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礼文島断章26・Sさんの話③

2005-05-20 22:00:18 | 旅行記
しばらくするとSさんが戻ってきた。流木を何本も抱えてきている。「いやぁ、いい形の流木をたくさん見つけちゃってさ、持って帰ろうと思うんだよ。」確かに、うまく利用すれば素敵なインテリアになりそうな流木ばかりである。見る目のある人だと思った。ただでさえ不思議な格好をしたSさんが、拾ってきた流木を杖のようにして持って歩く姿は、何ともいえず、それでいて、この人にしかできない格好だな、と思った。そして、この流木をハーレーにどうくくりつけるのかも興味深かった。そして、くくりつけて走っている姿を見てみたいものだ、とも思った。

迎えの船が来る時間になり、船着き場に戻った。とても楽しかった一時が終わるのは、何とも寂しかった。スコトン岬に着くと、彦さんとやーまださんが迎えに来ていた。2台の車に別れ、すし詰めになって乗った時、彦さんが「焚き火臭いなぁ!」と言ったのが忘れられない。

その夜、Mさんが24時間コースに出発した。私は出発しか見られず、とても残念だったのだが、夜中の陣中見舞いの時、また印象的なことがあった。真っ暗な道をヘッドライトの明かりだけで歩くMさんを激励するために、何とSさんがハーモニカを吹き始めたのである。ハーモニカを持っていることは知っていたけれど、吹いてくれなかったので、まさかここで聞けるとは思ってもいなかった。真っ暗な仲で聞くハーモニカの音。曲名はわからなかったが、激励しに来た私達にもしみ入るものだった。激励される川のMさんは、さぞかし感動的に聞くことができただろう。Sさんは本当に面白い人だと思った。

私は翌日の便で島抜けした。Sさんをはじめとして、昨日のトド島の面々が皆見送りに来てくれた。今回は自分の意志に反して島を出なければならないので、余計に後ろ髪を引かれる思いだった。

Sさんはこの時の経験がきっかけで、その後も毎年星観荘を訪れるようになった。私も2度ほど再会した。その後しばらく来なかったが、昨年久しぶりにやってきたそうだ。私はもう長らく合っていないが、またいろいろと面白い話を聞かせてもらえたら、と思っている。

星観荘で出会った人の中で、印象深い人ベスト3に入るSさんのことを書いてみた。

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