新・むかごの日記

高槻市に在住の、人間と自然が大好きな昭和1桁生まれの爺さんです。
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イヌビワ:犬枇杷(愛憎ドラマの序章)2006.2.22

2006-02-22 07:03:44 | 植物観察1日1題
道端に葉をすっかり落としているのに、枝先になにやら緑色の小さいイチジクのような実をつけている木があります。イヌビワ:犬枇杷(クワ科イチジク属)です。このイチジク様のものはイヌビワの雄株の花嚢(イチジク類の花)といわれるもので、内部に、のちにイヌビワの受粉の手伝いをさせられるイヌビワコバチの卵が入っているはずです。イヌビワの受粉とイヌビワコバチの生殖成育をめぐる両者の相互依存関係はとても複雑でひとことではいいつくせませんが、要約すれば、イヌビワの雄株の花嚢は自己の生殖の役割を放棄してイヌビワコバチに生殖成長の場としてそれを提供し、引き換えに雌株の花嚢に入り込んだイヌビワコバチを閉じ込めて受粉の手伝いだけをさせるのです。イヌビワの雌木の花嚢に入ったイヌビワコバチは自分の生命を犠牲にしてイヌビワの受粉に協力することになります。
地球上に存在する約700種にのぼるイチジク属の植物のすべてが、それぞれ専属のコバチと1対1の関係を結んでいるとは驚きのほかありません。
枝の先端では、新芽が膨らみかけて、イヌビワとイヌビワコバチの宿命的な愛憎のドラマが今年も始まろうとしています。