
伯備線は、倉敷駅を出ると山陽本線とは離れ、大きくカーブしながら進路
を北に変え、その先で山陽自動車道の高架を潜れば左に高梁川が近づき、
やがて井原鉄道線との接続駅である清音の駅に到着する。
倉敷駅からは7.5キロ離れ、ここはもう倉敷市から総社市に入っている。


昭和12年11月27日、もじゃもじゃ頭で、よれよれの着物、折れ目のない袴
に身を包んだ「金田一耕助」は、清一駅に降り立った。
その駅がここ清音駅とされている。
駅を出ると前には、金田一耕助の顔はめ撮影プレートが置かれている。
ここは横溝正史の長編推理小説「本陣殺人事件」の舞台、「金田一耕助シ
リーズ」の記念すべき第一作ゆかりの地なのだ。

清音の駅前を流れる高梁川を越えた西側一帯の川辺には、旧山陽道が
通り一里塚が残されている。宿場には本陣や脇本陣も有った。
横溝正史が戦時中3年間ほど疎開した真備町も、この地の近くにある。
そんな疎開の折見聞きした、田舎の悪しき因習や血縁関係、その因縁や
機微をベースに、その土地の風土を織り込みながらこの作品を描いたとさ
れている。


清音の駅前からは、これらの跡地、疎開先の住宅や、三本指の男が足を
止めた場所、金田一耕助が磯川警部と聞き込みをした場所、一柳家のモデ
ルとされる旧宅の跡など、小説ゆかりの場所などを巡り井原鉄道の川辺宿
駅に至る全長約7キロ(ゆっくり歩いて3時間ほど)の、「金田一耕助の小径
(ミステリー遊歩道)」が整備されている。(続)

