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人と人とのつながりでつなぐいのち若者と中高年男性を自殺から救え!

2013-09-20 10:10:10 | ダイバーシティ
(以下、JBpressから転載)
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人と人とのつながりでつなぐいのち若者と中高年男性を自殺から救え!(3)
2013.09.20(金)
谷所 由紀子:プロフィール

失業や就職失敗とそれを取り巻く様々な要因を抱え自殺する多くの中高年男性と若者。彼らを救う有効策は何か。

 日本の自殺対策への取り組みは、他の先進国と比べ遅れているとしばしば指摘されてきた。そのため、こうした反省を生かそうと、日本の自殺に関する学会や行政関係者は、海外の自殺対策プロジェクトについて多くの調査研究を行い、日本の自殺総合対策大綱に取り込むなどの努力をしてきた。

 その結果、日本の自殺対策は、全国「画一的に」行われてきたことが指摘できよう。もちろん、海外の例を参考にして日本の自殺対策に適宜反映させることは、重要なことであろう。しかし、海外の成功例を真似るだけで日本社会における自殺問題を解決することはできるのだろうか。

 ようやく最近になって、日本各地で草の根レベル、地域レベルでの活動が活発になり始めた。それらの活動事例を応用することもまた、日本社会における自殺対策の重要な要素であると考える。

 今回は、各地域での自殺の背景や状況を入念に分析したうえで、その地域の実情に即した自殺対策に力を入れてきた東京都足立区と秋田県の事例を紹介する。

■つなぐシートとパーソナル・サポーター(東京都足立区)

 足立区は、2006年に東京の市区町村で自殺者が最も多くなった事実を受けて、2009年から区の現状に沿った自殺対策を進め、「都市型自殺対策モデル」を打ち立てた。

 そのモデルは、第6回で紹介したライフリンクの平均4つの自殺に至る危機要因を重要視し、その連鎖を断ち切るため、自殺に至る問題を上流までさかのぼり、それぞれの要因を総合的に解決していくというものである。

 足立区のような人口の多い都市は秋田県などの人口の少ない地方と違い、行政、民間の自殺対策の関係者が住民全戸を訪問するアウトリーチ型の対策は難しい。

 その一方で、都市部ならではの強みもある。区内には、法律相談機関や福祉事務所、保健総合センターなどの専門相談窓口は豊富にある。それぞれの職員が各窓口で足立区民のSOSを受け止め、問題に応じた関係機関と連携することによって課題解決に導こうというのが、都市型自殺対策モデルの大きな特徴である。

 まず、区の自殺データの詳しい分析を行い、失業した人に自殺者が多いことを把握した。失業した人が抱えがちな自殺のリスクとして、生活苦や多重債務、うつ病などがあるため、ハローワークだけでなく、福祉事務所、弁護士や保健師が連携して、1カ所で相談に応じられる「総合相談会」を定期的に開いている。

 また、区の職員に対して、自殺を考えている人の些細なサインに気づくための「いのちの門番・ゲートキーパー」の研修を行っている。ゲートキーパーは、相談窓口で区民の自殺の危機要因となり得る悩みに「気づき」、その悩みの解決のために必要な専門相談員などに「つなぐ」という役割を果たしている。

 ゲートキーパー育成は、その他の地域でも近年行われ始めているが、足立区では職員全員が研修を受けていることに他地域との違いがある。そして「つなぐシート」という紹介状があり、窓口で相談者が複数の悩みを抱えていることに気づいたゲートキーパーはこのつなぐシートを使い、他の相談機関との連携を行う。

 しかし、ゲートキーパーが単に相談者に相談機関を紹介するだけでは、その相談者が実際に紹介先に行くかは分からない。

 そこで、確実に紹介先の相談機関に行ってもらうよう、必要に応じてゲートキーパーとは別に「パーソナル・サポーター」が相談者に同行し、一歩踏み込んだ「寄り添い支援」が行われている(図1)。足立区役所自殺対策課の担当者は、少しお節介なくらいの介入が必要であると話す。


資料:足立区役所ウェブサイト

 足立区ではこのような情報をYouTubeや、区のウェブサイトなどを活用し、区民に向けて発信している。その結果、足立区では2009年からの過去4年間、男性の自殺者数を確実に減らしている(図2)。一方で女性の自殺者は増加しており、今後の課題であると言えよう。

■秋田こころのネットワーク(秋田県)

 秋田県は、2012年まで18年間連続で、全国で最も自殺率が高かった。しかし、自殺者数は2003年の519人をピークに総じて減少傾向にあり、2012年の自殺者数は293人へと減少した(前年比マイナス53人)。では具体的にどのような取り組みがされてきたのだろうか。

 行政側では、2001年には「2010年までに自殺者約3割減少を目指す」(健康秋田21)という具体的な目標を立てていた。特に重点を置いていることは、人と人とのつながりを広げていくことであり、自殺予防リーフレットの全戸配布を行うなど地域住民を巻き込むアウトリーチ型の取り組みを行ってきた。

 また、2001~2006年にかけて、県内の6つの町において、自殺に関する啓発活動と正しい情報の提供、心の健康に関する基本調査や、地域において気軽に相談ができる「ふれあい相談員」というボランティア育成などを住民と連携して行う自殺予防モデル事業を実施した。

 県では、家族や友達だけでなく、地域の人々が、自殺を考えている人を相談窓口につなげられるような地域作りを目指してきたのである。

 国の対策とは違い、県はより現場に近いところにあるため、具体的で実効性の高い取り組みを隅々にまで広げていける。この点がとても大事なことである。

 一方、秋田県では、民間主体での自殺対策運動も活発である。知人、友人の自殺など、多くの県民にとって自殺は身近な問題であるという状況のなか、様々な民間団体が立ち上げられていった。

 NPO法人「蜘蛛の糸」は、中小企業経営者とその家族の自殺防止に取り組んできた。理事長の佐藤久男氏は、経営する会社が倒産し自身も自殺を考えたこともあったという。そして知人の経営者の自殺をきっかけに、2002年に「蜘蛛の糸」を立ち上げた。

