平成9年3月18日付け 北国新聞 浜風50畳凧の製作開始
内灘町などの凧愛好者でつくるグループ「内灘凧倶楽部浜風」は17日までに、5月4日に開かれる「’97内灘町世界の凧の祭典」(北国新聞社など後援)に出品する50畳分の大な和凧の制作を始めた。大会に参加する和凧の中では最大となり、同倶楽部では大会当日に観客から助っ人を募り、参加者にこの和凧のミニチュア凧を贈ることにしている。
「内灘凧倶楽部浜風」は一昨年、凧作りや祭典を通じて家族同士の触れ合いの場に約立てようと結成され、祭典に初出場した昨年は24畳の大きさの和凧を出品した。現在22の家族が所属しており、今年は新潟県白根市の大凧愛好者らの技術協力を得て50畳の大作に挑戦することにした。
凧の制作は金沢市観音堂の倉庫で始まり、和紙を張り合わせて縦10.7m、横7.35mの大きさにしたあと、メンバーの一人であるグラフィックデザイナー辺本良治さんがデザインした下絵をもとに染料で着色を進めている。
大きな和紙には、内灘町の鳥・タカの勇ましい姿や、「浜風」の文字が描かれている。今月末までに着色を済ませ、来月からメンバーの一人である日本の凧の会の花木幹史会員(松任市)らの手で骨組みを取り付ける作業にかかる。
50畳凧の制作
3月には50畳用の骨組みの竹をお願いしてあったので白根へトラックで引き取りに行った。
凧の設計図としては下図の書面であったが、説明も受けていたので、十分理解が出来た。
幅が2㎝位の割竹を枡目に縛り、凧の両側に補強用の糸を縛るのであるが直角を維持するのに苦労しました。その後、凧絵を糊付けした。
次に、横竹を枡目の竹に沿って並べ割竹と縛り、糸目のロープを取り付ける作業になるのだが、それは糸目取の日に行うことで、事前の段取りは終了した。
50畳凧の糸目合わせ
平成9年4月19日白根の田村様ほか大凧愛好者に7名来ていただき、兼六園を案内した。その日は福祉センターで宿泊され、翌20日津幡町の町営体育館の駐車場で50畳凧の糸目を取って頂いた。糸目の長さが70m位有りよほど大きな場所でないと屋内での作業が困難と言うことで場所を探し、駐車場となった経緯がある。屋外での作業だったので、糸が風に揺れ合わせにくく随分手間取った。
糸目合わせも終了し、完成した50畳の凧が広がっているのを見て、さすがの大きさに一同びっくりしていた。
引き綱は24畳の時に使用していた12㎜のクレモナロープを使用するということで、田村さんも了解された。後は本番を待つのみであった。
50畳凧が切れて飛んだ!
平成9年5月4日朝から嫌な雨が降っていたが、大会が始まるころから雨もは止んだが風は強い。凧揚げが出来ないような強風でもないが、大凧を揚げるのには躊躇する。午後から揚げることで、6畳凧、24畳凧を揚げてウオーミングアップである。
6畳凧を揚げるメンバー
広げられた50畳凧
白根の田村さん他4名は前日から、他2名の方は早朝、白根を出て来られたそうです。白根の方が持参の凧を揚げていたが、強い風に翻弄されていた。
白根の方々が全員そろったのでいよいよ50畳凧を揚げようとなった。風は強く南西の風向きだったので万が一の落下を考え、危険防止の観点から、凧を大会会場より離れた金沢寄りから揚げることにし、白根の方の指示で凧を組立、ロープを伸ばしてエンドを重機に縛り付けた。
浜風のメンバー15名は凧のロープに取り付き田村さんの号令で凧が揚がった。凧は風を受け高度を増していく。だが、凧を持つ人力の限界を超えたため、引き綱の手を離してしまったのでたるんでいたロープは瞬時に重機の方に力がかかり「パツーン」と鈍い音を放ち切れた。
