
15時41分、帯広に到着した。この地での観光の予定はない。
路線の乗り潰しが終われば、ただちに次の未乗車区間に向かわねばなら無いのが
切ない。こんなわけで、折り返しの次の特急までは僅かな時間しかない。

せかせかと、「豚丼」を求めて駅中を走る。
町中には数多くのお店が有り、その味を競っているようだが、食べ比べの余裕もな
いので、駅前のエスタ帯広西館にある「豚丼のぶたはげ」に行ってみる。

十勝地方の豚丼は、発祥が昭和8年と言われているので、その翌年が創業と言
うこの店は、この地では老舗の専門店、人気店でもあるようだ。
夕食時にはまだ少し早いようなのに、店内の席は大方埋まっている。
テイクアウトカウンターにも既に三人ほどの待ちがいる。

肉は4枚を「基本」に、6枚の「特盛」、3枚の「ハーフ」を、好みで選ぶことが出来る。
乗車する特急の時間を告げ、「大丈夫だ」と言うので、「特盛」を注文する。
値段が少し高いのでは、と思えなくもないが、駅売りならこんなところかも知れない。
出来立てのアツアツを抱え、16時05分発の特急「とかち8号」に駆け込んだ。
これを南千歳で乗り換えて、東室蘭まで行き、そこから室蘭までの盲腸線を乗り潰
すのがこれからの予定である。

発車も待ちきれず蓋を開けると、網焼きの香ばしい匂いが食欲をそそる。
帯広の肉は、網焼きとフライパン焼きが有るようで、この店は網焼きに甘辛いたれ
をたっぷりと潜らせている。新得のそれと比べると幾らか薄味のようだ。
分厚い肉は柔らかくて味わいが有り、何枚でも食べられそうだ。
缶ビールを買ってこなかったことが悔やまれる。
こんな「豚丼」は、十勝地方の郷土料理である。(続)