 2000年設立の「心といのちを考える会」は、地域住民を対象に自殺対策に関わる講演やディスカッションの機会を設けたり、あるいは、「コーヒーサロン~よってたもれ~」を毎週火曜日に開催するなど、地元住民の人々が気軽に立ち寄って話すことができる場を提供している。

 彼らはこのように、地域住民がそれぞれのつながりを強めより良く「生きていく」ための活動をしている。

 2006年、これらの民間団体は「秋田こころのネットワーク」を形成し、以降、連携を強めてきた。当初の参加は9つの民間のみの団体だったが、2010年には秋田県や市などの行政、また医師会などを巻き込んで動かし、「秋田ふきのとう県民運動実行委員会」を発足させた。

 地域での地道な民間団体の活動が、行政を巻き込む成功例と言えよう。

 また、「ふきのとうホットライン」という相談網が設置され、秋田県の公式サイトで相談窓口の情報提供を公開している。この相談網では60以上もの相談機関(2013年9月11日調べ)が設けられ、電話やメールですぐに相談できるようになっている。

 様々な分野の相談窓口をネットワーク化し、例えば、失業や就職関連の悩みを持つ人々に対しては、失業や就職の問題の改善や解決を図るとともに、心の悩みや苦しみの緩和など、その他の関連する問題の解決ができるようしたものである。

 相談網には、いのちの電話の秋田支部も含まれる。前回(第6回)、いのちの電話はつながらないことが多いと指摘したが、つながらない場合はその他の相談窓口という選択肢があることを明示している。

 このように、様々な民間団体が連携して役割分担を行い、また、民間団体が行政の足りない部分を、行政が民間団体の足りない部分を補うようにして、草の根レベルに活動が広がっていくことが重要なのである。

 秋田県の自殺対策のその他の特徴に、『原因のわかる「経済問題」の対策を先行させる』として、経済問題での自殺を減らす取り組みに力を入れてきたことが挙げられる。

 図3を見ると、「健康問題」や「家庭問題」による自殺者数はほぼ横ばいで推移している一方、「経済・生活問題」の自殺者数が2003年のピーク時の204人から2010年には58人へと、72%減少した。

 この「経済・生活問題」による自殺者の減少率は全国平均(前々回、図5)を上回った。上記の2002年から活動を続けている「蜘蛛の糸」の経営者のための相談窓口の設置というような取り組みが大きく影響を与えた可能性は十分に考えられる。

資料:特定非営利活動法人 蜘蛛の糸

 秋田県と足立区の例にあるように、行政や民間の複数の相談窓口が連携して自殺対策を促進していくこと、そして「人と人とのつながり」を重視して取り組むことは、日本全国に共通して必要な自殺対策の要素なのではないだろうか。

 これまでの3回の連載を通して、失業や就職失敗から派生する経済・生活問題が原因の多くを占める日本の自殺問題について考えてきた。自殺の要因は複雑であり、経済・生活問題のみならず家庭問題等も含んでおり、その解決は容易ではない。

 しかし、失業や就職失敗と関連した経済・生活問題を抱える人々の自殺は、適切な対応で数を確実に減らすことができるのではないだろうか。

 まず、多様な相談の窓口の拡充、早い段階で予兆に気づき自殺予防のキーパーソンとなるゲートキーパー育成、一歩踏み込んだサポートを提供するパーソナル・サポーターの拡充、官民連携による各相談窓口の連携体制の強化が必要であろう。

 その際、各地域の自殺の背景や要因を分析・把握し、その地域の事情に合致した自殺対策を各地域、草の根レベルで広げていくことが求められる。

 そして、社会全体として検討すべきことは、正規・非正規の失業給付格差の解消や、新卒一括採用制度の見直しなど、失業や就職失敗をした際のセーフティネットを充実させることである。

 それによって、何度でもやり直しができる社会、つながりのある社会を実現していくことが必要ではないだろうか。

08年金融危機後、男性の自殺率が増加 研究

2013-09-20 10:09:35 | ダイバーシティ
(以下、AFPBBNewsから転載)
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08年金融危機後、男性の自殺率が増加 研究
2013年09月19日 11:05 発信地:パリ/フランス


【9月19日 AFP】世界経済に多大な影響を与えた2008年の金融危機は、その後に見られた男性の自殺率にも同様に大きな影響を与えていたとする研究論文が、17日の英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal、BMJ)の電子版に掲載された。

 研究では、54か国における15歳以上の自殺率を、2008年の金融危機以前と以降で比較した。比較の対象としたのは、2000年から2007年までの傾向から推定・算出された2009年の自殺率と実際に確認された2009年の自殺率だ。

 結果、2009年には、それまでの傾向より自殺者が4884人多く出た計算となった。欧州地域の27か国では自殺率が4.2%増加し、カリブ中南米地域の18か国では6.4%の増加が確認された。

 研究によると、自殺率の増加は男性でより顕著に見られた。2009年の男性の自殺率は全体で3.3%増加した。欧州地域では同時期、15~24歳の男性の自殺率が11.7%増加しており、また北米およびカリブ中南米地域では45~64歳の男性の自殺率が最も高く、5.2%の増加が見られた。

 一方、2009年の女性の自殺率は、金融危機以前の推移から推定した自殺率と比べて、全体的に0.5%の減少が見られたという。

■失業率と自殺率の関係性

 研究について論文の筆者は、「2008年の金融危機以降、自殺率は欧州及び南北アメリカの国々で増加した。特に失業率の高い国の男性で顕著だった」と述べた。

 研究によると、欧州での2009年の失業率の上昇率は、2007年比で17~35%だった。また2010年には25~36%と悪化している。

 北米地域では、2008年に失業率の上昇率が23%となり、翌年はその数字が倍増している。カリブ中米地域では2009~10年の上昇率が40~45%だったが、南米地域では同時期の失業率増加は見られなかった。

 研究では、以下の国々・地域が調査の対象となった。

・欧州連合加盟国21か国とロシアを含む非加盟国6か国
・米国、カナダ、およびカリブ中南米地域の16か国
・香港、日本、韓国、シンガポール
・イスラエルやモーリシャスを含むその他5か国

