森人 もりと

森では人も生きものも ゆっくり流れる時間を生きています

砂崎

2020-09-08 | 日記


 街で用事を済ませてから、いつもの道を通らずに遠回りして、砂崎によって帰るこ
 とにしました。
 砂崎は森町では珍しい砂浜の海岸で、噴火湾にチョコンと突き出ています。
 岬には灯台以外に建造物はなく、手つかずの自然が残っている稀少な場所です。
 
 ここにきた目的は「もしやシーグラスが落ちてはいまいか」と考えたのです。
 それはこのところ、自分の生業の石削りの他に、街でシーグラスクラフトのお手伝
 いをしているからです。
 「いい形と色のシーグラスが拾えないかな」と期待に満ちていました。

 佐原岳を望む細い道を、丈の高い草木をかき分けるようにして進みます。
 もう、周辺の何もかもがすっかり秋色です。
 道はだんだん細くなり、海岸にたどり着くにはちょっと難儀です。
 しかし、これがかえって、ここの自然を守れている要因なのでしょう。



 このところ続いた大雨で大きな水溜まりができていました。私のオンボロ車では通
 れません。勢いつけて渡ったところで、帰りは恐怖です。
 しかし、海岸はもうすぐ、車を停めて歩くことにしました。



 霧雨のなかとはいえ、すばらしい砂浜が眼前に広がっていました。
 もちろん人影はなく、足跡さえもまったくありません。
 向こうに霞んで見えるのは佐原の街です。
 小さな波音とカモメの声のなかを、下を向いて探し始めました。
 これをやりだすと、なぜかなにも考えられなくなります。思考回路がプッツンする
 のです。
 しかし僅か30分ほど探したところで、霧雨が小雨になって至福の時間は終
 了、残念ながらシーグラスを見つけることはできませんでした。
 晴れた日にもう一度こなくちゃ。



 群生するハマナスの花が終わって赤い実をつけていました。
    
  「潮かをる 北の浜辺の 砂のかの 浜薔薇(ハマナス)よ 今年も咲けるや」   
                                      啄木

 石川啄木さんは函館の大森浜でこの歌を詠みました。しかし今の大森浜には野生のハマ
 ナスは一本もありません。
 ところが、シーグラスはたくさんあります。「えっ!もしやハマナスがシーグラスに」
 いやいや、考え過ぎは、体に悪い。

 ハマナスかおる砂埼の自然、今の日本では稀少です。みんなで守らねば。
 なにしろ、今世紀末までに日本の9割の沿岸で、砂浜の面積が半分になり、6割が完全
 に消える(NHKニュース)そうです。原因は人為的なことと温暖化とのこと。

 シロヨモギが静かに咲いていました。