昔に出会う旅

歴史好きの人生は、昔に出会う旅。
何気ないものに意外な歴史を見つけるのも
旅の楽しみです。 妻の油絵もご覧下さい。

イタリア旅行No.3 ヴェネツィア ゴンドラから見た風景

2010年11月29日 | 海外旅行
11/10 イタリア旅行2日目、ヴェネツィア「サン・マルコ広場」の観光を終え、すぐ近くのゴンドラ乗場に移動しました。



町中の狭い通りにあるゴンドラ乗場の風景です。

添乗員さんの話では、運航するゴンドラが通常より少なく、待ち時間が長くなっているそうです。

高潮で、小さな橋の下の間隔が低くなり、通れないと判断したゴンドラの一部が運航を中止したようです。

乗船待ちの列は、カップルで乗る新婚さんを先頭に、その後ろに6人で乗る人が並びました。

妻と私は、ツアーの最後尾に並んでいましたが、最後に二人だけが残り、二人でゴンドラに乗ることになりました。



ゴンドラ後方の椅子に妻と並んで座り、前方を見た景色です。

狭い運河の所々には橋が架り、その下をゴンドラが進んで行きます。

ゴンドラは、やや右に傾いており、他のゴンドラも同様に右に重心を設定した構造になっているようでした。

ゴンドラの船頭「ゴンドリエーレ」は、右舷にあるオール(櫂[かい])を押すことにより舟を推進させており、右舷が低くなっていると体重を掛けて楽に押すことができるものと思われます。

カンツォーネを歌いながら狭い運河を優雅に航行していたゴンドラには、楽に漕げる技術が伝えられてきたようです。



ゴンドラの左右の舷に取り付けてあった馬の飾りです。

良く見ると馬の下半身は魚の形で、前の両足には水かきがついており、後足がなく魚の尾になっています。

これはギリシャ神話に出てくる海神ポセイドン(ローマ神話ではネプチューン)が乗る戦車を牽く海馬「ヒッポカンポス」と思われます。

一神教のキリスト教の本場とも思えるイタリアですが、それ以前に神々が活躍した神話にまつわる彫刻などが生活の中に溶け込んでいることも興味深いことです。

町や、舟などを観察していくと、様々な文化や、歴史が見えて来ます。



広場に面したゴンドラの乗場があり、二艇のゴンドラが客待ちをしていました。

青い縞模様のシャツ、赤いリボンを巻いたカンカン帽子は、ゴンドリエーレ達の代表的なスタイルです。

帽子を甲板に置いてかぶっていない者や、ジャンパーを上に着ているゴンドリエーレも多く、バラバラにも見えますが、一応統一された服装のようでした。

又、ゴンドラの色は黒で、舟の先端には独特の飾りが統一的に付けられていました。

前方右側の甲板を見ると様々な彫刻が施されているのが印象的でした。



二艇のゴンドラ(上段の写真のゴンドラ)の左右にも面白い飾りが付いていました。

翼のある、ラッパのようなものを吹く少年で、下半身は魚の姿です。

ギリシャ神話の海神ポセイドンの子「トリトン」のようで、神話ではホラ貝を吹いて海の嵐を静めると言われています。

写真右は、ゴンドラの先端にある「フェッロ」と呼ばれる金属製の飾りで、後方に立つゴンドリエーレと、舟前方の重量バランスを考慮して取り付けられているものと推察されます。

上段の写真でも見える通り、クシのような突起が舟の前方に向けて6本、後方に向けて1本が突き出ています。

又、前方の6本の突起の間をよく見ると3ヶ所に飾りのようなものが付いています。

一般的な説明ではヴェネツィアの6地区を表すと言われているようですが、後方の1本の突起や、6本の突起の間にある3本の飾りの意味は説明されていないようです。

形状から自分流に解釈すると、ゴンドラに乗る3組のカップルと、一人のゴンドリエーレを表すようにも考えられますが、もう少し宗教的(神話的)な意味があるのではないでしょうか。