 自殺者に関するデータは、米疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention、CDC)が米国のものを提供。その他の国々については、世界保健機関(World Health Organization、WHO)のデータに基づいた。

 これまでに行われた経済危機と自殺率の関係性を調べる研究では、1997年のアジア通貨危機をめぐるものがある。この研究では日本、韓国、香港で、1万人以上が通貨危機後に自殺したとされている。(c)AFP

“大人の発達障害”の人が依存症に陥るケースも

2013-09-19 09:35:33 | ダイバーシティ
(以下、DIAMONDonlineから転載)
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“大人の発達障害”の人が依存症に陥るケースも
一筋縄ではいかない依存から脱却する方法

 大人の発達障害の人たちの中にも、強迫症状や依存症に悩む人たちが少なくない。

 そんな人たちが「脱ひきこもり」して、自ら生活する術を身に付けるために、周囲はどう支援していけばいいのか。

 そうした発達障害の支援の在り方を考える、9月13日、東京都世田谷区主催の『発達障害の支援のあり方を考えるシンポジウム』が、区内の成城ホールで開かれた。

 その第1部「脱ひきこもり!ゆるサバイバル術」のパネルディスカッションの中で、こうした話題が取り上げられた。

「脱ひきこもり」には
“褒める”がカギ

 今回パネリストを務めた発達障害当事者の家族であり、NPO法人「東京都自閉症協会」理事長の今井忠氏が、この問題に取り組み始めたきっかけは、長い間、製造業の会社に勤めていたことだ。

 在職中、管理職としてマネジメントの任に就いたとたん、期待した行動がとれなくなる人たちが周囲に一定程度いた。そこで、発達障害のことを勉強し、いかに雇用管理していくかを模索してきた。

 今井氏は、「発達障害の診断名がどうとかいうことよりも、発達障害の人に関わってきたことで得られた、人間をどの角度から見ていくのかの人間観のほうが有益」だとして、こう提案する。

「こういう行動をしてもらいたいと周りが思っていることと違う行動をとったとき、本人なりの理由がある。外的な状況に対して、本人がどう捉え、どういうアクションをとるのかの相互関係を見ていくことが本人を活かしていくうえで有効なのではないか。ちょっと変わってると思っても、そうかもしれないと思って対応して、損することはない」

 その後、会場からパネリストへ「自己肯定感を高めながら、サバイバル術としてのスキルをどう身に付ければいいでしょうか?」という質問が紹介された。今回の「脱ひきこもり!ゆるサバイバル術」のメインテーマだ。

 パネリストの都立小児総合医療センター副理事長の田中哲氏が、こう答えた。

「子どもの場合、いいところを見つけて褒める。大人の場合でも同じなんだと思う。成人は、自分を自分で褒めることができる。自分のいいところを見つけて、自分で自分にご褒美を出す。あるいは、自分のいいところを人にアピールして、自慢しているみたいでも、人に認めてもらえるようになるということは、肯定感を高めながら、サバイバルしていくことにつながっていくのではないか」

ただの依存症とは違う
発達障害の人たちの依存症状

 続いて、発達障害かもしれないものの、そのことに気づいていない人たちに、どのようにアプローチしたらいいのか。発達障害当事者で、都内の社団法人『発達・精神サポートネットワークNecco』のIT広報アドバイザーを務めている山本純一郎氏は、こう思いを述べた。

「決めつけてしまうのは、予見の信用をなくしてしまう。あるべき姿にとらわれ過ぎてしまうと思うが、生きていて必ず意味がある。相手のいいところは、探せばきっと見つかる。自己評価の基準は曖昧で、大抵低めになっている。根拠もなく、やみくもに褒められると、かえって嫌な気分になる。お互いに腑に落ちる部分が、言葉以外の手段を使ってでもコミュニケーションをとっていけるよう、向き合ってほしい」

 興味深いのは「アルコールやギャンブルなどの依存のある人に、どう支援したらよろしいでしょうか?」という質問だ。

 今井氏は、毎月開く定例会の中でも、必ずギャンブルやアルコールなどの依存の問題が出てくるものの、発達障害との関係については、これから取り組まなければいけない手探りの状況だとして、こう指摘する。

「依存症については、基本的に『底つき体験』をさせて、そこから這い上がってくるというグループワークの確立されたプログラムはあるものの、この方法は発達系の人たちにはまったく通用しない。

 何かにハマる。何かをずっと追究せずにはいられなくなるという性質は、そう簡単に変わるものではないので、その性質をいいことに使う。向かっている方向をやめさせようとすると、むしろ負の強化になって、どんどん意識がいくようになり、手放せなくなる。だから、それとは違う別の道として、それにハマっている限りは悪くない、社会的にも両立するような別のものにハメていく戦略のほうがいいのではないかと言われています」

 今井氏は、この分野を追いかけて実践している人に接触することを勧める。

なぜ“大人の発達障害”の人が
依存へ陥ってしまうのか

「大人の発達障害の方の中にも依存の方が何人かいる」

 こう指摘するのは、司会の社団法人「正夢の会」(東京都稲城市)理事長の市川宏伸氏。

「なぜ依存に陥るのかを考えると、自己イメージが悪いからなんです。だから、自己イメージをどのように変えられるか。私の経験で言うと、自閉症と診断されているかもしれないけど、ADHDも重なっている人が多い。そういう方に、ADHDの治療薬が出ているので使わせてもらうと、パチンコ依存症の人が変わることもあるんです」

 これに対して、今井氏がこう説明する。

「お金を使い過ぎる依存症の場合、就労してお金が入っても、それ以上に出費のほうが多くなって、生活の質が悪くなっていく人がいるんです。だから、就労支援だけやっても、生活の部分に依存症があると、なかなか成功しないんです」

 会場から「特性を持った人に、親として、どのように接するのがいいのでしょうか?」という質問も寄せられた。答えたのは、都内で発達障害当事者のスタッフだけによる「Necco cafe」を運営する「Necco」理事長の金子磨矢子さんだ。

