すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

キヨちゃん、お友達の訃報。

2022-03-26 20:18:52 | うちのキヨちゃん
 金曜日、私はいつもより早く出勤する。デイサービス介護の日だが、その前にケアマネのデスクワークや、デイの段取りをちょっとだけするためだ。
 パソコンに向かっていると携帯が鳴った。こんな朝早くに?と出ると近所からだった。
 「あのな、〇〇のおばちゃん、今朝亡くなったんよ。」
!!!!
 おばちゃんはキヨちゃんのお友達でもあり、家はすぐ近所だ。けれど、亡くなるような状態とは知らなかったのでびっくりして、しばらく絶句した。
 「ほんでな、ごめんよ。家に電話したらおばちゃん(キヨちゃん)がパニックになって。」
!!!!
 そうなのだ。当然私が家にいる時間と思って電話くれたのだが、キヨちゃんが電話を取り、取り乱しているというのだ。
 すぐにくりりんからもライン。出勤前に慌てて送ってくれたらしい。
 「お母さん、パニックになっているから電話してあげて。」
 さて、困った。頭の中で急いで整理する。まずはデイの上司にもしかしたらお休みを貰うかもしれないと告げる。それから、もう一度近所に詳細を確認。とりあえず決まっているのは夜7時から通夜と言うだけ。
 7時なら仕事を終えてからでも十分間に合うが、問題はキヨちゃんだ。キヨちゃんに電話すると案の定パニック状態だった。
 「とにかく、なるべく早く帰るから、しっかりしなよ。」
そう伝え、デイには入浴の介助のある午前中だけで終わらせてもらえるよう頼んだ。
 それから直属の上司に状況を説明し、昼から帰る許可と、状況によっては土曜日を休むか勤務交代することを伝えた。
 午前中バタバタと仕事をしてるとキヨちゃんから2回着信。急いで電話すると、
 「あのな、今リハビリさん(訪問看護)帰ったんよ。母ちゃん今から髪切りに行ってくる。」
とふわ~っとした声で言う。
 「え?母ちゃん、今日は止めて。」
 「何で?髪伸びたのに。」
・・・・。これは、落ち着いたということか?はたまたちょっと変なネジが外れたのか?余計心配になる。
 「あのな、母ちゃんが大丈夫なんなら、私は仕事してから帰るんよ。ほんでも母ちゃんが心配なけん、昼から帰ることにしたんよ。おばちゃんの事で何か言うてくるかもしれんし、今日は家でじっとしてて。」
 何とか13時頃には職場を出て家に帰った。本当は夜通夜に私が行く予定だったが、キヨちゃんは夜は歩けない。また葬儀に出るのも難しかろう。
 「昼の間に顔見に行きたい。」
と言うので、近所に相談し、ご家族にも相談した。
 「それは是非顔を見てやって。」
と快く言ってくださったので、ご厚意に甘えてキヨちゃんを連れていくことにした。
 大急ぎでシャワーを浴び、キヨちゃんと家を訪ねた。

 キヨちゃんは枕元にたどり着くまでに号泣し、ご遺体の前で突っ伏した。
 「キヨちゃんが来たんでよ。なあ、なんで返事してくれんの。うちよりもずっと若いのに、何で!何で!」
綺麗なお顔で横たわるおばちゃんの頬を撫でながら、キヨちゃんはそう慟哭した。
 連れて帰るまでには、落ち着きを取り戻し、思い出話も出来るようになりほっとした。しかし、電話を貰ってからずっと泣いていたようで、私が帰るまで何も口にしていなかった。
 
 夜の通夜にはくりりんと行き、今日の葬儀には私が行った。春の嵐で車が浮くかと思うほどだったが、斎場の辺りは穏やかだった。斎場の桜が満開で、鳥が蜜を吸ったり花をついばむのをぼんやりと眺めた。
 コロナ禍だが、子供さんたちは皆死に目に会えたと聞いたので、それは幸いだった。けれど、今はどこにいても面会もままならない。葬儀も家族葬が多い。
 ある担当様が、
 「今は絶対死にたくない。誰にも看取ってもらえない。誰にも見送ってもらえないなんて嫌じゃ。近所にも友達にもみんなに送ってもらいたい。」
とこぼしたことがある。
 コロナが無ければ、生前家族もガラス越しじゃなく、もっと会えた。キヨちゃんだって会いに行けた。それだけが心残りだ。

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コメント (3)
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