すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

愛犬の置き土産??

2007-05-28 08:35:47 | ひとりごと
 最近、父の調子がいい。まず、歩行器でなければ歩けなく、それでも付き添わないと不安だったのが、杖歩行出来る。8時過ぎまでぐずぐずと寝ていたのが、7時にはすっきりと目覚めている。食欲も僅かだが出てきた。
 先日は朝7時前に一人で母屋に起きてきて
 「腹減った。飯まだか?」
などという。今まででは考えられない。まして、「あれが食べたい」なんて今までほとんど言わなかった。「別にほしいものない。」が定番だった。
 「父ちゃん、頭もすっきりしとるし、調子ええなあ。クリのお陰かな・・・。」
父も母も、これが愛犬の置きみやげだと信じて疑わない。私も実はそう思っている。
 真実はどうであれ、父がそう思って前向きに頑張っていることが嬉しい。それこそが、本当の置き土産な気がする。
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愛してくれた人々へ

2007-05-25 22:49:28 | ひとりごと
 先日、クリを愛してくれた人々に感謝の気持ちを伝えて歩いた。
 まず、友人ふたり。ひとりは毎日のようにクリに会ってくれた。心細い私のそばにもいてくれた。一緒に泣いてくれた。ひとりは私たち家族と距離をおいて、陰からずっと応援してくれた。食べられそうな餌や情報を与えてくれた。
 ふたりにはクリの最近の写真を贈った。ありがとう、本当にふたりには助けられた。ふたりとも快く受け取ってくれて良かった。
 次に動物病院。スタッフのみなさんにも感謝している。後半飲めなかった薬はもったいないので、お返しすることにした。次の動物に有効に使って貰えればそれでよい。スタッフにアイスクリームでも差し入れようと、コンビニに寄る。ハーゲンダッツを手に取りしばしためらう。スタッフの人数を考え、リーズナブルなメーカーに変更・・・。
 生憎院長は手術中だったので、看護士にクリの最期を伝え、御礼を言った。そして、アイスを渡して、薬を返した。すると看護士さんが
 「じゃあ、払い戻します。」
と言った。一瞬、不覚にも手を出しそうになったが、それは出来ない。そもそもそんなつもりで返したのではないのだし、それを受け取ると、台無しな気がした。
 私が断ると
 「では、大切に治療に使わせていただきますね。」
と言ってくださった。
 帰りの車の中、ぼんやりと頭の中で「一粒800円・・・」とかすかな後悔がくすぐった。
 クリ、これでいいよね。姉ちゃんはやっぱり見栄張って、それをネタにして笑われて生きていくよ。

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キヨちゃん復活!

2007-05-23 07:03:55 | うちのキヨちゃん
 愛犬を失うという出来事は、病気の父を叩きのめすのではないかと心配したが、案外父はしっかりとしている。むしろ危ないのは母の方だった。
 もともと感情の起伏が激しく、情にもろい質なので、死ぬ前も死んでからも痛々しいほどだった。
 今我が家は、前にも書いたとおり住宅改修の最中である。父の為のバリアフリーは着実に形になっていく。
 忙しいということは、家族にとっても悲しみに飲み込まれることがなくてありがたい。
 さて、家のトイレである。みなさんは自宅のトイレに入るとき、鍵はかけますか?うちは否である。家族しかいないのだし、めったなことで鍵は使わない。だからものすごくシンプルな古いスタイルの鍵が申し訳程度についているのだ。
 キヨちゃんも、鍵はかけない。戸を閉めるだけましだと思うことさえある。そんな彼女が、何を思ったのか鍵をかけた。大工さんが出入りしていて、ふとニアミスする事を想像したのかもしれない。ところが、鍵はしめたが開け方を知らなかったのだ。
 さあ困った。私は仕事である。父は離れである。精一杯の声で大工さんの若い男の子を呼ぶ。
 「どうしたんですか?」
 「鍵開けられん。たすけて。」
外から指示を出そうにも、全くキヨちゃんには通じない。そこでその大工さんは気の毒にもトイレの小さな窓から侵入。無事救出してくれたのだ。全くはた迷惑な話である。
 また愛犬をなくしてから、私への心配も倍増した。通勤などで運転するので心配は「交通事故」に及ぶ。
 「気ぃつけて行きなよ。疲れとんじゃけん、運転しよったら、眠とうなるよ。」
 「分かっとるよ。行って来ます。」
 「眠たくなったら、寝ながら行きなよ!」
・・・・。それは居眠り運転ではないのか?
 「あ、間違えた。休みながら行きなよって言いたかったんじゃ。」
間違いに気づいたキヨちゃんは高らかに笑った。
 心配ないキヨちゃん、復活!である。