「うちの子どもの場合、6~7歳の頃から、ひどい強迫神経症になって、1日中お風呂に入っていて、日常生活を送れない状態になったんです。そのときは、腫れ物に触るように接しなさいと言われて…。褒めるのがいいと思うんですが、褒め過ぎるとつけあがる。指摘すると、ちょっと本当のことを言われただけで、カチンときてしまう。どうしてうちの子は人と違うんだろうって、どうしてこれができないの?と、ついつい言ってしまうことがあった。

 ただ、発達障害の診断を受けてからは、私自身、発達障害のことに気がついてあげられなかったことがわかったので、本当に何回も謝って…。いまでも、私のことをわかってくれないと言いますけど、理解というのは、その人に成り変わることができない。自分のこともよくわからなくて、上手く説明できなかった。子どもについては、理解しようと努力しているということしか言えない」

 発達障害の「アスペルガー」や「ADHD」の診断について、市川氏は、今年5月、米国の精神医学会の診断基準であるDSMが改訂され、12月頃に日本語版が出るだろうと紹介。新しい分類では、これまで「アスペルガー」などと診断されていたすべてを「自閉症スペクトラム障害」と診断することになる見込みだという。

 無理をしないで、みんなで一緒にできることを考えていく。これからの時代は、当事者も周りの人たちも、そんな意識をもつことが大事なんだと気づかせてくれる場だった。

よく褒め、よく叱ろう 発達障害の子育て講演会

2013-09-18 13:05:00 | ダイバーシティ
(以下、じゃかるた新聞から転載)
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よく褒め、よく叱ろう 発達障害の子育て講演会 小児精神科医の広瀬医師 (2013年09月18日)

 ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)と海外邦人医療基金(JOMF)は17日、バンテン州南タンゲラン市のジャカルタ日本人学校(JJS)に横須賀市療育相談センターの広瀬宏之所長を招き、発達障害と子育てについての講演会を開いた。保護者ら52人を前に、広瀬さんは発達障害への正しい理解や、適切な褒め方、叱り方の重要性を語った。
 広瀬さんは、じゃかるた新聞の火曜日7面に隔週で「広瀬先生の子育て相談」を執筆している小児精神・神経科医。
 講演では得手や不得手は誰にでもあるとした上で、とりわけ発達の偏りが大きく、日常生活に支障を来す場合を発達障害と考えると説明。発達障害には、精神発達遅滞(MR)や運動発達遅滞、自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)がある。
 遺伝子異常によって脳の発達が偏ったり遅れたりするのが原因で、育て方とは直接関係がないとされる。広瀬さんによると人口の約10%が発達障害を持っている可能性があり、我が子だけでなく、同僚や隣人として発達障害を持つ人と接する機会も多い。東京大学医学部の学生の8割が発達障害を持っているとの説もあり、発達障害を持った子どもが一芸に秀でることも少なくない。
 広瀬さんは発達障害を持つ子どもも、大人の顔色や周囲の雰囲気を読み取ろうと努力していると話し、発達障害を持つ子どもと接する上で、周囲の大人の理解が大切だと語った。特に具体的な指示や、達成可能な目標設定を与えることが重要といい、「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ」と旧帝国海軍大将・山本五十六の言葉を引きながら心得を説いた。
 適切な褒め方、叱り方も大切だ。何に対して褒めているのかを具体的に示し、行動の途中でも褒めることが効果的と強調。例えば、宿題を始めた子どもを労って褒めることが重要で、「やればできるんだったら、はじめからやりなさい」などと非難を交えると褒めた効果が相殺されてしまうと注意した。
 叱る場合には短く、簡潔な言葉を選ぶことが大切で、内容を言い換えずに「壊れたレコードのように」繰り返すと良いと説明。スーパーマーケットなどで子どもが駄々をこねた場合には要求を無視し、その後に「よく我慢したね」などと声をかけて親子関係を修復することも忘れてはいけないと話した。(田村隼哉、写真も)

しなやかさで共感生む 販売・イメージ戦略に力を発揮

2013-09-17 15:15:32 | ダイバーシティ
(以下、日本経済新聞から転載)
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しなやかさで共感生む 販売・イメージ戦略に力を発揮
2013/9/14 6:30

 しなやかで親しみやすい。そんな印象を生み出している女性たちが、商品販売や企業のイメージ作りの現場で力を発揮している。ネット上や店舗で共感を生み、顧客との距離をぐっと縮めている。

■手書きで旅行パンフレット

JR九州東京支社が発行する手描きのフリーペーパー「鉄聞」(東京都千代田区のJR九州東京支社)
 すべて手書き。手作り感あふれるイラストと地図を色鉛筆とサインペンで彩った紙面はさながら学級新聞のよう。JR九州東京支社(東京・千代田)が月1回発行する「鉄聞(てつぶん)」は九州の魅力が満載だ。鉄道会社のパンフレット類の中でひときわ異彩を放つ。

 「字もへたくそ……。上司に見せるのすら恥ずかしいんです」と言うのは鉄聞の編集長、保戸田麻衣子さん(31)。題字から地図まで何度も1人で書き直す。注目を引くパンフを作ろうと制作を始めたのは2年ほど前。一回限りのつもりが社内外の声に押され、8月発行分で14号になった。

 保戸田さんは東京支社採用で、九州に住んだことはない。鉄聞に書くのは現地で面白いと感じたこと。出身者でないからこそ感じられる素朴な発見を大切にする。観光ガイドに載らない駅前の面白い姿の銅像や、かわいいピンク色の駅舎など。保戸田さんから見た「いいね!」が満載だ。

「鉄聞」編集長の保戸田麻衣子さん(東京都千代田区)
 口コミで面白いと評判を呼び、最初1カ所だった配布場所は旅行会社や九州各県のアンテナショップなど15カ所に拡大。4月にバックナンバーを冊子にして1万部を配布し、7月から東京支社のフェイスブックでも掲載を始めた。「同世代の女性を意識したのに、意外に男性のウケも良かった」

 本来の仕事は経理や庶務などの内勤。空き時間に鉄聞を書く。「面白い、楽しいを少しでも伝えたい」。販売実績を追い求めるだけではない「わたし目線」の発信が幅広く共感を生んでいる。

