瀬崎祐の本棚

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詩集「ピノキオ」  米山浩平  (2013/04)  土曜美術社出版販売

2013-05-08 23:31:44 | 詩集
 「現代詩の新鋭」シリーズの1冊。93頁に22編を収める。
 付いてくるものには神経質にならずに、とにかく言葉を探り当てようとしている。しがらみを捨てた言葉が自由に組み合わされ、新しいイメージを形づくろうとしている。どこまでも堅苦しさとは無縁である。

   終わったときに
   麗らかな午後であったなら
   それと知らずに通り過ぎたことも
   遠方から
   望遠鏡で概観したことも等しく
   うららかな午後のおこした企てである
                   (「ピノキオ」より)

 
 あらわしたいイメージのために用いる言葉が内側から湧いてくるのを待つのではなく、散らばっている言葉を拾い集めているようだ。それは、無意識のうちにおこなってしまう言葉への自己規制をとりはらうためには、有効な方法であるともいえるだろう。
 しかし、その同じ理由で言葉は事物から浮いている。多彩な言葉が提示されてくるのだが、その肌触りは淡泊である。付いてくるものがないままにどこまで疾走できるのか。いささか心配ではある。

   床
   テーブルのうえにも整然と
   散らかったガラスの破片のいくつか
   地を這う赤ん坊が口に含んだことを告げるコンパクトを
   女が閉ざす
   赤ん坊は偶然あった三面鏡に飛び移り
   二本足で立つ
                    (「ヘッドライト」より)
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