瀬崎祐の本棚

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hotel 第二章  33号  (2014/01)  千葉

2014-02-25 19:04:00 | ローマ字で始まる詩誌
 「ある窓口」川江一二三。
 「お引っ越し」と題された連作の1編。1行32文字に収められた独白体で13行の作品。視覚的には箱にびっしりと詰められた言葉たちを思わせる。
 「残念ですがどこにも見当たりません確かにお持ちになったのでしょうか」と始まり、遺失物係の担当者が依頼者に答えている内容を会話体で記載しているという体裁。丁寧ではあるがどこか慇懃な口調であるところが、依頼そのものに不信感を抱いている感じを伝えてくる。
 こちらが置き忘れたものの所在を尋ねたはずなのに、遺失物係は逆にそのものについて執拗に尋ね返してくる。本当にそんなものが存在したのかというようだ。その所在を尋ねるのならまずそれが存在したことを証明して見せろというようだ。

   それはどんな匂いを閉じ込めてどんな音が眠り続けていたのでしょうか
   見えませんか感じませんか聞こえませんか香りませんかふるえませんか
   もしかしたらあらかじめ失われていたものとあなたは考えられませんか
   私ども同様に見えないものを大きな存在として探し続けているだけだと

 おそらく遺失物係は自分の内側にいるのだろう。そしてその遺失物係は、私が探さなければならなかった事柄について、強迫観念のように自分の内側から問い直してくるのだろう。それは気のせいでしょう、すべて気のせいでしょう、とでもいうように。
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