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〈『追悼 義農松田甚次郎先生』(吉田六太郎編)、吉田矩彦氏所蔵〉
では今回は、静岡の池谷 武夫が寄せた追悼からであり、それは
静岡 池谷 武夫
松田君との交際は久しいことであつたが君とはじめて顔を合わせたのは昭和十四年の八月十一日静岡駅頭であつた。
君が兼ねて静岡の地に参りたいと云ふ希望を持つて居られたが丁度私達の催しで二日間の講習会に御出を願つたら早速来てられて暑中に長い汽車の旅にもかゝはらずその夜の講習會に出席して夜半まで体験を通しての尊い愛土の御話をして頂いて講習會員に夛大の感銘を御與へ下さつたこと、翌日は鷲巣姉妹の家(土に叫ぶ書中の人<*1>)に立寄られ心を慰められた。…投稿者略…
その夜、静岡市の中央縣信聯の階上で関係者一同と笑談会を林君の主催でなし、夜半に及び当夜坂本四郎氏の宅へ泊られ、翌朝五時の汽車で帰省された。…投稿者略…
〈『追悼 義農松田甚次郎先生』(吉田六太郎編)30p〉松田君との交際は久しいことであつたが君とはじめて顔を合わせたのは昭和十四年の八月十一日静岡駅頭であつた。
君が兼ねて静岡の地に参りたいと云ふ希望を持つて居られたが丁度私達の催しで二日間の講習会に御出を願つたら早速来てられて暑中に長い汽車の旅にもかゝはらずその夜の講習會に出席して夜半まで体験を通しての尊い愛土の御話をして頂いて講習會員に夛大の感銘を御與へ下さつたこと、翌日は鷲巣姉妹の家(土に叫ぶ書中の人<*1>)に立寄られ心を慰められた。…投稿者略…
その夜、静岡市の中央縣信聯の階上で関係者一同と笑談会を林君の主催でなし、夜半に及び当夜坂本四郎氏の宅へ泊られ、翌朝五時の汽車で帰省された。…投稿者略…
というものだ。
さてこの追悼により、甚次郎が如何にあちこちへ講演に出掛けて行っていたかを改めて知った。地元はもとより、県外は秋田を最多として新潟や青森、遠くは京都までも行っていたということであったが、前回は長野へも、そして今回は静岡へも出掛けて行っていたことを確認できたからだ。
まさしく、81年前の今日、甚次郎は静岡に行っていたのだ。しかも、その11日には講習会で体験談等を講話、同じく12日にはわざわざ鷲巣姉妹<*1>の許へも訪ねて行った後に、夜半まで笑談会に出席、そして13日朝5時の汽車に乗って山形に戻ったということになるからいわゆる「とんぼ返り」であり、この静岡行はもちろん物見遊山などではなかったということも判る。よって、
当時の甚次郎は心底、農村文化の向上や農産物の増産を願って、全国を講演等のために駆けずり回っていたのだ。きっと。
だから、甚次郎は農本主義者で、戦意昂揚に与し、時流にのり、国策におもねたと誹る人があるが、この『追悼 義農松田甚次郎先生』の中身を知れば知るほど、それはほぼ当たらないのではなかろうかということを私は確信しつつある。
もし農本主義者ということであれば、賢治の羅須地人協会での活動も「農本主義的」な側面があった。また、「戦意昂揚に与し」については、この『追悼』集を読めばそんなことは直接的には読み取れない。甚次郎が「戦意昂揚に利用された」ということまでは否定しないが、それは賢治もそうだったということは歴史的事実だ。にもかかわらず、甚次郎が「時流にのり、国策におもねた」と誹られるのであれば、それはあまりにもアンフェアだ。このような甚次郎がもしそう誹られるのであれば、もっともっとそうされねばならぬ人が他に沢山いたということは、少なくとも論理的には明らだからだ。
<*1:投稿者註> 詳しくは『土に叫ぶ』104p~をご覧あれ。
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《発売予告》 来たる9月21日に、
『宮沢賢治と高瀬露 ―露は〈聖女〉だった―』(『露草協会』編、ツーワンライフ社、定価(本体価格1,000円+税))
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を出版予定。構成は、
Ⅰ 賢治をめぐる女性たち―高瀬露について― 森 義真
Ⅱ「宮沢賢治伝」の再検証㈡―〈悪女〉にされた高瀬露― 上田 哲
Ⅲ 私たちは今問われていないか―賢治と〈悪女〉にされた露― 鈴木 守
の三部作から成る。Ⅱ「宮沢賢治伝」の再検証㈡―〈悪女〉にされた高瀬露― 上田 哲
Ⅲ 私たちは今問われていないか―賢治と〈悪女〉にされた露― 鈴木 守
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