みちのくの山野草

みちのく花巻の野面から発信。

青森 齊藤浩

2020-08-12 12:00:00 | 甚次郎と賢治
〈『追悼 義農松田甚次郎先生』(吉田六太郎編)、吉田矩彦氏所蔵〉

 では今回は、青森からの追悼であり、以下のようなものがあった。
     青森 齊藤浩
日でり續きでずゐぶん危ぶまれた稻もどうやら実り、人々を生かす為に間もなく出廻るでせう。これらの稻田の中に立ちますと、ほんとに稻を愛でてゐる松田先生の幻影が去来します。
何年か以前一日の仕事も終り、十里の山道を自轉車に宅し、青森に於ける先生の座談會に出席したのが、後にも先にも先生に面會した一回でしかなかつた。
土に生まれて土に生き、しかして土に死した先生は幸福です。私は未だ先生のことを考へると無生に腹立たしく悲しく、私考が断片的になつてしまふのです。
             〈『追悼 義農松田甚次郎先生』(吉田六太郎編)26p〉
 この追悼からは、松田甚次郎は「何年か以前」に青森でも講演をしていたことが示唆されるし、この時、齊藤浩は何と「十里の山道を自轉車で青森」まで、片道約40㎞の山道を馳せ参じていたことが知れる。しかも齊藤が甚次郎と相見えたのはこの時の只一回だったというのに、「これらの稻田の中に立ちますと、ほんとに稻を愛でてゐる松田先生の幻影が去来します」と追想しているわけだから、齊藤が甚次郎にとても心酔していたであろうことが窺える。

 やはり甚次郎は、少なくとも人間的にとても魅力的な人物であったのであろう。例えば、偉ぶらないとか、人を立てるとか。

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