橋の下を二艇のゴンドラが離合しています。

船の航行は右側通行ですが、この通り狭い運河では左側通行でした。

ゴンドラの右舷にあるオールを狭い運河で操作するためと推察されます。

右舷にはオールを置くための曲がった木製の器具「フォルコラ」が取り付けてありますが、すれ違う今は、オールが先端からはずされているようです。

下段の写真では舟を漕いでいる状況で、オールは「フォルコラ」の先端に置かれていました。

ゴンドラ前方の椅子に座り、この若いゴンドリエーレを観察していましたが、実によくしゃべる男でした。

スタートして間もなくこのゴンドリエーレが私に「●●● シットダウン」(前方に座れ)と言ったようで、素直に前の席に移動しました。

舟の先端が橋の下に接触する危険を和らげる目的と解釈しましたが、運休したゴンドラを考えると先端の高さにバラツキがあるようです。

事実、低い橋の下では舟の先端がギリギリ通過する場面もあり、納得せざるをえませんでしたが、二人並んで座る他のゴンドラのカップルを見るとちょっと複雑な思いでした。



めずらしく木のある運河の風景です。

写真に木製のオール受け「フォルコラ」の上にオールが置かれています。

この「フォルコラ」を見ると、どうも手作りのように見えてきます。

昔ながらの職人さんがゴンドリエーレに合わせ、工夫して作っているのかも知れませんね。

美しい運河の景色は、どこを見ても絵になると、妻もシャッターを押し続けていました。



妻が撮った写真で、すれ違うイケメンのゴンドリエーレが写っています。

添乗員さんの話では、ゴンドリエーレには女性の目の保養になるイケメンが多いとのことでしたが、やはり妻は見逃さず撮っていました。

もはや、目の保養にならない私は、舟の先端に座り、「フェッロ(先端の金属の飾り)」の重量不足を補う重しの役目を果たすしかありませんでした。



これもすれ違うゴンドリエーレの写真です。

青い縞のシャツではなく、赤い縞のシャツを着ていたので掲載しました。

ゴンドリエーレの組合の役員等、特別な人だったのでしょうか。



インド人家族と思われる客が乗ったゴンドラとすれ違った場面で、前に小さな子供が楽しそうに座っていました。

妻が手を振ると家族たちの笑顔が返ってきました。

ヴェネツィアや、イタリアの有名な観光地には世界中から様々な人種の観光客が見られます。

運河両側の建物には、玄関や窓が見え、道路側と、運河側両方を使い分けているようです。



いかにもヴェネツィアらしい運河沿いの洋服屋さんがありました。

玄関の両脇の窓はショーウインドウのように洋服が飾ってあり、高潮「アクア・アルタ」の影響で、玄関が浸水しています。

しかし、往復して見る限り運河を航行する舟は、途中下船しない観光客の乗ったゴンドラで、運河から来店する客はいないようにも思えます。



ゴンドラは、建物に挟まれた小運河から大運河に出て行きました。

ヴェネツィア本島の中央にはS字形に島を二分する大運河があり、向こうに見える橋は「リアルト橋」です。

左前方にこちらに進んで来るゴンドラが見え、狭い小運河と異なり、ここでは一般的な船舶の右側通行でした。

ゴンドラは、「リアルト橋」が見えるこの辺りで引き返しました。

「リアルト橋」は、1592年に大理石で造り直された約48mの橋だそうで、午後の自由時間に訪れた橋の上は貴金属店などが並ぶ商店街でした。

水の都ヴェネツィアを味わうゴンドラ観光には他に類の無い情緒があり、初めて見る景色は心躍るものでした。

しかし、忙しく走る水上バスや、モーターボートが行き交う大運河には昔を懐かしむ情緒は少なく、あまり歌も聞かれなくなったゴンドラも古き良き時代の情緒は次第に無くなっているようです。