■SNS使って情報発信

 交流サイト(SNS)を使った発信がヒットにつながっている例もある。化粧品会社、グライド・エンタープライズ(東京・渋谷)の顔用パック「LuLuLun(ルルルン)」は昨年の倍のペースで売り上げを伸ばす。けん引役が毎日午後9時にフェイスブックとツイッターで配信している「本日のルル子」だ。

 「美人は絶対性格悪い(と、信じないとやってられないっす)」「馬術とかなら2020年に間に合うかしら」といった一言を独自キャラクター「ルル子」の1コママンガで配信。20~30歳代の女性から「わかる」「同感です」のコメントが相次ぐ。そのSNSで商品や販売店情報を流し、購入につなげる。

 キャラ作りの発案者は営業本部チーフディレクターの佐藤すみれさん(29)。昨年12月の開始時は「オヤジのようにごろ寝するキャラがふさわしいか悩んだ」。しかし「きれいで完璧な女の子には、賛同できない」と同僚から助言を受け、等身大キャラを追求した。

 「毎月結婚式があるって、うれしくないよね」といった雑談からネタを探る。佐藤さんは「販売対象は仕事も恋も頑張る女子。共感されれば商品力になる」と話す。

■車の用語わかりやすく

店舗のレイアウトなどについて話し合うスズキの「女子改」メンバー(静岡県浜松市)
 スズキは女性の目線をいかすため昨年4月、女性4人のチーム「女子改(じょしかい)」を立ち上げた。きっかけは衝撃的なデータだ。軽自動車に対する女性の意識調査でことごとく他社の後じんを拝した。特に20歳代の差は顕著だった。

 まず取り組んだのが店舗。今年1月にできた東京都三鷹市の店舗は女性の好むパステルカラーを椅子やカーテンに取り入れ、高級感のあるボールペンやトレーを採用した。「軽自動車でも100万円近い。高額商品の演出が大切」(女子改リーダーの佐藤みどりさん、45)。調査の結果、女性はもちろん男性からの好感度も高まった。

 6月からは全国の店舗スタッフに「女性向け用語説明」の提供を始めた。「エンジンオイルは血液と表現すれば、オイル交換の必要性も理解しやすい」といった説明を約30語分作った。

 女性から見た便利さを訴える資料も作り、接客にいかす。ボタン1つで開くスライドドアはネイルを気にする女性も使いやすい。運転席のカップホルダーは底が深く、化粧用具を置くのに便利。佐藤さんは「女性に共感を得て、(購入を)納得してもらいたい」と言う。

■不動産店舗、白を基調に

女性専用の賃貸仲介店「メゾンエイブル」(東京都渋谷区)
 不動産賃貸仲介のエイブル(東京・港)が8月に東京・原宿に開設した店舗は、一見不動産店に見えない。白を基調にパウダールームやカフェも併設した。スタッフ5人も全員女性。物件はタブレットパソコンで説明する。

 不動産の契約は女性が決定権を握ることが多い。女性が入りやすい店舗づくりは長年の懸案だった。ここ5年は新卒採用も8割が女性だ。「女性の立場に立ったアドバイスは女性にしかできない。コミュニケーション力の高い女性は男性客にも評価が高い」(宮脇正戦略支援室副室長)

 女性の感性が作り出すしなやかなイメージに幅の広い共感が広がる。多くの人をつなぎ、財布のヒモを緩める力へ――。企業の期待も膨らんでいる。

(宇野沢晋一郎)

組織に嫌いな人を作らない 多様性社会を生き抜く知恵

2013-09-17 15:15:03 | ダイバーシティ
(以下、日本経済新聞から転載)
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組織に嫌いな人を作らない 多様性社会を生き抜く知恵
2013/9/16 6:30

 近年、ダイバーシティー(多様性)という言葉をよく耳にするようになりました。年齢、性別、働き方、国籍…さまざまな違いを認めて組織を強化していこうという流れの中で、組織で必要とされる人材であり続けるためにはどうすればいいのでしょうか。前回に続き、リクルートワークス研究所の大久保幸夫さんに聞きました。

 「腹をくくってください」――これからのキャリアのあり方を考えるときに、私はこう言っています。「腹をくくる」というと、大げさに聞こえるかもしれませんが、要するに「自分のキャリア形成を会社任せにしない」ということです。

 通信技術の発達やグローバル化により、ビジネスを取り巻く環境はめまぐるしく変化しています。企業間の競争もより激しさを増しています。企業がこうした激しい競争を生き残っていくためには、優秀な個人の力が大切になってきています。

 国家も企業も右肩上がりに成長していく時代であれば、トップに黙ってついてきてくれる従順さが個人には求められましたが、今はそういう時代ではありません。会社の言いなりになっている人は大した仕事はできません。強い個人とそれを支えるフォロワーがいる組織こそが生き残っていけるのです。「これをやりたいんです!」「会社の今後の成長のためにこれをするべきです!」――強く主張できる人が求められるのです。

■まずは相手に関心を持つことから

 ただ、こうした主張も“ひとりよがり”になってしまっては意味がありません。自分だけで“腹をくくる”のではなくて、会社や上司と折り合いをつけて“腹をくくる”ことが重要です。周囲との“すり合わせ”なしに突っ走ってしまったり、逆に“周囲は私のことを認めてくれない”と落ち込んだりしてしまう人が多いように感じます。あくまで上司との信頼関係の中で主張し、突っ走れる個人が評価されるのです。

 では、上司との信頼関係はどうやって築くか。まずは「相手に関心を持つこと」です。自分の上司は何が仕事で、何によってさらにその上の経営層から評価されているのか――多くの部下は知らないものです。知ろうとすらしない人が大半です。

 しかし、上司との関係も、友人関係や恋愛関係と一緒です。まずは相手に関心を持つことからスタートします。そして上司の役割を正しく理解し、自分ができる部分で貢献しようとする気持ちを抱き、建設的な提案を行うことです。建設的な提案と言っても、特別なことではありません。

 例えば「こういう方法にしたら時間が短縮できます」といった日々のちょっとした業務改善の提案などでいいのです。そうした小さなことの積み重ねで信頼関係は育まれていきます。集団の目的達成のためにはリーダーを補佐するフォロワーシップが大切なのです。

