なかなか摩周岳へ取り付けない理由が、歩いているうちにわかった。摩周岳には摩周湖に接して火口がある。展望台からはそれはわずかしか見えないけれど、実はこの火口が結構大きく、登山道は摩周湖の縁から、摩周岳の火口をぐるりと回ってようやく摩周岳に取り付いているのであった。
それにしても、摩周湖の縁から離れた登山道は気持ちの良い道であった。摩周湖の縁では木々に覆われ、見通しはほとんど利かなかったが、摩周湖の縁から離れると、草原の中の道となり、火口の縁では、シラカバなどに覆われた明るい登山道であった。
しかしそれもやがて終わり、ついに摩周岳の山体に取り付く道にかかった。これが実に大変だった。急な斜面を一気に登るように道が付けられている。樹林帯の中で、足下は湿っており、とても滑りやすい。風通しも悪く、汗が噴き出す。なかなか足が進まないうちに、ひょっこり視界が開け、山頂に着いた。山頂は火口壁の一角で、ごつごつした岩場であった。そこから西の方へ向かって、荒々しい火口壁が続いている。
山頂から主として眺められたのは、摩周湖ではなく摩周岳の火口であった。火口の向こうに火口壁がそそり立ち、その向こうに摩周湖の青い湖水が眺められた。後ろを振り返ると、遙か遠くに斜里岳がなだらかに裾野を広げている。
空は曇っていたけれど、主立った景色はだいたい眺めることができた。山頂でようやくかきめし弁当を食べることができた。甘辛く煮含められたカキとアサリ、フキが実に美味しい。昔に比べて貝類が少なくなったのは気のせいだろうか。しかし、味は昔と変わらないのが嬉しい。
お腹も一杯になり、山頂からぐるりと周囲を見回して下山した。ちなみに摩周岳の標高は857メートルである。1,500メートルクラスの山に登ったくらい疲れた。