瀬崎祐の本棚

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エウメニデスⅢ 53号 (2017/03) 長野

2017-04-11 20:06:42 | 「あ行」で始まる詩誌
 11人の詩作品、2編の詩論、それに2つの書評を載せて64頁。
 粟棟美里による表紙写真は、キャベツの葉で顔を隠した女性の上半身像が強いコントラストで撮られていて、物語の始まりを予感させている。

 詩論「現代詩の広い通路へと」小島きみ子
 現代詩の魅力は「フロイトによって発見された無意識の領野における〈他者〉の意識に出会う場所である」からだとしている。これは大いに納得できることである。そして「作品創作の現場は、私という〈他者〉を知ることのできる〈鏡像〉の認識の場」であるとしている。これは、私(瀬崎)にとっても詩を書くという行為の存在価値のかなりの部分を占めることである。本稿は、「画家の詩、詩人の絵」展や「荒地」展のことなどにも話が飛び、論がやや拡散しているようにも感じられたが、逆に、広い視野からの接近とも捉えられる。興味深く読んだ。

 詩「安全で安心なアマゾン」小笠原鳥類。
 アマゾンにはピラニアがいて、大きなナマズもいて、でも熱帯魚もたくさんいて、その熱帯魚は水槽に入れられていて、シールが貼られていて、とても安全なのである。

   (略)アマゾンには小さな魚も多くて、例えば
   ネオン・テトラ、ネオン・テトラは土の上を泳いで
   安全だ安心だ、ネオン・テトラにも歯が鋭くて
   安全だ安心だ、ピラニアに食べられるんだろうか

 行またがりのフレーズが考える暇を与えないようにたたみこまれてくる。この勢いには、仰るとおりです、と平伏するほかはないではないか。でも、一番安心していないのは話者なのだろうな。
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