 数年前から“ダイバーシティー(多様性)”という言葉を日本でもよく耳にするようになりました。年齢や性別、国籍などを問わず多様性を容認し力に変えることで、企業の競争力を高めようする考え方です。

 私は、女性たち自身がダイバーシティーに溶け込めるかどうかも非常に重要だと思っています。企業で必要とされる人材であり続けるために、「どんな人とでもうまくやれるかどうか」は欠かせない資質です。分かりやすくいうと、「部署の中に嫌いな人をつくらない!」ということです。「嫌い」という感情が出てくると仕事のパフォーマンスに影響します。どんな人の中にも、その人なりの良さを認め、上手にやっていくスキルは、これからのダイバーシティー社会では大いに必要とされる力の一つでしょう。

 ところで、「管理職になりたくないんです」――こう話す女性が少なくありませんね。しかし、管理職のあり方も、変わりつつあります。今は部長も6割が“プレイング部長”だと言われています。“管理職”といっても、管理業務だけを行うケースは少数派で、むしろこれまでの第一線の職務を行いつつ、管理的な役割も担当するケースが一般的です。むしろ、今までの職務の延長線上に自然な形で管理職があると考えたほうがいいと思います。

 それに今は、社内に派遣社員やパート、アルバイト、業務委託など様々な立場の人が存在する横方向の組織になってきています。管理職ではなかったとしても、リーダーシップを発揮する機会は数多くあります。個人で完結する仕事をすることは少なく、新入社員の頃から全員がリーダーシップを発揮することが求められます。そして、一人一人がリーダーシップを発揮できる組織こそが、これからの時代を生き残っていける優れた組織だと言うことができるのです。

大切なのは多様な対応ができること

2013-09-17 15:14:30 | ダイバーシティ
(以下、nikkeiWOMANOnlineから転載)
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【今日の名言】大切なのは多様な対応ができること
2013年9月17日
「日本に必要な人材は?」緒方貞子さんの名言(第34回)

こんにちは、著述・翻訳家の上野陽子です。第34回は、緒方貞子さんの名言です。英語を上達して使ってみたい、外国に出てみたい……本を読んだり、いろんな情報に触れるうちに、なんとなくそんな憧れをいだく人も多いもの。そんな私たちに、外国語を学ぶ以上に大切なことを緒方さんは気づかせてくれます。
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多様な価値が理解でき、多様な対応ができる人が日本にも必要だ。
We need people in Japan who can comprehend various values and respond diversely.

緒方貞子
Sadako Ogata

国際政治学者(1927年~ )
国連公使、国際連合児童基金執行理事会議長、国連人権委員会日本政府代表、第8代国際連合難民高等弁務官他を務めた。2001年からアフガニスタン支援政府特別代表、国際協力機構特別顧問などを歴任した。文化勲章ほか受章多数。
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 国連難民高等弁務官として国際的に活躍し、国際協力機構(JICA)特別顧問など歴任してきた緒方貞子さんは、海外で学び、生活をし、仕事で活躍をして、さまざまな人種や国のそれぞれの考え方に触れてきました。国際的な視点から島国日本を見直して、こんなことを語っています。

 「英語は国際語かもしれないが、それができればいいという話ではない」

 「アジアの国も含めてやはり国が進歩してくると、多様性が必要になってくる。画一的な教育を受けて、画一的にものを考えるのではなく、多様な価値が理解でき、多様な対応ができる人が日本にも必要だ」

 もちろん言語は理解できたほうがいいけれど、言葉にプラスアルファの力が必要だということ。それは、国際的な視点だけでなく、日本語力だっていいし、何か人と違った観点や発想を持てるのでもいいというのです。

 私たちの多くは学校で制服を着て、画一的な教育を受けてきたけれど、それでも誰にもきっとそれぞれの強みや、独自の視点があるものです。そこを押さえつけずに伸ばしていくことが、たとえ日本にいても、ますます国際化されていく社会で生きていく強みになるはず。

 「本当に必要なのは、いろんな価値を比較習得していく人材が日本の中で育っていくこと」

 言語以上にさまざまな角度から物事を見て、いろんなことを学んで、独自の考えを持つこと。そして、みんなと同じ発想を抜け出ること。

 心がけで、私たちでも一歩が踏み出せそうですよ。

【ひとことサプリ】
同じものを、上からも下からも左右からも眺めてみよう。
そして、人よりも得意! と胸が張れるものをひとつ持とう。

精神障害者手帳から「性別欄」が消える・・・

2013-09-17 15:13:55 | ダイバーシティ
(以下、BLOGOSから転載)
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精神障害者手帳から「性別欄」が消える・・・「性同一性障害者」にどんな意味がある?

厚労省はこのほど、「精神障害者保健福祉手帳」から「性別欄」を削除する方針を固めた。心の性別が戸籍と異なる性同一性障害者(GID)への配慮で、来年にも様式を変更するという。

この福祉手帳は、統合失調症などの精神疾患で、生活に支障がある人を支援するためのもの。現在、税の減免や公共交通機関の割引、自治体・民間業者の各種優遇などが受けられるが、これらのサービスは性別と関係がないことから、厚労省は手帳から性別欄を削除しても支障は生じないと判断したという。

性別欄削除の恩恵を直接受ける人の数は明らかではないが、性同一性障害者の場合、身分証明書を提示する際に性別表記を見られることで、苦痛を感じたり、トラブルに巻き込まれたりするケースも少なくないようだ。2004年に戸籍の性別変更をしたタレントのカルーセル麻紀さんは、見た目とパスポートの記載が違うため「海外旅行のたびに辛い思いをしていた」と、記者会見で告白している。

言われてみれば、サービスを受ける際にあえて性別を告げる必要がないケースは、他にもあるように思われる。今回の「性別欄削除」は、性同一性障害者にとってどんな価値を持つと言えるのだろうか。セクシャルマイノリティ支援などに取り組む山下敏雅弁護士に話を聞いた。

●戸籍の性別欄を変更するためには「手術」を受ける必要がある
「男性か女性かは生まれたときに客観的に決まり、一生変わらない。だから個人の特定や証明に役立つ……。これまで公文書や公的証明書に性別が書かれていたのは、そう漠然と考えられてきたためだと思います。

しかし、時代は変化しています。10年前には『性同一性障害者特例法』が成立し、性同一性障害者が、戸籍上の性別を変更できるようになりました」

戸籍上の性別が変更できるなら、そうすればいいだけの話なのではないだろうか?

