瀬崎祐の本棚

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鮫  129号  (2012/03)  東京

2012-03-20 22:25:38 | 「さ行」で始まる詩誌
 創刊から30数年が経つ詩誌「鮫」が129号で終刊するとのこと。私が目にしたのはこの10年間ぐらいのことだが、大判の装幀、かっちりとした内容から異彩を放っている詩誌だった。私も原田道子詩集の書評を書かせてもらったことがある。

 「種(しゅ)のシャッフル」原田道子。
 「謎めくイクサは種(しゅ)のシャッフルだ。と誰がいったか」と疑問を投げかけてくる。
 「ふぁあ ふぁあ ふぁあ」という、なにものかの手触りのような、あるいはまた、なにものかの泣き声のような言葉に誘われるように、この惑星での生命が詩われる。過酷な状況のなかで、「明日の、明日の草木が 泥まみれの花が」きっとみえてくると、詩われる。その花は希望であるのだろう。
直接的な表現は全くないが、著者の気持ちの奥にはおそらく東日本大震災があるのだろうと思われる。社会的にはいつまでもこだわっていかなければならない事象だが、詩作品を読む時には、それにとらわれる必要はないだろう。事象から抽出されたものが詩であるだろうから。最終連は、

   なにか
   さえぎるようでもある つなぐようでもある
   ぼうやたちが眠るのは いとしいものの死ではないよね
   眠ってすべてがはじまる これがふつうだといいのにね
   せわしく動いている死 どれくらいの言葉をかわせるの
   さざなみが線になる種(しゅ)のために
   たぶんねじれる螺旋の鍵穴がにおいたっている
                             (最終連)

 個々の災害を乗りこえてなお在るこの惑星での生の営みが、詩われている。
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