風に翻ったように凧はフワフワと流され会場の東側のアカシヤ林の手前の空き地に落下した。幸い車もなく、人もいなかったのが幸いしたが、凧を追ってメンバーが走った。凧の落下地点に着くと、竹が折れ、紙が破損していたが、補修可能だと思われた。
指示を仰ぎメンバーは必死に凧をアカシア林から移動させ、早速補修にかかる。皆黙々と作業している。紙を裏から補修し、折れた竹を新しく交換し補修は完了した。
12㎜のクレモナロープの破断荷重は1.5tであることは事前に調べてあり、通常の凧の飛揚では切断することは考えられないと思い、今のロープを使用したのであるが、揚げ手の不足が大きな原因であったのであろう
切れた50畳凧を回収に向かう
50畳凧・再チャレンジで飛揚した
午後になり風も幾分弱くなり、4~5?くらいであろうか、再度凧の飛揚を行うことにした。引き綱として急遽16㎜のロープを取り寄せ、50人を超える人たちに引手として協力して頂くことになり、再度ロープの端を重機に固定し凧揚げの準備が整った。田村様の号令で凧は風を受け高度を増してゆき、揚げ手も前回の教訓から順番に手を離し、凧はやがて風とのバランスで空中でしっかりと止まった。凧絵の鷲が空中から鋭く睨みを利かせているようだ。
揚げ手でお手伝いいただいた方々には感謝の気持ちで一杯です。
50畳凧の飛揚で大きな教訓を得て終了した。
飛翔した50畳凧
平成9年5月5日付け 北陸中日新聞 50畳の大凧飛翔
大空に大小、色とりどりの凧が舞う「’97世界の凧の祭典」(石川テレビ放送、日本の凧の会主催、北陸中日新聞社など後援)は4日、同町内灘海水浴場の特設会場で開かれた、心配された雨も降らず、青空が広がる絶好の日和に恵まれ、家族連れなど8万人の人出でにぎわった。
祭典は、内灘中吹奏楽部のファンファーレと同町の鶴西龍神子ども太鼓で幕を開けた。岩本秀雄町長、榎本喬石川テレビ放送社長、茂出木雅章日本の凧の会会長のあいさつ、海外出場者を代表してドン・モツクさん(米国)が祝辞を述べた。この後、早速、砂浜に設けられた8会場で一般の凧揚げが行われた。
同祭典には、米国、イギリスなど海外4か国から12人、全国21都道府県から100チーム、1,900人が凧揚げに参加、手作りの凧を大空に泳がす妙技を競った。また、内灘町にある2つの凧の会が県内で初めて50畳敷大凧と30畳敷大凧揚げに挑戦、見事に成功、訪れた人たちを喜ばせた。さらに、2本の糸で凧を操るスポーツカイトも見物人を魅了した。
平成9年6月15日 本部通信35号より
【5月の世話人会】5月12日たいめいけんに世話人が出席し春季大会につて報告、反省点などが話し合われた。
その他の項目で「内灘国際大会に出席した堤事務局長の報告で、(今年の大会を振り返って)今後、大凧が増える可能性がある。地元の熱心さの表れだが、その反面事故が心配。本部として適切なアドバイスが必要」であると記述されていた。
・本部として危険防止について適切なアドバイスをしていただけるのではないかと、堤事務局長あてに10周年の記念大会に百畳の大凧を揚げるべく計画をしているので、危険防止・回避についてのアドバイスを頂けるようお願いの手紙を書いた。
平成9年8月6日の返信
日本の凧の会 堤 昭明事務局長より返信が届きました。 要約しますと。
・大凧の件ですが、来年は記念の年ということで、内灘町の方々は大張りきりで感心いたしております。何事も記念の行事となれば大きな力となります。
・大凧も皆様の一貫した力が無ければ成功しません。あらゆる困難を乗りこえて頑張ってもらいたいものです。
・大凧ともなれば、色々と問題点が出てくることでしょう。今までに乗り越えた問題点、ノウハウ以上に問題も起きると思われます。何より安全第一ですが現実はやはり事故が起きています。
・日本各地には大凧揚げで祝う所がありますので、製作から凧揚げまでの安全のノウハウを是非研究してもらいたいと思います。他所との違いはあっても安全の考え方は違いません。
