瀬崎祐の本棚

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詩集「ゴシップ・フェンス」  南原充士  (2012/04)  洪水企画

2012-03-27 19:15:37 | 詩集
 第9詩集。131頁に54編を収めている。この5年間に出された4冊目の詩集で、とにかく表現欲にあふれていることがうかがわれる。
 これまでの南原の作品の根底にあったのは物語である。この詩集でも前半の作品はやはり言葉を伝達することを意図している。伝達してあらわそうとしていることは、とりとめのないことなのだ。そのあたりが、たわいもなく面白い。
 詩集の後半には、なんの脈絡もなく思いついた語句が並べられたような作品が増えてくる。あとがきで著者は、「次第に言語は自他の垣根を越えて自立した芸術表現へと変容していった」としている。ときにそれは駄洒落に近い言葉の音から連想されたような語句だったりする。あえて意識が捉える前の状態の言葉を並べてみているようだ。無意識下でつながる言葉の面白さを狙ったと思われる。

   リセットされた車が際限なく走る
   卵を投げつけた頭部も血だらけの顔面も
   片付けられてすましたダンディズムが鼻歌を歌う
   パルファムを匂いたたせる女に引き寄せられて
   よそみする街角で衝突が起きる
                       (「海に向かって」より)

 とにかく、考える前に書いている。実際にはそんなことはできないのだが、あえてその意識で言葉を書きとめている。そのために実験的な作品と思われるものも含まれてきている。いずれ、さらに奇天烈な作品が生まれてくるのではないだろうか。
コメント
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