結局高速から一番近く、登山に時間のかからない山として、蓼科山が選ばれた。東部湯の丸のインターから1時間半ほど南下し、蓼科山の裏側の登山口から登れば、2時間もせずに山頂にたどり着けるようだった。蓼科山は百名山に入っているが、平日ということもあり、また、ガイドブックで紹介されていたのとは異なるルートを取るので、さほど混んではいないだろうと思われた。
長野方面は八ヶ岳連峰が雲の間から見える。日が昇れば雲も取れるだろうと期待しつつ、上信越道を西へと車を飛ばした。長野に入るとやや雲行きが怪しくなってきた。蓼科山があるとおぼしき辺りも、空は高曇りであるが、山そのものは雲に隠れて見えない。果たしてこの先どうなるかちょっと心配だった。そして、東部湯の丸インターで高速を降りた。
東部湯の丸インターから蓼科山までの道はなかなか長かった。しかし、幸いなことに日が昇るに連れて空は晴れ始めた。蓼科山の麓ではまた空は曇ってしまったが、きっと山上では晴れるだろうと期待しながら、車は進んでいった。
蓼科山の麓から夢の平林道に入り、少し登ったところに、七合目の登山口がある。ここに車を置いた。駐車場には車は数台しかない。やはり思ったとおりである。静かな登山になりそうだ。すぐに準備をして登り始めた。辺りは一面の霧である。霧の合間に見えるカラマツの紅葉が美しい。
道は始めから樹林帯の中を登っていく。始めはカラマツ林だったが、すぐに針葉樹林帯に入る。登山道の岩は苔むしている。ここをしばらく登っていくと、霧が晴れ始めた。木々の合間からは光も差し込んでくる。さらに、正面の木々の合間に、ガスを隔てて、お椀を伏せたような山体が見え始めた。どうやらあれが蓼科山らしい。このまま登っていけば霧もどんどん晴れてきそうだ。この先が大いに期待された。