瀬崎祐の本棚

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詩集「学校のオゾン」  八覚正大  (2013/03)  洪水企画

2013-04-13 10:40:46 | 詩集
 第2詩集。107頁に26編を収める。巻末に黒羽英二の跋が付く。
 著者は永年にわたって教師をされていたようで、その場で出会った生徒たち、直面したできごとを材にした作品を集めている。その学校には、世間的にはかなり問題児とされる生徒が多かったようで、喫煙は普通におこなわれていて、器物破損をおこなったり、アスペルガー症候群のような行動を取ったり、水商売のアルバイトをしたりしている。
 作品は話者の独白体で書かれている。記述される内容も充分に興味を惹くものであるのだが、それ以上に、それらに向き合ったときの話者の思いが切実に伝わってくる。「黒いタバコ」では彼らの喫煙に向き合っている。

   指で挟んで火を点けて
   身体中に溜まった澱を 澱んだ脂肪を 負担になったストレスを
   巣くってしまった不快の極みを トラウマを
   吐きだす 吐きだす 吐きだして 肺の底まで晒してみせる

   黒いタバコは誘発剤
   火を輝かす ためだけに意識を統べる
   ひたすら吐きつづける 吐いて 吐いて 吐いて

 向き合ったからといって、もちろん容易に共感できるわけではない。彼らに対する苛立ちや腹立たしさが吐露されている。しかし、そういったものが生じているということは彼らを見捨てていないからだろう。彼らをネグレクトしていない気持ちが立っている。
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