久延寺を過ぎると日坂に下る道はなだらかで、通る車も少なく快適で、
人と出会うことも殆ど無く、ただひたすら先を目指し歩くのみだ。
広々とした台地は、相変わらず一面の茶畑で、時折肌をなぜる涼風がほ
てった身体に気持ち良い。
遠くに望む山並みの中に「茶」の字が描かれた、標高532mの粟が岳
の斜面の文字が見えている。茶処だから茶の木だと思っていたが、これ
では遠目では判別し辛いらしく、元々は松で描かれていたそうだ。
その松が松食い虫にやられ、変わって今では約1000本のヒノキが植えら
れているという。
日本一の茶処、静岡県の茶畑の面積は全国のおよそ31%(令和元年)、
生産量(生茶葉)は39%(平成30年)を占めている。(静岡県公式HP)
古くから茶の栽培が盛んな当地を、全国一に押し上げたのは明治維新に
なって職を失った武士たちが、未開の地の牧の原台地を開墾し、茶を植
えたことが大きく寄与しているという。
静岡の茶園は「茶草場農法」と言われる特徴を持ち、世界農業遺産に
認定されている。茶園に有機物として投入するササやススキなどを刈り
取る為の半自然農地を茶草場という。
そこは多様な生物の生息する特別な場となり、ここから刈り取った草
を茶園に敷く事で、茶園では、「土壌の保湿・保温を保ち」「微生物の
繁殖を助け」「草は分解され堆肥となり」「土壌の流出を防ぎ」「雑草
の繁茂を抑制する」、その結果美味しいお茶が出来るという。
広大で大規模な茶畑だけに 茶の木の作る畝の幅はほかの地域の茶畑
のそれに比べるとはるかに広いようで、これはほとんどが機械摘みされ
るかららしいく、今正に目の前では茶摘みの作業中で、静かな里山には、
茶芽を摘む乗用機のエンジン音だけが聞こえていた。(続)
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