すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

一斗缶

2006-06-28 21:37:34 | ひとりごと
 忙しい仕事の最中、ハイターがないことに気づいた。さらに取り分けようとしたら、本体(一斗缶)も空だ。地下室からうんせうんせと運び出す。
 しかし、ふと自分の力のなさに驚いた。確か入社当時は一斗缶二つ運べたのだ。なにせ力仕事なのだから、本職が。 洗濯場のおばちゃんにこのことを話すと
 「私も力無くなったわ。昔はプロパンガス二つ運べたのに、今は一つで精一杯じゃわ。」
・・・・。女の・・・会話じゃない!!!
無性に切なくなるのである。
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勘違い

2006-06-22 23:36:19 | うちのキヨちゃん
 家に猫が来てから、一年あまりもたった頃である。キヨちゃんの怒声に、私は何事かと裏庭に向かった。訳を聞くと、どうやらよその猫がうちの猫と寄り添っていたらしいのだ。別段、悪さをしているわけでなし、構わないと思うのだが、もともと猫嫌いだったのだし、よその猫は可愛くないのだろうと思っていた。
 すると私に彼女はこう言った。
 「うちのくろちゃんに、子供が出来たら困る!」
・・・・。私はしばし絶句した。何故ならうちの「くろちゃん」はれっきとした雄なのだから。しかも「去勢」しているのだ。
 だいたいキヨちゃんは、信じられないような勘違いが多い。あるいは感じたまま考えずに、口に出してしまうので、結果驚くような発言となる。
 動物好きの我が家の好きな番組に、「ポチたま」というのがある。中でも大好きなのが、「まさおくん」というラブラドールの旅犬と「松本くん」という旅人が、全国を回るコーナーである。その「まさおくん」に子犬が産まれた。あまりにそっくりなので、旅先でも間違われるほどだった。それを見ていたキヨちゃんも
 「まさおくん、可愛いなあ。」
と、「だいすけくん」(息子犬)を親犬と勘違いしていた。
 「お母さん、これまさおくんと違うんよ。」
 「まあ、違うん?」
 「息子の方。」
私が説明すると、キヨちゃんは間髪入れずにこう言った。
 「まあ、松本くんの息子。」
・・・。いくら何でも、勘違いにもほどがあるだろう。
 「そんなわけないやん!」
と突っ込む私を軽く無視して、
 「この人ら、お気楽な仕事でええなあ・・・。」
としみじみ言うキヨちゃん。あなたに言われたら気の毒だなと思うのだけど・・・。
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2006-06-22 23:33:21 | うちのキヨちゃん
 現在我が家では猫と犬を飼っている。もともと祖父の犬好きのお陰で、昔から犬は常に飼っていた。しかし、猫はかつて飼った試しがなかったのだ。おそらく祖父が猫好きではなかったのであろう。父は動物はだいたい好きな人であるが、独身時代に飼っていた猫を、目の前で車に轢かれたトラウマから、飼えなくなっていたらしい。うちのキヨちゃんに到っては、大の猫嫌いだった。多くの主婦と同じく、土足で家に上がることを許せなかったのだ。
 そんな我が家に一生飼うはずもなかった猫がやってきた。ある日、家の前に捨てられていたのだ。当然家族は大反対、何となく家の周りで雨露をしのぐだけの猫だった。そこで仕方なく里親を探していたのだが、簡単に見つかるはずもなく、そのうちに少しずつ少しずつうちの猫になっていった。
 父と私はともかく、猫嫌いのキヨちゃんは最後まで飼うことを認めなかった。例え家で餌を食べていても「預かっている」と言い続けたのだ。しかし、ある日私は見てしまった。「しっしっ!」と猫を追い払いながら、落としたふりをして、いりこ(餌)をやるのを。ついに彼女も猫の魔法にかかったようだった。
 今では誰よりも猫の虜であり、父と二人にこにこ猫の寝姿に見入るキョちゃん。
 「父ちゃん、娘がいて猫がいて犬がいて、幸せよなあ。」などと言われてしまうと、なまじ「孫の顔が見たい」等と言われるよりも、胸に堪える私である。

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マムシ

2006-06-17 22:06:30 | うちのキヨちゃん
 うちはすごい田舎であるため、よくマムシに遭遇する。山の子だとて恐いのは同じなのだから、出来ればお会いしたくないのだが、これがほぼ毎年一度や二度は出会うのである。巣が近くにあるのか、我が家の隣家などは庭で出くわすというからいただけない。
 さて、うちのキヨちゃんは何を隠そう「マムシ捕り」の名人である。危険だからいいかげんやめてと訴えても
 「うちが見つけたときに仕留めんと、他の人が噛まれる。」
と言ってきかず、自分が噛まれるとは思ってもいない。
 ある夏の日、隣家のお嫁さんから声をかけられた。
 「あの・・・、蛇がいるんだけど、マムシかなあ?」
田舎育ちとはいえ、マムシと会ったことがない彼女には見分けがつかなかったのだ。私はといえば、キヨちゃんのおかげですっかり目が肥えており、その分見分けが付く。ちなみにマムシは
1,太くて短い
2,鎖模様がある
3,ほとんど動かない(逃げない)
である。
 おそるおそる庭先を見ると、それはまさにマムシであった。慌ててキヨちゃんに電話するように伝えて、私とマムシはにらみ合った。その後は子供を家の中に入れ、ふたりして遠巻きにウロウロするばかり。
 するとあろうことかマムシは壁を登り始めたのだ。そこで私は咄嗟に「お湯!」と叫んでいた。壁のこちら側に身を隠しつつ、熱湯で退治しようという、浅はかな考えではあった。ところがお嫁さんもほのぼのとした天然系で、渡されたやかんから出てきたのは、あずかなぬるま湯。頭からそれをちょろりと掛けられたマムシは怒る怒る!
 万事休す!と思っていたところにキヨちゃん登場。体よりも大きな殴り鎌と火ばさみを持ち、高笑いする姿は、プチ弁慶である。
 「お前らにはあつらえん。ははは・・・」
そして数分後、マムシはあえなくキヨちゃんの手に落ちた。「危ないからやめて」とは決して言えなくなる私である。
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性格

