桑の海 光る雲

桑の海の旅行記・エッセー・書作品と旅の写真

登山の記65・幌尻岳⑨

2006-07-09 22:49:32 | 旅行記

空が見え始め、樹林帯を出た。稜線に出たらしい。すると左手に、三角形の山が見えた。戸蔦別岳である。札幌のK宮さん達が登った時は、幌尻岳とこの戸蔦別岳をまわったとのことである。戸蔦別岳は特殊な岩石でできているため、珍しい高山植物も多いと聞いたことがある。空は相変わらず曇りである。

少し行くと、命の泉の看板が出ていた。斜面を少し下ると、岩の間から水が流れ出ているところがある。雨模様が続いているのか、水は結構な勢いで流れ出している。手ですくってみると、あまり冷たくなく、むしろ生ぬるい感じである。山の清水は冷たいもの、という先入観があったので、この生ぬるさは意外であった。私は、山ではあまり水分を補給しないので、水は二口三口飲むだけで済ませた。

そこから先は稜線歩きが続く。ハイマツが見え始めると、急に目の前が開け、幌尻岳の北カールの全景が目に飛び込んできた。私は思わず歓声を上げた。今までに見たことのない地形である。カールの最奥部にはわずかに雪も残っている。登山道はカールを囲む稜線の上に付いており、カールを半周したところに、最高点の頂上がある。今私がいる辺りのちょうど真正面の所に山頂があるのである。

足下の斜面には、エゾノハクサンイチゲやミヤマアズマギク、ウズラハクサンチドリなどの高山植物がたくさん咲いている。大雪山などとは地質も植生も異なるのだろう、お花畑の面積は広いものの、花の種類や密度も少なく、全体として地味な感じがした。

歩いているうちに、カールの向こう側からどんどんガスが湧いてきた。これはそのうち辺り一面がガスに覆われてしまうに違いない。私は足を速めた。

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