・どうぞ無事故で大凧揚げに挑戦して下さい。
・日本の凧の会の世話人会では事故防止についての意見は出ていますが、事例をあげての具体的なものはなく、今後の問題として確立する必要があります。
・今のところ方法などありませんが凧の会の皆様のご協力をいただき成文化できればと考えています。
平成9年6月30日 田村様からの便り
浜風の企画しておられる100畳凧のことにつきまして、私たちはご協力することに致しました。仲間に相談致しましたところ、興味を示してくれました。
手順、段取りは50畳凧と全く同じです。運搬、ハナオ立ての場所等、50畳凧ですでに白根の方式はご承知のこととおおもいですので、これらの問題をクリアーできたらできるのかと(100畳凧が)思います。
ただし、横骨の長さが10m位になるかと思います。長さ10m高さ1.8mの円筒形を出し入れするスペースの確保と搬出、搬入などを考慮のうえお決めください。
成功するか否かは分かりませんが製作と飛揚に出来る限り協力したいと考えています。
いずれ竹が入荷する12月頃まで凧のサイズや必要な竹などの材料について相談致したいとと思います。
八日市大凧の安全対策
平成9年8月28日 安全について八日市大凧会館の鳥居様に教えていただきたいとお願いしていたところ返事が届いた。
八日市大凧保存会に尋ねたところ別添の飛揚注意を考えながら大凧揚げを行っています。
十分ではないかもしれませんが、来年揚げる大凧の参考にしてください。
(別紙)大凧飛揚の安全対策
八日市大凧飛揚の諸注意
飛揚については、凧の「セッテイング」と「飛揚」に分けて、完全に役割分担をしておいた方がより安全である。
1.凧の組立て位置の決定
①風向き ②糸出し方向 ③糸出し距離
①、②、③を考えながら行う
2.凧のセッテイング(組立)
①骨組みの確認
②つり糸(糸目糸)出し確認
③張り糸調整
※補助糸の用意
①、②、③とも各責任者を付けて万全を期す。特に張糸を入れてからは凧が風で裏返らないよう注意する。(人出が必要)
3.揚げ糸出し(引き綱)…八日市大凧の場合20㎜×370m
最終的に風向きをチェックする(出来る限り風向きと平行に)
4.引き手の準備(八日市大凧の場合)
竜頭(はなお)から4つのパートに分けて引き手を入れている
5.飛揚
凧を立て掛けて揚げる場合
① 糸目糸と補助糸を押さえ(引く)凧がひっくり返ることを防ぐ
② 合図により一斉に引く、強風の場合は引きは弱く、引き糸を離すだけ(持ちすぎは危険、前から順に早め早めに離す)
③ 糸目糸付近にいる人は危険を感じたら地面に素早く伏せる。
※引手は凧の態勢を見ながら引く、凧が揚がった場合、引き手は糸を持ちすぎるので注意(特に上図のA・Bの引手)
凧を寝かせた状態(飛行機あげ)から揚げる場合
① 凧面に風を入れるタイミングに注意する
② 合図により一斉に引く、糸目糸と補助糸を引きながら上から順に離していく、左右のバランスがうまくとれるか、骨の強度と風の強さのバランスの問題によって凧が二つ折になる
6.見物人の位置は上記図のaの位置より後ろがよい。揚げ糸と見物人の距離は最低、糸を中心に左右10mは空ける
※酔っ払いとカメラマンには特に注意する
平成9年秋 田村様からの便り
百畳凧のことでありますが、縦骨用の真竹は注文しておきました。12月になれば届くと思います。
昨年とほぼ同様な手順で制作を進めていきたいと思っています。私の方は11月中ごろまで、館内での凧作りや出張の凧作りに追われています。その後はやや余裕がでるかナ
という感じの作今です。申し訳ありません。
11月に入りましたら凧のサイズなどの詳細を相談致したいと思っています。