令和2年 今回製作した婦くら雀凧は強風用の作りとしてあるので、風を受けて鳴るウナリは揚っている凧の存在感を示すための重要な装備です。
竹弓の材料は丸竹をそのまま使用したものや丸竹を半割にして使用するもの、竹を板割りにし使用するものなどがあります。
また、玄となる物は古くは鯨の髭を薄く削った(金澤市史で書かれている)もの、藤つるを薄く剥いだものや竹を薄く削ったものがあるようですが、竹を薄く削った物は日本の凧の会の事務局長の堤氏(故人)からいただいたものがありますが、未だ使えずに仕舞ってあります。
現在はビニール製と思しき細いテープを使用している人が多いと思いますが、江戸凧や伝統凧は竹製のウナリを使ってこだわっている方もいらっしゃいます、
テープは昔、小関章さん(故人)がどこかの会場で袋に一杯テープを持ってきて、「必要な人は使って」と言っていたので分けていただきました。
テープはフイルムかビニール製かは分かりませんが幅は2.5~5㎜位で数種類あります。
テープの幅の違ったものを玄として張って風切音の音色でテープを決めています。
竹弓の反発力が強く、テープ幅の狭いものが高い音色が出るので、私的には好きですが反発力が強すぎるので、テープの消耗が激しいのが難点です。
竹弓となる竹の長さが90cmを超える物でテープの幅を変え、響きに重みのある音も出すことができました。
(割竹120cmのウナリと丸竹110cmのウナリ)
60cm、43cmのウナリは竹弓を半割にしたり、板割りにしたり、テープの幅も色々試したのですが、満足のいく音色にはできませんでした。
名古屋の古流セミ凧などは小さくてもウナリの音は疳高い音色なのですが、ウナリの作り方も奥が深く、まだまだ未熟であると痛感しました。
竹弓の先端には竹の根を加工し、枕としました。それと凧とウナリを縛っていたのですが、木を加工した取付材を作り凧に縛ることにしました。
(竹の根を加工した枕)
ウナリの響きは凧の揚がる姿勢(角度)と竹弓の取付角度でテープが風を受けた時の風切音で、その角度を決めるのはとても難しいものです。
今回この取付材を凧の上下にスライドし竹弓の角度を変えるようにしました。
(ウナリの取付材を凧に縛る)
今年は新型コロナウィルス感染症で自粛ムードの中、外出も自粛でしたが、6月19日より県をまたいでの外出も制限がなくなりました。良い風が吹いているので凧の試し揚げと思っているのですが、暑さのせいにして段々外出が億劫になってきました。
今回、婦くら雀凧を沢山作りましたが、しばらくは作ることは無いと思っています。
令和2年 1月から製作してきた婦くら雀凧は4月末にはすべての凧に糸目付けまで終わりました。
(凧の表面)
(凧の裏面)
5月の内灘で開催される「世界の凧の祭典」で揚げる予定でしたが、新型コロナウィルス感染症で開催が中止となり、外出が自粛となっていたので凧の試し揚げも躊躇される嫌な時代だと思います。
婦くら雀凧は風速8m/s強の強風でも揚がるような骨組みとしてあります。
強風で「ビー」と鳴く雀が存在感があり、強風に耐えて揚がる凧に頼もしささえ感じます。
金澤市史の中でも「凧には、竹を弓形にして弦に鯨の筋を薄く削った物を付けると、凧は東風の風を受け高く揚がれば、弦は雷鳴の如く鳴り響いた」とあります。竹を弓型にして弦を貼る物をウナリと言っています。
今回の凧には全てウナリを付けようと思いました。
令和2年 和紙を貼り終えた婦くら雀に彩色を施しました。
雀のデザインの彩色は8枚あり、彩色が完了するまでに2日ほどかかりました。
(彩色した婦くら雀)
彩色が終わった雀を90cmの凧の上に60cm、43cm、30cm、20cmと順次重ねると、画的にも面白い構図になりました。
(表面の重なり)
今度は裏返しにして重ねてみましたが、骨組みの重なりが不規則になり見栄えはいまいちとなりました。
(裏返しにして重ねてみました)
1枚づつ糸目をつけ婦くら雀凧は完成です。
令和2年 骨組みが仕上がったので絵柄の書かれた和紙を貼り、丸の骨組みの外側を切り離していきます。
梅鉢紋の雀は事前に彩色が済んでいたので、外側の余分な物を切り取るとほぼ完成です。
(彩色が終わった梅鉢紋の絵柄)
(和紙を貼り終わった婦くら雀凧)
90cm、60cm、43cm、30cm、20cmの5種類の婦くら雀凧です。
彩色前の色見を行っています。
乾燥すると色合いが変わるので色見はいつも緊張します。
そして後は彩色です。
令和2年 婦くら雀の骨組みが完成したので、絵柄を描くための和紙を探していると、以前和紙に枠線を描いたものでしたが忘れていたものです。
90cmの雀の絵柄が2枚と60cmの絵柄が2枚、それと梅鉢の絵柄が描かれた和紙、90cmと60cm物が1枚づつあり、梅鉢の絵柄は蝋引きし彩色まで完了していました。
(90cmの絵柄の和紙)
(60cmの絵柄の和紙)
この梅鉢の文様は、婦くら雀の絵柄を決めた後で雀の中に前田家の家紋である剣梅鉢を描いた物です。
浜松凧や袋井凧には文字の周りに蝋引きが施されていたので、婦くら雀凧にも線引きの代わりに蝋引きしたいと思い、当時交流のあった浜松の古老の方から蝋引きを習うために浜松に出かけました。
蝋を溶かすための蝋ポットも注文していただき、蝋引きの手ほどきを受けました。
梅鉢の文様と婦くら雀の文様のどちらが凧の絵柄としては良いかと何人かの方に尋ねると、梅鉢が凧の絵柄としては良いとの評価をいただいたので、当初は梅鉢の文様で婦くら雀凧を作り、「たいめいけん」にももらっていただいたのですが、成巽閣所蔵の絵図の図柄が忘れられずに現在の婦くら雀の絵柄になった経緯があります。
今回、新たに絵柄が出てきたことにより、骨組みが足りないことが判明し、追加で90cmの骨組み1枚、60cmの骨組みは梅鉢の文様のために煤竹を使った骨組みとしました。
骨組みを作るついでに60cmの骨組みで出た残りの竹で30cmと20cmの骨組みも作りました。
(煤竹で組み立てた60cmの骨組み)