「ところが、特例法に基づいて性別変更を認めてもらうためには、『性別適合手術』(性転換手術)を受ける必要があるのです。

手術の身体的・経済的負担は、相当なものです。また、性同一性障害者といっても、その全員が手術を受ける必要があるというわけではありません」

確かに、性別適合手術は「ちょっと受けてきます」というわけにはいかないだろう。ということは、本当は戸籍を変更したくても、様々な事情でできないという人がかなりいるのではないか。

「そうですね。公文書や公的証明書の性別の記載は、戸籍上の性別の取り扱いを変更していない、あるいはできない人たちにとって、非常に苦痛です。

本人たちは『本来の性別』として暮らしたいのに、公文書や公的証明書には『異なる性別(戸籍上の性別)』が書かれているわけです。それが日常的に他者の目に触れるとしたら、どうでしょうか?」

女性の格好をした人が、男性と記載された書類を出したら(あるいは逆でも)、怪訝な目を向けられるだろう。

「公的な書面は、行政手続や公的サービスを利用する場面はもちろんのこと、契約や民間サービスなど社会生活の様々な場面でも身分証明書として提示を求められますから、生活・人生の多く支障が生じることになってしまうのです」

●性別は「本人確認」には関係ない
そのたびに「説明」を余儀なくされるとなれば、「いい加減にしてくれ」と言いたくなる気持ちはわかる。一方で性別欄を消した場合、問題が起きるケースはないのだろうか?

「手元に運転免許証があれば、確認してみてください。性別の記載はありません。個人の特定や証明のために『性別』は必要ないのです。現在、多くの地方自治体で印鑑証明書のように性別が関係ない書類について、記載をなくしていく動きが広がっています。

今回の精神障害者保健福祉手帳は、多くの手続き・サービスに関連するものですので、当事者に配慮した取り組みと評価できます」

となると、問題はいくつかの「性別に関係するケース」をどう扱うかになりそうだ。

「年金など男女によって、法律上の取り扱いが異なるものや、医療など身体的な性差を把握しておくべきものはありますが、そのような場面でも、工夫が進んでいます。たとえば、昨年、厚生労働省は、国民健康保険証で性別を表面に記載しない方法を認めました。

また、公文書などの記載のあり方だけではなく、たとえば、文部科学省が性同一性障害の児童生徒に配慮するよう通知を出すなどの取り組みも進んでいます」

時代は大きく変わりつつあるようだ。山下弁護士は「性のあり方は多様で、一人ひとりの存在、生活、人生そのものとも深く結びついている。私たちはそういった理解を深めていく必要があると思います」と話している。

多様な人材 活用企業の紹介本

2013-09-06 10:10:07 | ダイバーシティ
(以下、読売新聞から転載)
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多様な人材 活用企業の紹介本

 企業での女性の活躍が注目される中、多様な人材を活用し、経営の成果につなげている企業の事例集「ダイバーシティ経営戦略」(経済産業調査会、税別2800円)が出版された。

 「ダイバーシティ経営」とは、様々な経験や価値観を持つ人材を活用する経営手法。経済産業省は昨年、こうした経営で成果を上げている企業を顕彰する「ダイバーシティ経営企業100選」事業を実施し、43社を選んだ。

 同書では、これら企業の取り組みを紹介。新たな時代の働き方や女性が活躍するための環境整備を考える上で参考になる。

(2013年9月6日 読売新聞)

若者と中高年男性を自殺から救え!

2013-09-06 10:09:29 | ダイバーシティ
(以下、JBプレスから転載)
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若者と中高年男性を自殺から救え!欧米よりはるかに自殺率が高い日本の問題点とは

2013.09.06(金)
谷所 由紀子:プロフィール
黒川清・日本医療政策機構代表理事監修

9月10日は世界自殺予防デーである。アイルランド出身のエコノミスト、レネ・ダイグナン氏が制作し、自殺問題を取り巻く日本社会の実態を描いたドキュ メンタリー映画『自殺者1万人を救う戦い』が数々の賞を受賞し、話題となっている。

 駐日欧州連合代表部経済担当官の顔も持つ彼を、3年にも及ぶ自主制作へと駆りたてたのは、隣人の自殺だった。

 「なぜ、日本では自殺が美化されがちなのか。なぜ、日本人は自殺“防止”に無関心なのか。日本は世界でも自殺が多い国であるにもかかわらず、十分な対策が取られていないのはおかしい。日本でもっと自殺防止の議論を始めてほしい」との願いから無償でこのドキュメンタリー映画のDVDを配布し、各地で上映会を行っている。

 今回は、日本の自殺の現状や、金融危機など経済的苦境との関係、また実際に各地で行われている具体的な自殺予防の取り組みを紹介し、3回のシリーズで考えてみたい。

 日本は先進主要国の中でも自殺率が高い国であるということをご存じだろうか。

 2013年6月の OECD Health Data によると、日本はOECD(経済開発協力機構)加盟国中、韓国、ハンガリーに次いで3番目に自殺率が高い。また韓国と同様、1997~98年の金融危機を境に自殺が急増、その影響がほとんど見られなかった西欧の国々とは、自殺率の推移が明確に異なる(図1)。


日本の自殺の現状


 日本では昨年、15年ぶりに自殺者数が3万人を下回ったものの、1998年の金融危機以降2011年まで14年連続で3万人を超えている(図2)。また、1998年以降2012年まで、男性の自殺者数は常に女性の2倍以上を示している。

 金融危機直後の1998年には、自殺率および自殺者数は、各年齢層で男女共に増加している。その中でも、図3に示すように、特に50代、続いて40代および60代の男性の自殺率が急増している。40~60代男性の自殺率は、1998年以後2003年までほぼ高止まり状態であり、その後減少しているのが分かる。



