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found a sensational old issue 2

2014-12-11 | bookshelf
『平成うろ覚え草紙』の断片
左に「吊上駕籠」、右に「回り階段」と書いてある

 Doctorにお礼の言葉とさよならを言って、早々にパソコンで『平成うろ覚え草紙』なる本を調べてみました。結果は・・・
「著者は歌川芳細(うたがわよしこま)という江戸時代の浮世絵師。出版されたのは安政七年二月、西暦になおすと1860年になります。(略)
不穏な情勢が災いしたためか、この本は、すぐに幕府から発行禁止の命令を受けました。発行数が極端に少なく、今まで現物が発見されずに、題名と出版にまつわる不思議な逸話だけが伝わっていました。その逸話というのは、このようなものです。
 ある絵師が、誰も見たことがないものを描きたいと神仏に願っていた。すると、あまりの情念のためか、本当にはるか未来の世に迷い込んでしまった。しばらくして戻ってきたはよいが、ショックのためか、どうにも記憶があやふやである。しかし、取るものも取りあえず筆をとってあらわした。それが、『うろ覚え草紙』である。
(略)さて、それから百年以上も経った昭和四十六年のこと。群馬県前橋市の旧家で、蔵の解体作業中にその幻の『うろ覚え草紙』全五編が発見されたのです。当初は、意味不明な絵も多く、荒唐無稽なものとして学者たちの研究対象から外されていたのですが、ここ数年の再調査で、平成以降の社会と符合する点が新たに数多く見つかり、歴史、いや科学の根幹を揺るがす一大発見なのではないかということで、一躍、あらゆる学界を巻き込んでの大論争が起きているところなのです。
 本書は、その時発見された『うろ覚え草紙』を、翻訳し紹介するものです。(以下省略)」
という前書きを、館林大学文学研究センターの洞田創(とだはじめ)なる人物が書き、文化・文明・流行・子供など幾つかのカテゴリーに分類し、編集された『うろ覚え草紙』が現代語訳・注釈とともに掲載されていました。
 この本がパロディであることは、一目見てわかりましたが、著者には騙されました。本当にそういうセンターに属する研究者か大学の先生が、お遊びで作ったのだと思ったのです。それほど、この本はよくできています。改めて紹介します
 『平成うろ覺え草紙』洞田創 著 2014年飛鳥新社刊 1389円+税
 特に、途中に挟まれた、草紙が発見された経緯や、学界や研究者からの扱われ方、時代の流れに伴う草紙への見解の変化など、著者(ここでの監修者)による解説は、もちろん創作文ですが、この分野の専門書を読んだことがない人なら、「なるほど」と納得させられ、読み慣れている人は苦笑感心することでしょう。洞田研究室では「赤外線吸収インキを用いた文献鑑定」で年代を測定していましたが、できれば、放射性炭素C14年代測定法を採用してほしかったですが(笑)。
 本文(うろ覚え草紙)中にも突っ込み処はありますが、そこはご愛嬌でしょう。例えば、「男の妓楼はやること」では婦人が吉原で遊ぶ様を取り上げていましたが、幕末では地方の豪商婦人たちが吉原のお座敷で一席設けて遊んでいましたし、男芸者(男の格好をしたままの)もいたので、芳細にはさほど驚くことでもなかったのでは、と感じました。
 しかし、これだけネタを集めるのも一苦労だったと思います。本文は、一種の「絵解き」で平成の世の風刺とも捉えられます。『ガリバー旅行記』と比較するのは大袈裟でしょうが、そんな意味も含まれているのかなぁと感じました。
 著者のプロフィールによれば、イラストレーターさんだそうです。本文の浮世絵調挿絵は全て著者の作なので、よほど江戸の絵草紙などがお好きなようです。芳細のように文才もあるので、このような面白い本を作れたのだと思いました。医学書編、本草学編など作ってもらえたら、面白いなと思いました。
 

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