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最期の夜

2007-05-20 23:00:55 | ひとりごと
 18日私は公休だった。実は友人との約束があっての希望した公休だった。しかし、クリがいい状態ではなかったので、キャンセルした。友人も賛成してくれ、一日クリに付き添うことができた。
 足は全くたたない。嘔吐と下痢が続く。紙おむつを履かせて寝かせた。水は欲しがるがすぐに嘔吐するので、少しずつ喉に流し込んだ。
 夕方から家族で付き添った。寝室から居間に来た父は、クリの頭を撫でながら
 「おらより先に死ぬなって言うたのに!」
と嗚咽した。母も泣いた。私もこらえきれず泣いた。
 父が寝室に透析に向かう頃、息づかいが激しくなった。
 「病院やったら、酸素室で点滴だって・・・。」
そう私がつぶやくと、父が自分の酸素を外してクリにあげようとする。そっかその手があったんだ。父を止めて、使い古しのカニューレを携帯酸素につなぐ。そしてクリの鼻に近づけた。上手に吸えた。そして幾分呼吸が楽になる。気休めと分かっていても、少しでも苦痛が減ればとの思いだった。
 夜親友が来て、しばらく一緒についてくれた。苦しい息の下でも何とか外で排泄しようと敷物を力無く掻く。睡眠不足の私の体力も限界だった。翌日の仕事のためにも、少しは身体を休めなくては・・・とどこかで思う。横で寄り添いながら酸素の警報が鳴れば酸素を近づける、様子を見るを繰り返した。
 そして23時50分クリはついに息をしなくなった。涙が後から後からあふれ出る。でも、私にはするべき事があった。
 身体を綺麗に拭いてやる。苦しい息の下で苦悶の表情では昇天出来ない。舌を収めて目を閉じさせる。お布団にくるんで寝かせてから、両親に伝えた。
 父はこらえて「そうか・・・」とだけ言った。母は居間まで来て、取り乱した。
 「ひとりは寂しい。母ちゃんついとる。そばにおる。」
そう言ってなきじゃくる母を子供を叱るようにして、寝室に戻した。
 夜明け・・・。父は実にしっかりとした足取りで居間に来た。クリの顔を見て
 「良かった。ええ顔じゃ。」
と安堵の声をもらした。それほどにクリの表情は柔らかだった。
 葬ったのは父の寝室と大好きだった庭の見える場所。ツツジの花の根本だ。
 ありがとう。あなたを忘れない。あなたのお陰で父も頑張れた。母も癒された。私も救われた。あなたの声、匂い、表情、仕草、どれもひとつひとつが愛しかった。もう苦しまなくていいから、安らかに眠ってね。

みなさま・・・応援ありがとうございました。
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眠れぬ日々

2007-05-18 04:57:16 | ひとりごと
 昨夜も眠れなかった。横になっても、常に神経は起きている。僅かな物音を聞き逃さないように、まるで夜勤の仮眠の状態でいる。
 クリはついに食べ物を受け付けなくなった。友人が流動食も買ってくれたが、それも受け付けない。水ばかり飲む。そして嘔吐を繰り返す。
 習慣なのかプライドなのか、排泄はどうしてもいつもの場所まで歩きたがる。でも、足はほとんど立たない。途中からだっこである。
 おしっこもほとんど出ない。気持ち悪くて何度もしゃがみ込んでは、仕舞いにへたり込んでしまう。
 毎夜、母が起きてきて、泣きながらクリに寄り添う。母が倒れるといけないので、心を鬼にして布団へ追いやる。
 父は相変わらずだが、何とか覚悟を決めている。むしろ母の方が心配な位だ。
 おそらく・・・もうそう長くはないのだろう。踏ん張っている私自身が、実は一番危ういのかもしれない。糸が切れないように、また心に誓う。