 一方、若者の自殺率も増加している。図3でも、その傾向が分かるが、図4で、もう少し詳しく見てみよう。図4に示すように、1998年以降の自殺死亡率の増加幅を見ると、20代が最も大きく、1998年の自殺死亡率を100%とした時2011年の自殺死亡率は130%に達する。次いで30代の自殺死亡率が115%に達し、増加していることが分かる。

 このように、日本では働き盛りの中高年男性の自殺者数が際立って多く、また、日本の未来を担う若者の自殺率が増加の一途をたどっているのである。

 なお、1997~98年の金融危機は日本より韓国の方が経済的インパクトが大きかったが、図1で見たように、自殺率への影響は日本・韓国2国間ではあまり変わらなかった。リーマン・ショックの自殺率への影響は、1997~98年の金融危機後と比べると、日本は、それほど大きくないように見える。

 一方、韓国は特に2008年以降、自殺率が上昇している。韓国では、高齢者間での経済問題や生活苦、また特に女性による自殺が多く、日本と同じく1997~98年の金融危機およびリーマン・ショックの影響を受けたとはいえ、自殺問題への影響は日本とは違った形で表れているようである。

自殺の動機・原因

 中高年男性と若者の自殺の主な原因・動機は何であろうか。


 まず、総人口当たりの原因・動機別の自殺者数の推移を見てみよう。図5に示すように、健康問題が1位、経済・生活問題が2位であり、1998年の金融危機後に両者とも増加している。

 1998年は特に3月決算期前後の倒産・失業の増加と並行して中高年男性自殺者数が急増しており、倒産やリストラによる失業によるものという見方が強い。経済・生活問題を原因・動機とする自殺者数は、2009年以降は全体としては減少しているものの、依然として主な原因・動機であることが分かる。

 また、警察庁、自殺統計によれば、20代の自殺に多い原因・動機として「経済・生活問題」のうち「就職失敗」の割合が特に多く、原因・動機が「就職失敗」による20代自殺者数は2007年以降増加している。若者の自殺率が増加した背景にも、景気悪化の影響があるようだ。

■海外における経済危機による失業、就職難と自殺の関連性

スペイン、英国、米国の状況

 スペイン、英国、米国、日本の失業率推移(図6)を見ると、失業率の上昇は特に2007年のリーマン・ショック以降顕著である。しかし、日本以外のスペイン、英国、米国では自殺率の増加はない(図1)。

 スペインでは総人口における失業率が2007年の8.28%から2012年は25%へ上昇した。にもかかわらず、人口10万人当たりの自殺率は6~7と一定の推移である。

 英国の失業率は2007年の5.4%から若干増加したが、人口10万人当たりの自殺率は約6と変わらず日本の約3分の1である。米国では、2008年以降失業率が若干増加したが、日本ほど自殺率の急増は見られていない。


 一方、日本の公表失業率はというと、1997年以降若干上昇したが、いずれの年も5%前後を維持している。このように日本の失業率は、ヨーロッパ諸国と比べて低い。にもかかわらず、自殺率の急増が見られているのである。

 ここで、公表された失業率に関して注意しておきたいことがある。日本では失業者以外に「その他の無職者」(主婦および年金生活者を除く)に分類される者が大勢おり、実質的な失業率はもっと高い。

 そして、2012年における職業別自殺者数の構成を見ると、失業者が全体の5%を占めているのに対し、「その他の無職者」が第1位で全体の24.9%を占める(図7)。すなわち、日本の自殺者の約4分の1が、失業者にすら分類されない「その他の無職者」とされるのである。このことこそは、日本における自殺問題の根深さを物語っていると言えよう。


スウェーデン:なぜ失業率は上がったが自殺は減少したのか?

 スウェーデンでは1990年代から経済状況が厳しくなり失業率が上がった。その一方で、自殺数は減少傾向にある。失業率は1990年の1.7%から1994年には9.4%と急増したが増減を繰り返し2010年は8.6%となった。

 一方、10万人当たりの自殺率は1990年の16.9から一貫して減少、2010年には11.7となった。なぜ失業率が増加したのに自殺率が減少したのだろうか (図8と9)。


 スウェーデンでは、1990年前半から国家的自殺対策プロジェクトとして包括的な自殺対策に力を入れてきた。スウェーデンでは早くから予防医学が支持されており、様々な疾病に対する予防対策の理念が国民に浸透している。

 そのため、自殺に関しても、個人を取り囲む環境要因に働きかけ、未然に防ぐような取り組みや、自殺未遂者へのアウトリーチ型の危機介入を行うなど、学校や職場等多様な状況に対応した自殺対策に取り組んできた。

 また、失業者へのセーフティネットや、きめ細かい再雇用促進体制を実施していることも低い自殺率の維持に貢献しているようだ。日本には正規雇用、非正規雇用という分類があり、失業保険や社会保険保障などの受給条件などの格差が激しい。

 例えば、2009年の失業給付金の失業者全体の受給率は、日本が20%強であったのに対し、スウェーデンでは70%近くであった。

 さらに、スウェーデンにおいては女性の社会参画が進んでいる。したがって、夫が失業しても経済的基盤が崩壊することが少ないことも1つの要因であろう。日本でも女性の社会進出を促進し、家計の安定を実現する社会をつくることが働き盛りの男性の自殺を減らすことへつながるのではないだろうか。

 若者の就職に関してはどうだろうか。日本は新卒一括採用の慣習があり、応募対象が限られるなど、新卒で就職に失敗するとその後の挽回が難しい仕組みになっている。こういった慣習は、スウェーデンをはじめ欧米諸国にはない。日本の若者にとって、再挑戦が難しい社会であることが指摘できよう。

 以上見てきたように、日本における自殺の主な原因・動機の1つとして、失業や就職難などの経済・生活問題が影響していることは明らかである。

 そして、その大きな要因として、失業者などの求職者へのセーフティネットの不足や、正規雇用・非正規雇用という格差の存在、また若者対象の新卒一括採用制度など、失敗を許さない社会が影響しているようである。

 次回は失業や就職失敗などの経済・生活問題と自殺の関連要因の分析と日本の自殺対策について考える。

参考:OECD Health Data(http://www.oecd.org/els/health-systems/oecdhealthdata2013-frequentlyrequesteddata.htm)