
松並木の続く石畳道、国の史跡に指定されている錦田一里塚のある、公園の
遊歩道のようによく整備された道は、1988年に静岡県まちなみ50選に選ば
れている。

箱根の道は元々関東ローム層という赤土で、しかも急坂続きとあって、人も
馬も滑って難儀を強いられていたことから、当初は箱根に自生する「ハコネダ
ケ」を刈り取り束ねた物を敷き詰めていたらしい。
しかしその刈り取り作業も大変で、費用も掛かることから、箱根の坂には
1680年頃には順次石を敷き詰めた「石畳の道」への改修が進められてきたの
だそうだ。
道は凡そ二間幅(約3.6m)とし、西坂はローム層の上に直接石畳を敷いてい
るが、東坂は土層の上に小石を積み上げその上に石畳を組んでいるという。

箱根湯本の三枚橋で早川を渡り、箱根東坂に足を踏み入れると、観音坂、
葛原坂、女転ばし坂、割石坂・・・と続く道だ。近くの二子山から切り出
された石を敷き詰めた石畳道は、何れも名うての急坂であった。
猿滑坂、白水坂、天ケ石坂で辛い坂を上り終えると次の権現坂は下りに転じ、
目に芦ノ湖が飛び込めば箱根の関所で、その先で標高849mの箱根峠を越えて
きた。

「ハコネダケ」の自生する石畳の甲石坂は箱根西坂の始まりで、ここから続く
石原坂、大枯木坂、小枯木坂、こわめし坂、小時雨坂・・・これらはいずれも楽
な下り坂ではなかった。

そしてようやく住宅街を下る愛宕坂にやってきた。
馬や牛が転び、女が転び、猿さえ滑り、米さえ蒸し上がる箱根八里の難所が
ようやく終わろうとしている。(続)