2006-06-17 21:39:38 | じいとんばあ
   性格

 人は変わっていくのです
 あなたの愛した おばあちゃんは
 優しい笑顔の おばあちゃんだったのですね
 暴れたり 叫んだり ひどい言葉を吐くこの人を
 見るのは きっと辛いでしょうね
 受け止めるのは もっともっと辛いでしょうね

 人は変わっていくのです
 あなたの憎む おじいちゃんは
 冷たくて わがままな おじいちゃんだったのですね
 でもほら こんなに無邪気に笑うのです
 一度 会ってあげてくれませんか
 それで水に流せるほど 歴史は甘くないのでしょうか

 私たちは 今のこの人たちしか知りません
 だから この人の過去に どんな罪があっても
 今のこの優しさを 抱きしめていこうと思うのです
 だから この人のあたたかい昔の人柄を
 もっともっと教えてください
 きっと 忘れてはいないと思うのです

 今 意地悪で 実は昔もいじわるだったおばあちゃん
 たぶん 当然 そんな人もいるのです
 だけど 認めていこうと思うのです
 だって 本当の家族は逃げることは出来ないのだから
 その人たちに 託された命なのだから
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十字架

2006-06-06 20:49:10 | じいとんばあ
   十字架

 旅先で 偶然隣り合わせた人
 私は若く 仕事に誇りも希望も持っていた

 所詮 偽善じゃないか
 他人の世話してやって 自分たちは気持ちいいだろう

 辛らつな言葉が 胸をえぐった

 俺は他人に任せなかった
 この手で 二親を送り出したんだ
 数十年の長きに渡る 介護介護の日々
 交替してその日をしのぐ お前たちとは違うんだ

 酒の勢いも手伝って
 言葉の加速は止まらない
 酒の勢いも手伝って
 若い私は 押さえが効かない

 そうかもしれない
 だけど 私たちだって頑張ってる
 そこまで言うなら
 必要悪だわ

 涙ながらに 啖呵を切った

 必要ねえよ 本当の愛しかいらねえよ
 他人の同情なんか いらねえよ

 違う 違う 違う
 心が 泣き叫んでたあの日

 ふと 今あの「おやじ」を思い出す
 本当にこれでいいのだろうか
 私の中には 確かにおごりがあった
 思い上がった私がいた
 だけど
 今忘れそうな 前向きな私もそこにはいた

 あなたの言葉を忘れない
 正しいかどうかなんて 分からない
 私は これからも手探りであがいてく
 所詮 他人の偽善だと
 あなたの言葉を 十字架にして
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洗濯

2006-06-05 23:38:03 | うちのキヨちゃん
 キヨちゃんはとても働き者で、その昔は、家事の他にパートと内職もしていた。だから朝はとても早く、五時には洗濯物を干し終えていた。 
 しかもキヨちゃんは洗濯機が嫌いだった。とても水がもったいない気がするらしいのだ。だから、真冬の凍てつく日でも、湧き水をたらいにとってバシャバシャとやるのである。しかし困ったことに、私が洗濯機を使うことも嫌がるので、こっそりと使っていた。
 キヨちゃんの偉いところは男の子を産まなかったことだ。朝五時に湧き水で洗濯、しかも手洗いする家に、誰が嫁に来るというのだ・・・と常々私は思っていた。
 しかし、さすがのキヨちゃんも寄る年波にはかなわず、今では朝もすっかり弱くなった。洗濯機は勿論使うし、水が流しっ放しになっていても
 「かんまん(かまわない)、水は山ほどある。」
と言うのである。
 そうである。考えてみれば、家の水はすべて山の水であり、たらいで洗おうが洗濯機で洗おうが同じ水なのである。
 一体キヨちゃんが何故たらいにこだわっていたのか、今もって謎である。

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四次元ポケット

2006-06-05 21:43:12 | じいとんばあ
      四次元ポケット
 
   「ありゃ こんな所にキャラメルが」
   あなたのポケットは 不思議なポケット
   しまったことを すぐに忘れてしまうから
   いつも マジックみたいに
   いろんな物が 出てくるんだよね
   とても 得したみたいに喜ぶけど
   それも すぐに忘れちゃう

   一日に 何度も同じ質問をして
   私たちも 何度も同じ答えをする
   毎回毎回 心底驚いた顔をするあなたと
   どんどんマンネリ化しちゃう
   私たちの答え

   ポケットが必要なのは
   本当は私たちの方なのかもね
   いつでも新鮮な驚きと感動で
   過ごせたらいいね
   そうありたいね

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