瀬崎祐の本棚

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地上十センチ  2号  (2012/12)  東京

2013-05-05 20:39:45 | 「た行」で始まる詩誌
 和田まさ子の個人誌。少し前に発行された2号だが、感想を発表する機会を逸したのでここに記載しておく。
 「雨が降りはじめると/世界の重量は増し/眠りが襲ってくる」とはじまる和田まさ子「シロクマ」。
 生きているからには何かをしなければならないのだが、何をすればよいのか、迷っているようだ。実際、自分が生きていることになるための行為を探し当てるのは難しいことだ。眠くなるのは、そんなふうに途方に暮れているうちに無意識に眠りを欲しているのだろう。
 仕方がなく冷蔵庫を開けると中にはシロクマがいて、わたしは顔をかじられるのだ。当然わたしは「目をつむってシロクマのなすがままになっている/それは愛されていることと同じだから」。そうすればわたしは、他人との関わり合いがぎすぎすとしてうろたえていた世界から、「何もかもが新鮮」で「世界もまた新しい」北極へ行くことができるのだ。

   いまわたしの頭はシロクマに咀嚼されていく
   シロクマの体内は平穏であたたかい
   だからその中に入ることもきっとわるくはないかもしれない
                          (最終連)

 なにかに所属されてしまうこと、あるいは隷属してしまうこと。それは辛い自らの判断から解放されることでもあり、それを夢想している。そしてそれ以上に、自分を隷属させるほどに無条件に愛してくれるものを求めているのだろう。それはこの世界からの自己消滅の密かな願望につながるのかも知れない。そのための言葉だけが残されるわけだ。
コメント
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