桑の海 光る雲

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礼文島・初めての星観荘⑤

2005-03-11 21:25:14 | 旅行記
星観荘に到着して、Tさんと一緒にブラックホールに入った。先客の人に「よろしくお願いします。」と言って荷物を置いた。本館の方であれば、布団を敷いて横になるところであるが、今夜もミーティングがあるので、そうするわけにもいかない。カーペットの敷かれた床にごろんと横になる。トタン一枚の屋根にはカモメが飛んできていると見えて、鳴き声と、屋根の上を歩くガサゴソという足音が聞こえる。烏が飛んでくることもあるようだ。雨の日は雨の音が騒々しいことだろう。ふと見上げると、宿のすぐ北にある港を眺められる窓がある。開けて外の空気を吸ってみる。潮の香りが漂ってくる。わずかな夕風が心地よい。今日も夕焼けは見られないようだ。

しばらくすると夕食の時間となる。Tさん達と一緒に本館へ行く。食卓は、今日ハイジの谷で一緒だった人達と囲む。昨日目にした、楽しそうに語らっていた人達と同じように、今夜は私たちが、今日経験したことを楽しく語り合うのである。食事も、昨日同様品数が多く、美味しい。ニンジンを星形に切ってみそ汁に入れた「星観(ほしみ)汁」というのが、ちょっとした工夫ではあるけれど見た目にも楽しい(ちなみにこれは長い宿泊歴の中で、この時1度しかお目にかかっていない)。

お腹一杯になるまで食べても、まだ話は尽きない。食堂の片づけの時は、場所を移して話し続けた。メンバーのうち、Tさん、Fさん、Oさんと私4人は明日島抜けすることになっている。MさんはM岩荘に移動することになっている。

片づけが終わって、「旅の思い出ノート」を手に取って見ようとすると、その隣に「星観荘in東京」のタイトルの書かれたノートを見つけた。見てみると、今年の12月に、東京は池袋のサンシャイン水族館を借り切って、星観荘に宿泊した人達が集まって、パーティーを催す、というのである。広い水族館を借り切るので、それ相応の数の参加者を集めなくてはいけない、ということで、こうした形でノートを置いて、参加者を募集しているようなのである。ちょうどその時は、出かけようと思っていたフィギュアスケートのNHK杯と重なっていて、上京している。原宿と池袋だから、移動にもさほど時間はかからない。水族館にも行ったことがないので、参加してみようと思い立ち、ノートの住所氏名を書き込んだ。横にいたNさんも参加するつもりという。大阪でも同様のパーティーが催されるとのことなので、関西在住のTさんとFさんはそちらに書き込んでいた。

スタッフのぱんつさんが話しかけてきたので、いろいろ話す。たまたまこのin東京の時にスケートを見に行くついでがあるので参加したい、と言うと、スケート見るが好きなんて面白いね、と言うので、○○というスケーターの、オリンピックの時の振りなんか真似できますよ、と言うと、やって見せてよ、と言う。さすがにそれは恥ずかしいので勘弁してもらうと、△△(本名)さんは、書家の卵だから、そうだな、踊る書家、ってことでよろしく、ということになってしまった。これがニックネームになってしまうのだろうか、ちょっと困るなぁ、と思った。

その後のミーティングで、明日の予定を聞かれた。Tさん、Fさん、Oさん、本来4時間コースを一緒に歩くはずだったHさんが、同じ便で島を出ることになった。それ以外にも、メンバーの入れ替わりが大分あるようである。後に残るNさん、Kさんはちょっと寂しそうだった。

ミーティングでは、花のビデオも上映された。夕べも上映されたのだが、私の好きなレブンソウが出てこなかったので、レブンソウはないんですか、と尋ねると、オーナーの彦さんはちょっと嫌な顔をしながら、明日は用意しておきます、と言った。今日のビデオでは、レブンソウが出てきた。桃岩展望台で実物のレブンソウも見てきたところだったので、いっそう興味深く見ることができた。

その後ブラックホールでのミーティングとなった。今日はぱんつさんに加えて彦さんも参加している(ちなみにこのシーズンは彦さんは事情があってブラックホールのミーティングには3回しか参加しなかったそうである)。昨日と同じように自己紹介が行われ、最後に彦さんから宿泊のお礼が述べられ、自己紹介が行われた。大学を出て東京で就職し、間もなく礼文へ戻り、20代前半から現在に至るまで十数年、この宿をやっているのだという。星観荘は、宿の名前を考えている時、星空がきれいだったので、何となく決めた名前なのだということも話してくれた。その後フリートークになった。どういうシチュエーションであったかは覚えていないのだが、酒も入っており、礼文での最後の夜ということもあり、私は自分のことやわがままな話をペラペラしてしまったらしい。すると彦さんから、お前変なヤツ!あっち行けよ!と言われてしまった。行けよ、と言われても今夜の寝床はここだからどこにも行けない。もちろん彦さんも酒が入ってのこと、軽い気持ちで言ったのだろうが、ちょっとしたことでも気にしてしまう私は、変に気にしてしまった。最後の夜なのに、今日一日の思い出と同じくらい、この言葉が胸に引っかかってしまったのである。

そんなことをしているうちに夜も更け、宴会も終わり、人々がいなくなったブラックホール一面に布団を敷き、皆で横になった。酒も入っていたので、すぐに眠りに落ちてしまった。

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