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湖氷上にあった雪山が、日中のプラス気温ですっかりヘタッてしまって、
情けない形になりました。
湖面全体も、やわらかいシャーベット状になっていましたから、あと十日
もすればすべて融解するでしょう。
岸辺では植物たちが、いきいきと活動をはじめました。
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周辺の山の雪解け水を、湖へ流し込む小さな川の淵に、フキノトウがひとつ
だけ現れました。今春の第一号です。
しかし、まだ雪が深くて近くには寄れません。
一週間ほど待てば、たくさん出てきますし、雪もかなり解けるので一ケいただ
くつもりです。
毎年ここの清流でとれたフキノトウで作るフキ味噌を、炊き立てご飯にのっけ
て食べます。
口の中が春の香りでいっぱいになって、春到来の実感が湧いてきます。
これが、山奥で暮らす民の迎春の儀式なのです。 地味ですが。
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去年から根雪に埋もれていたササの葉が、何か月ぶりかで姿を現しました。
少し枯れていますが元気いっぱいです。
あの分厚い雪の荷重に押し曲げられ、しかも日光は遮断されているのに、
決して負けません。
雪が薄くなるとピョコンと元に戻って、何ごともなかったかようにすぐに緑を
増やしていきます。
こんなササのしなやかさと力強さは、年老いた人々に元気と勇気を与えてくれ
ます。
雪を割って、名前の知らない植物がどんどん出てきます。
なんと力強いのでしょうか。
これからの森は、自分のイーハトヴなのです。
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