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奇跡という言葉

2007-05-15 00:55:51 | ひとりごと
 本日も(もう昨日)、午前中に動物病院へ。エコー検査。当然いいはずはない。血液検査。横這い状態。食欲は目に見えて落ちてきているし、嘔吐もすることが・・・。薬を飲ませるのも大変だ。
 胃薬が追加となり、他の薬は量を減らした。負担にならないように、今日は注射。
 院長先生が
 「この状態でカルシウム値が正常なのも、黄疸が出てないのも奇跡に近いです。」
とおっしゃった。奇跡ってもっと幸せな状況で聞きたい言葉だと痛感した。こんな状態でも、奇跡的に生きているんだ・・・。
 辛いだろうに、深夜に戻るとしっぽを振って出迎えてくれる。猫の喧嘩する声が聞こえたら、加勢するように吠える。もういいよ、もういいよって何度も撫でた。
 この先は通院しなくていいそうだ。電話で病状を伝えて、お薬は送ってくださるらしい。その方が、負担にならないだろうと。
 一緒に頑張ろうって言っていた父も食欲がない。イライラからわがままを言う。母が無理をして腰を痛めた。私の腰も悲鳴をあげる。
 でも、それでも家族の心は一つだ。今、クリが少しでも安楽に細く長く生きられるように祈っている。そして、出来る限りのことをしようと思う。

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き、気の毒な・・・

2007-05-12 22:01:39 | うちのキヨちゃん
 訪問入浴も回数を重ね、両親もずいぶん慣れてきた。残念なことに初めに担当になったナースが寿退社。そこで今は、デイだけでなく、特養からも応援に出てナースが交替で来てくれている。
 さて、訪問入浴のスタッフに大変いたずら好きの人がいる。とても子供じみたいたずらであるが、訪問入浴が終わるまでに、他のスタッフの靴を隠すのだ。これはお約束のようだ。
 我が家に来た当初は、遠慮もあったのかこのいたずらは見かけなかった。しかし、ナースが交替になった初めての日、彼はついにナースと男性スタッフの靴を我が家の塀に並べてみせた。
 帰ろうとして、靴がなかったスタッフは困惑しながらも、笑っていたらしい。
 さて、話はこのいたずらがどうだという話ではない。問題はこの話を仕事から帰った私に、キヨちゃんが説明した内容である。
 キヨちゃんは私にこう話した。
 「今日なあ、お風呂入れにきてくれたん。新しい看護婦さん来たわ。元気良くていい人やった。」
 「でな、今日はお天気が良かったけん、看護婦さんらの靴な、〇〇さん(いたずらスタッフ)が干しよった。〇〇さん気が利くわ。どうも、看護婦さん足臭いんじゃなあ。」
・・・・・。気の毒な・・・。普通彼がいたずらしたと気づくだろう。
 ナースよ、許せ!あなたの足が臭い訳じゃないとちゃんと説明したから。うちにはこれから看板が必要だ。

 要注意!キヨちゃんおります。ここで不用意にいたずらをすると、あらぬ誤解を受けます。

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だだっ子

2007-05-11 07:59:29 | じいとんばあ
 早朝 ベッドを抜け出して
 下着姿で しゃがみこむ
 小声で 犬の名前を呼びながら
 頭をなでて 涙ぐむ

