狩野川
次の札所の32番連光寺は沼津駅の東側にある。長谷寺からは沼津のメイン通路を歩いていけるが今回は狩野川沿いの道を歩くことにした。
狩野川は静岡県では珍しく水がある川で今日も多いとは言えないが水が流れていた。
静岡県外の人は川には水が流れていて当然と思うだろうが、静岡の場合は少し違う。静岡の大きな川は西から天竜川、大井川、安倍川そして富士川とあるが、そのいずれの川も水が少ない。今回越えた安倍川は一流の流れもなかったし、富士川も少なかった。大井川は水が少なくて川霧が発生しなくなって茶農家が困っている。いずれの川も河原砂漠の状態になってしまっている。これが大雨が降ると一転して濁流と化すのだから困ったものだ。
32番 連光寺山門
マーそれはともかく永代橋や御成橋を見ながら堤防沿いに下る。元の国1を渡りJRの線路見えてきた所で右に曲ると32番連光寺の入口が見えてきた。
連光寺は手入れが良く行き届いた寺で、観音堂の前は箒目も綺麗についている。街中に在るのに静かで落ち着いた感じの寺だった。
連光寺本堂
観音堂前の箒目
サー後一寺で駿河一国観音巡りの33番目の札所になる。頑張って歩かなければ。
沼津から三島までまた旧東海道を歩くことになる。だが開発されてしまった道は昔の面影は何も無く、車の流れと共に排気ガスを吸いながらトボトボ歩くしかない。
こうして下を見ながら歩いていると最近増えている落し物に気が付いた。新型インフルエンザの流行によって使い捨てマスクが氾濫した結果なのだろうが、道端にそのマスクが落ちている。ゴミなのか落し物なのか不明だが、こうして歩いていると毎回何個かのマスクを目にする。名前が「使い捨て」などと言うので気楽に捨ててしまうのかもしれないが良くないことだ。私のような鈍感な者はマスクなど使ったことはないが、マスクを愛用する清潔好きの人はその処分も清潔にしてほしいものだ。
そうこうしているうちに旧の国1と旧東海道の分岐する東下石田の交差点に着いた。33番はこの旧東海道を少し行った所にある。右折しようとして交差点の先に石碑があるのに気がついた。交差点を渡って見てみると石碑には「東海道」と書いてある。石碑が立っている場所から判断すると右折する道ではなく旧国1側を指している。変だなと思いながら石碑の指示通り歩き始めた。どうしても気になるので丁度良く作業をしていた人がいたので聞いてみた。
「旧東海道はこの道でいいですか?」
「いやこの道でなく、あっちの道だ」と先ほどの右折する道を指す。
「あそこの石碑に、この国道側に東海道と出ていたのですが」
「石碑は見たことがないが、旧東海道はあっちの道だよ」
どうやら疲れが出ている私の判断ミスのようだ。確か石碑には旧東海道でなく東海道と書いてあった。と言う事は--- なんだか余計こんがらかってしまった。
聞くついでに33番潮音寺の場所も聞いてみると、この道行っても行けるらしい。今更戻って旧東海道に戻るのも馬鹿らしいので、そのまま進んでしまった。
(今こうして思い出しながら書いていると戻れば良かったと反省している)
33番潮音寺
33番潮音寺には裏から入る事になった。考えてみればそれは当り前の事で昔は旧東海道しかないのだから当然山門は街道側にあるだろう。
マーそんなこんなはあったけど7日目の4時25分結願を迎えることが出来ました。
潮音寺の境内には古い石仏が無造作に置かれている。三つの顔を持った不動明王(?)らしき石仏や聖母マリアを思わせるような石碑もある。
また境内に亀鶴姫のお墓もある。亀鶴姫とは縁起書を読むと、源頼朝が富士の巻狩りのおり、美人の誉れの高い地元の亀鶴姫を酒宴に招いたが、亀鶴姫はそれを拒んでしまう。頼朝の再度のお召しにも姫は応ぜず黄瀬川に身を投げてしまう悲しい伝説のヒロインのようだ。地元の人達は亀鶴姫を偲び、観音さんを作って供養して、いつしかその観音さんを亀鶴観音と呼ぶようになったとか。
潮音寺の石仏
ご朱印のおり住職に聞いてみた。
「この駿河一国巡りは何時の頃に出来たのですか?」
「サー 大分古いと思いますよ」
「一国巡りをする人はどれ位いますか?」
「サー 今では廃れてしまって殆ど来ませんね」
折角33ヶ所回ってきたのだから、もう少しマシな話を聞きたかった。
たまに来る金にもならない遍路など眼中にないのだろうが、少々淋しかった。
以前マイカーで7日間かけて遍路をしたことがある。その時88番で感じた感激を再度味わいたくて翌年歩き遍路をしてしまった。
それがこの駿河一国では何の感激も感じず打ち終わってしまった。
止めよう。私は何も宗教的満足を求めて歩いたのではない。ただ目的も無く歩くより、目的があった方が遣り甲斐があると思い歩き出したのだ。ご朱印もスタンプ代わりに過ぎないくせに感激しなかった理由を札所側に求めるなんて。
幾ら歩いても「吾唯足知(われ ただ たるを しる)」事のできない人間のようだ。
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