「ホタル帰る 特攻隊員と母トメと娘礼子」 赤羽礼子・石井宏、草思社文庫、2011年2月10日
p.45 あとで話を聞いたトメは、自分が神様の思し召しでこの世に残されたのだと思い、「残されたのは、おまえにはまだする仕事があるという神様の御心であろう」と思いこむ。そして、その信念は次第にトメの心のうちで強固なものになる。彼女の場合、「する仕事がある」という命題は、やがて自分には「人のためにやらなければなららない仕事がある。人のために尽くさなければならない」という方向に向かって強く収斂していく。
p.105 権力主義全体主義の国家ハ一時的に隆盛であるとも必ずや最後にハ破れる事は明白な事実です。我々ハその真理を今次世界大戦の枢軸国家に於て見る事ができると思ひます。
p.177 トメはこのようにせっせと遺族に手紙を書いた。それは戦後もずっと続いた。なにか自分が奥の特攻兵を送り出しながらなんの傷を負うこともなく生きながらえていることが罪であるかのように、あるいは、いくら慰めても、子を失った親を慰めるすべはないと知りつつ、なお書かざるを得ないかのように。
p.45 あとで話を聞いたトメは、自分が神様の思し召しでこの世に残されたのだと思い、「残されたのは、おまえにはまだする仕事があるという神様の御心であろう」と思いこむ。そして、その信念は次第にトメの心のうちで強固なものになる。彼女の場合、「する仕事がある」という命題は、やがて自分には「人のためにやらなければなららない仕事がある。人のために尽くさなければならない」という方向に向かって強く収斂していく。
p.105 権力主義全体主義の国家ハ一時的に隆盛であるとも必ずや最後にハ破れる事は明白な事実です。我々ハその真理を今次世界大戦の枢軸国家に於て見る事ができると思ひます。
p.177 トメはこのようにせっせと遺族に手紙を書いた。それは戦後もずっと続いた。なにか自分が奥の特攻兵を送り出しながらなんの傷を負うこともなく生きながらえていることが罪であるかのように、あるいは、いくら慰めても、子を失った親を慰めるすべはないと知りつつ、なお書かざるを得ないかのように。