桑の海 光る雲

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登山の記72・御座山④

2006-07-23 21:00:34 | 旅行記

最後のひと登りの後、樹林に囲まれた平らな場所に出た。すると目の前に避難小屋があった。避難小屋は頂上直下にあるとガイドブックにあるので、どうやら間もなく頂上であるようだ。避難小屋の目の前には、シャクナゲの巨大な株がある。花が咲いた時の見事さが思われた。

平地を囲む樹林の一角が途切れて、明るくなっているところがある。登山道はここへ続いている。そこへ進むと、いきなり目の前がぱっと開け、八ヶ岳連峰が目に飛び込んできた。右手には大きな岩山が現れた。ここを登ると山頂である。

空は相変わらず雲一つ無く真っ青である。はやる気持ちを抑えて岩を登っていく。登っていくに連れて周囲の山々も目に入ってくる。そして間もなく、山頂にたどり着いた。御座山全体は鬱蒼とした木々に覆われているが、なぜか山頂部分だけはごつごつした岩山なのである。

山頂からの眺めは見事の一言に尽きた。北には浅間山が聳え、薄く煙を吐いている。北西には先ほど眺めた北アルプス連峰が見える。西には雄大な八ヶ岳連峰が聳え、その北には北八ヶ岳連峰と蓼科山が続いている。

そして何と言っても感動したのは、南アルプス連峰を眺めることができたことである。一番手前にすっくと聳えているのは甲斐駒ヶ岳である。その右にひときわ高く、ちょっと首をかしげたように立っているのが北岳である。その奥に聳えるのは間ノ岳か農鳥岳であろう。いつかあの山々の山頂に立ちたいものだと思った。(富士山が見えたかどうかは、写真がないので覚えていない。)

その時までに私は深田久弥の本を読みあさり、100名山ガイドや200名山ガイドを読んできたので、山座同定もだいたいできるようになっていたので、山頂から見える山を、それぞれ名前を持った山として確認できたのは嬉しかった。

標高2,000メートルの山頂ながら、風もなく、実に気持ちの良い天気である。私達は早速お昼にした。めいめいでお湯を沸かしてコーヒーやラーメンを作ったりしているうちに、S先生お手製のキムチ鍋が出来上がった。これがとても美味しいのである。さすがに気温は低めなので、体が温まった。

山頂には1時間以上はいただろうか。のんびりとした時間を過ごし、周囲の光景を堪能し、気持ちを残しつつ下山した。下山途中では、登りの途中で拾った白樺の樹皮を忘れずに拾っていった。この樹皮には後に山口誓子の句「啄木鳥や落ち葉を急ぐ牧の木々」を書いて、グループ展に発表した。

下山後も、途中の道から車を止めて御座山を振り返った。ついさっきまであのごつごつした岩山の山頂にいたのだと思うと、何とも感慨深かった。

コメント
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