瀬崎祐の本棚

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ぽとり  25号  (2012/03)  和歌山

2012-03-07 20:11:15 | 「は行」で始まる詩誌
 「けしごむ」武西良和。
 ”子どもに寄せて”との断り書きがある作品のひとつ。静かな中で読書をしていると、消しゴムが落ちた、のである。ただそのことを描いているのだが、静かさというものをとても新鮮な視点でとらえている。
 消しゴムが落ちたので「静寂が皺になり」、その皺を消しゴムが均していくのである。”静寂の皺”という視覚化されたイメージに感心させられる。さらに、「静寂は音と混ざっていたので/うまく消されない」のである。なるほど、”静寂”は、ただ音がないという音のある状態と連続した状態なのではなく、”静寂”という状態が別にあるわけだ。

   静寂が消されていくので本は
   ペラペラと音をたてて活字を
   消し始めている

 ここでは、音と、本来は音とは無縁であるはずの文字が、微妙に同じ特性のものとして存在しはじめている。音を失うと文字も消えてしまうのだ。本に印刷された文字は音を担っていなければ存在できなかったのだ。このとらえ方も新鮮であった。

   窓もきれいにしないと
   消す音でガラスが
   曇ってきている
   だが
   音を消すことに慣れてしまった
   消しゴムは
   ガラスの汚れが消せない
                 (最終連)

 消しゴムが音を消す、という着想が面白く生かされている。最後は、”汚れを消す”という消しゴムの本来の目的をユーモラスに詩っている。
コメント
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