瀬崎祐の本棚

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詩集「夜鯨を待って」  黒田ナオ  (2013/07)  BookWay

2013-08-31 09:30:31 | 詩集
 第1詩集。86頁に22編を収める。
 どの作品も軽妙な言い回しで、現実世界から少し浮かび上がった光景が展開されている。その現実世界のしがらみを切り離したような位置からの眺めが、かえってこの世界を見つめなおすのに効果的なものとなっている。
 夜更けの停留所のベンチで「空から降りてくる夜鯨を待って」いる表題作「夜鯨を待って」。熱い缶コーヒーを買ってくると、先ほどまでいた汚れたコートの中年男もいなくなっている。私は夜鯨に触れたいし、飲み込まれてもかまわないのだ。

   だって夜が明けたら
   また退屈な朝が来て
   退屈なバスが来る

   いい人ばっかりの
   天国で暮らすくらいなら
   夜鯨の大きな胃袋の中
   さっきの中年男と二人して
   どっぷどっぷと波にゆられて
   永遠に泳いでいたいんだ
                (最終部分)

 遊園地で見失った妹を探し続けている「妹」。夕暮れのデパートの屋上ではどこからか妹の声が聞こえるような気がするのだ。

   いつまでも
   大人になれない妹は
   私の中で泣いている
                (最終連)

 もう少し言葉を切り詰めることができたら作品世界はさらに軽く魅力的なものになると思えた。
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