桑の海 光る雲

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登山の記37・ニペソツ山1,2回目①

2006-05-09 23:21:10 | 旅行記

そんないきさつを経て、登山を決行したのはその2年後だった。初めてのトムラウシ行きから帰ってきた晩、Oさん、Kさん、Sさん(女性)と話がまとまり、登ることになったのだった。私は念願のニペソツに登れることに、疲れも吹っ飛んでいた。

翌朝。空はどんよりと曇っている。予報は曇り時々晴れ。十勝方面はきっと天気が良いだろうと楽観的に考えて出かけた。三国峠を越えると・・・やはり曇っていた。真正面に見えるはずの山々が全く見えない。でも、山頂は雲の上に出ているんじゃないか、とまたもや楽観的に考え、とうとう登ることに決めたのであった。

杉沢出合には車がけっこう停まっていた。そう、今日は土曜日である。Kさんは既にニペソツに登ったことがあるので、Oさんが先頭、Sがその次、私が3番目、Kさんが最後尾で登っていく。川を渡って林間の尾根筋を延々と登っていくのだが、これがかなりきつい。展望もきかず、風もない。しかも尾根筋をほぼまっすぐ登っているので、斜度がかなりある。しかし先頭のOさんはかなりハイスピードである。Sさんも普通に後を付いていく。私はトムラウシの疲れも残っていたが、念願のニペソツということで気合いが入っていた。問題はKさん。かなり荒い息づかいが聞こえる。大変そうな様子だ。でも、何も言わない。いや、誰も何も言わない。とにかく、黙々と登っていく4人であった。

小天狗の鎖場で最初の休憩をした。Kさんが「Oさん速いよ~!」とここで声を上げた。私はいつもの調子であったからそう速いとは思わなかった。Sさんは平然としていた。ここから天狗のコルまで下り、そこからナナカマドの間を登っていくと視界が開け、ハイマツ帯が始まる。すると、目の前にちょろちょろと動く動物が見えた。初めナキウサギかと思ったが、違う。声が違う。それはエゾオコジョであった。さかんに岩の隙間を出入りしている。背中の焦げ茶色の毛と、腹の真っ白な毛の配色は鮮やかで、また目が可愛らしい。しかしKさんによれば、この可愛らしい動物が、あのナキウサギを食べてしまう獰猛な面を持っているのだそうだ。

その辺りからハイマツ帯に入り、視界が開けた。空は相変わらずどんよりと曇り、本来なら見えるという表大雪連峰など全く見えない。前天狗の山腹を巻くように付けられたほぼ平らな道を進んでいき、岩場を登り切った時、Kさんの大きなため息が漏れた。本来ならここでニペソツが初めて見えるのだそうだ。でも、私達の前には真っ白なガスの光景しかない。しかし、ここまで来てしまった以上は戻るのももったいないし、Kさん以外の3人はニペソツは初めてだったので、ともかく登頂だけはしようということに決めた。

コメント (2)
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