 父ちゃん 何か着よう
 ううん
 父ちゃん お布団に入ろう
 ううん

 大きなだだっ子は
 ただただ 首を振る

 男はなあ 生涯に3回しか泣いたらいかん
 生まれ落ちた時 親が死んだ時 娘が嫁に行く時

 それがポリシーだった大きな父は
 小さな小さな だだっ子になって
 今 密かに涙ぐむ

 自分も 病気と闘って それでも弱音は吐かなかった
 降って沸いたような ペットの病は
 それでも 父を揺さぶった

 泣いとらへんぞ
 強がる父が こっそり犬につぶやいた

 父ちゃん 良うなったら お前も 良うなるか?
 父ちゃん 頑張るから お前も 頑張れよ

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もう泣かないって決めたけど・・・

2007-05-09 22:35:50 | ひとりごと
 今日、クリの二回目の診察があった。治療を始めて、食欲も出ているし少しは改善の兆しがあるものと思っていた。
 エコー検査。脾臓がまだらだったのが、今回は分からない。
 「よくなってる?」
そう思っていたら、それは肥大しすぎて分からなくなっていたのだった。肝臓も腫れている。血液検査の結果を待つ。
 それは、目を疑うような数値だった。食べているのに、貧血が輸血必要なぎりぎりな数値。いつ、内臓から大出血を起こしてもおかしくないとのことだった。もし、そんな事態になったら何日ももたない。ただちに抗ガン剤治療は中止。止血剤とビタミン剤とステロイド剤の投薬に変わった。
 前向きに「もう決して泣かない」と決めていた。そして、今日まで泣かなかった。でも、あまりの進行の早さに戸惑い、隣にいたわんちゃんの飼い主さんに
 「どうしたの?」
と声を掛けられたことで、糸が切れた。
 偶然会って、一緒に行ってくれた親友が一緒に泣いてくれた。だから、救われた。
 負けない。決して負けない。残された時間がどれくらいあるのか分からない。わずかなのかも知れない。でも、だからこそ、精一杯一緒にいよう。

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やきもちやきのお猫さま

2007-05-08 01:05:35 | ひとりごと
 愛犬が病気してから、どうしても犬ばかり構ってしまう。犬は本来甘えん坊であるが、猫は淡泊な物だ・・・と思っていた。しかし、うちの坊ちゃんはやきもちやきである。
 今まで私の布団で寝ていたのは自分ひとりの(一匹の)くせに、調子の悪い愛犬に付き添って居間で眠ると、これでもか!というほど抗議鳴きをする。
 父が頭をなでに行くと、脇から割り込んで「僕も僕も!」とすり寄ってくる。まあ、父にしてみれば、これが「たまらない」訳で、
 「父ちゃんもてもて!お前ら父ちゃんそんなに好きか?」
とご満悦である。
 猫はもともと「意地悪」なところがある。普段は犬とトラブルにならないように、ある程度節度のある距離を保っている。通りたい場所に犬がいると、遠回りをするか、私に助けを求める。ところが、犬が元気がないと分かると、わざわざ鼻先を悠然と通ってみせたりするのだ。そのくせ甘え上手で、つい私たちもやられてしまう。
 しかし、今回はさすがに犬の病気が病気なので、本当に「元気がない」時がある。鼻先を通りかけて犬の顔をのぞき込む猫。何を考えたのかは分からないが、ちょっと遠慮したように、迂回した。気まぐれかも知れないが、ばか飼い主は勝手にアフレコする。
 「え?マジで病気なの?大丈夫なんかな?」
そして、勝手に「うちの猫(子)は賢いなあ」などと思うのである。
 動物は喋らないから、「痛い辛い」を訴えないから、よけい不憫だ・・・と母は言う。しかし、もし言葉を喋ったら耳が痛いかも知れない。たぶんほとんど私たちの愛情は「身勝手な思い込み」なのだから。
 今夜もお猫さまは夜遊び中である。これから朝までに何回起こされるだろう?何にしても、我が儘でもいいから、元気でいてほしい。お前たちは私たちの家族であり、何より父の「生き甲斐」だから。
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