から広く発信して、できるところから始めていくことが大事だと思います。少しずつでもやっていることの認知を広げていくことが大事。トレーニングでもダイバーシティーに関することを少しずつ入れるなど、日頃のコミュニケーションに色を加えていくところから始めればいいのではないかと思います。

Q 私たちの企業はまだ積極的にLGBTの採用をうたっている会社ではないが、面接や入社の過程で「実は」と語って頂くことが多々ある。本人もカミングアウトした方が気持ちよく働けるだろうし、私たちも知っておいた方がいいと思うが、面接などでカミングアウトしやすい雰囲気や環境はどうすればいいのか。

A(如月) 面接に来られる段階で、ある程度この会社はLGBTに対してオープンな環境にあるということを、その場で伝えるより、会社のCSRなどで発言していることがまず重要かと思います。面接で「いいですよ、カミングアウトしても」という態勢を作るのではなく、知識を持っていてオープンだということを日々伝えて頂いていれば、応募者も選ぶ対象に入りやすくなると思います。

Q 弊社にもそういう方がいる。グーグルさんのような、日頃から全社員への啓蒙などは特に意識して取り組んでいない。その中で社員の方にカミングアウトさせるべきなのか、どこまでそのことを知らせるべきなのかが悩ましい。どう対応すれば働きやすい状況になるのか。

A(高沢)自分がどこまでカミングアウトしたいのかは、誰に対してカミングアウトすることにもつながります。誰に対してカミングアウトするか、しないかは個人の判断なので、ご本人とお話しするのが一番かと思う。「この人だったら言ってもいい」という基準も、自分がどこまで言っておけば社内で自分らしく働ける環境になるかの判断も人それぞれだと思いますので。「自分の代わりに人事から広く告知してほしい」とご本人が希望すれば、そういう対応も望ましいと思うが、どこまで知らせていいかは本人の判断によると思います。

A(山地)LGBTにフォーカスして特別扱いしてしまうのではなく、本人に心地よい環境が何か。実はカミングアウトする必要すらあるのか。たとえば体重の増減なんて、仕事に関係なければ普通話題にしませんよね。それと同じで、非常に個人的なことという認識をまず持っていただくこと。確かに経験がない会社ではセンシティブだしドキドキしてしまうけど、それより本人にとってどういう状況がいちばん好ましいのか。カミングアウトしない方が働きやすいのであれば、それをサポートする方法を考えるべきだし、過度にLGBTであることにフォーカスしすぎないことも実は大事だと思います。

Q どういう企業がどういう動機で、受け入れに興味を示しているのか。

A(ワイルドカード)特にLGBTだから受け入れない、採用しないという考えはないが、たとえばクリエーティブな方が多いという話、技術者、デザイナーに能力が高い人が多いので、普通の採用プロセスの中で、受け入れる段階で「どう気をつければいいのでしょうか」というご相談を頂くことが多いです。たとえば旅行代理店ですと、LGBT同士のカップルが旅行プランを探しやすいようにLGBTを社内の担当に置きたいとか、不動産情報をWEBで取り扱う会社は、同性のカップルで入居できる部屋がないかと相談する層がいるので、受け入れる側もその目線に立って案内できる、採用のニーズがあります。

Q 求職者、企業サイドのニーズや進め方は個別のケースでまったく違う。双方へのアプローチについて、もし参考になるご意見があれば。

A(如月)私たちの側からの意見ですが、まずLGBTはダイバーシティーという考え方では正直素人の部分があります。たとえばトランスジェンダーでも、外見は完全に男でも「自分は女だ」と主張する人がいる。でもその人が女性として明日から暮らしていけるのかというと、いけない。当事者は個別のジャンルには詳しいですが、全体でみたときに盲目的な部分もあるので、ダイバーシティーという大きな目で基準を持って「あなたはこういう状態です」と伝えてあげられるサービスがあればいいかなと思います。

A(高沢)男性として働きたくても戸籍が女性のまま替わっていない人は、日本の転職紹介サービスでは「女性としてしか紹介できません」と言われ、そこで断念することになってしまいます。人によっても状況が全然違うので、求人企業に提供する情報の範囲をフレキシブルに運用して頂けると、ニーズに沿うのではないか。ちなみに外資系の同様のサービスだと、そもそも性別自体を聞かれないこともあります。

A(山地)トランスジェンダーで通院が必要な状態であれば、企業ともそういう話をすべきだと思うが、よく分からずにLGBTの情報を過度に得ようとしたり、知らないからはじいたりということが起きている可能性もあるので「仕事に関係する判断でしょうか」と聞くことは重要だと思います。仕事に関係のあることに徹底的にフォーカスすることは、今後どんどん必要になってくる考え方だと思います。

Q グーグルさんの中でカミングアウトのサポートをしているということだが、検討しているという情報はどう得て、どうサポートしているのか。

A(高沢)カミングアウトを検討しているケースは基本的には本人しか知り得ないことなので、本人から何かアクションがあります。まずいったん人事のダイバーシティーチームに相談するようつなぎます。そして、カミングアウトをどのように進めていくか、伝えたいことは何か、どこまで伝えたいかのプランを一緒に練っていく。弊社ですと、他のオフィスやチームでのケースを共有するなどのサポートができます。