いろはに踊る

 シルバー社交ダンス風景・娘のエッセイ・心に留めた言葉を中心にキーボード上で気の向くままに踊ってみたい。

姉の日記 2

2005年10月07日 18時26分00秒 | 十八歳の思い出日記
 一月三十一日(土)晴
 ○○銀行へ二百十円の××費を下ろしにいった。銀行内はどこも黒山。銀行
なんていった事のない私は、場所や数字がわからなくて転手古舞した。常識は
養わねば社会へでればいろいろ難問にぶつかることをしみじみ思った。
 かえりに長沢さん片倉さんに会った。マスクをしているのに「真蒼な顔をし
てるわよ・お元気でね」なんていわれてしまった。ほんとに今日のお天気で、
みんな汗をかいているのに青顔をしているのは私位。厳寒休暇も明日でおしま
いなのでみんな……。偶然筒井さんとお母さんにお会いした。私が歩いている
のをみてもう治ったのと筒井さんは嬉しそうだった。でも私は ”この時”程
孤独感を思ひさびしさにひたって侘しい思ひを感じた事はない。
 私の性質……それにつけても町田先生へ唯一の純情を捧げる事のでき得な
かった私は不孝者であったかもしれない。”両親”を得るよろこび否、さびし
さがさせた父母への懐郷心をしみじみ静かに味わった私の実感である。
 小筆十一円求める。病院へよって用紙を出してきた十二時頃病院もしんとし
て何かわびしい。乙女のやるせない思いとはこれをいふのか。
なにしろ○○銀行まで往復徒歩でとてもくたびれてお昼の食事もまずくて、
おかゆを一膳やっとの事でのどへとほした。八百健さんでリンゴを二個買った。
今年になってからでもリンゴは二百位食べたろう。
 せっかく姉が縫ってくれたモンペは股下が長くて切り下してやりなほした。
母とおそろいに妹のを縫ってる。母もモウロクしてきて、もんぺの股上を縫ふ
のを裾まで縫ってしまって、フフ・ハハ「おおやだ・あっしは」母はがっかり!
 電気が正確に配置されお勝手が非常に明るく便利になった。今度は雨がふ
っても風が吹いてもびくともしない。ずいぶん広くなった。お勝手は四畳半の
外に押入れ分の戸棚はあるし、土間は広く大島台の家よりは少し小さい位にな
った。しかし毎日の「インフレ台帳」、建築費、ヤミ買を全部ぬいてほんとの
配給で細々としたもの買って、今の家の経費は一月二万~三万!父の重い足
どりをきくのにその思う心。今日の電気屋の代だって千五百円とか…夜大工さ
ん千何百円…
 ほんとに父親の力の偉大さ、又責任感、泣きごとは子供にきかすまいと思っ
ていられる。私の父母、このような有難味は他にはあるまい。
 「二十の扉」柳や権太郎さんがいて非常に面白かった。「ジュゲム」「カミ
フウセン」「イロガミ・チヨがミ」


 
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今年の冬も土鍋は売れる?83編

2005年10月07日 08時39分45秒 | 娘のエッセイ
 暖冬である。けれど今の日本人にとって、今年の冬は別の意味で、寒いので
はないか?去年の冬、残業が減って家で食事をする男性が増えた為、味噌、
正油、そして土鍋がとても良く売れた。

安くて美味しいモツ鍋の異常人気も、記憶に新しい。そのような社会現象から考
えてみると、一家揃っての食事、家族団欒が思い浮かべられるが、どうも内情
はそれほどホノボノとした温かなものばかりではないらしい。なぜなら、日本の
離婚率は上昇しているという事実があるからだ。

 休日の増加、勤務時間の短縮によって、夫が家にいる時間が増えた為に、
主婦の間に「主人在宅ストレス症候群」なる症状が生じているという。

そう言えば、消防士の男性と結婚した友人Yは、何日かに一度、夫が夜勤で家
にいないから、息抜きができていいよ、と言っていたっけ。もしかしたら日本
の家庭は、バブルの間に夫がいなくて初めて円滑に作動するようになってしま
っていたのかもしれない。

 また、一時期騒がれた「成田離婚」の影に、現在もうひとつの「成田離婚」が
存在するという話もある。

それは末の子が成田からハネムーンに発ったのを見届けた後、両親が離婚を
するケースのことだそうだ。それも言い出しするのは、ほとんど妻側である
らしい。

 ところで、鍋が売れても会社の忘年会などで、鍋料理の登場回数が少ないの
は、友人K子の説明によれば「嫌いなおじさん達と、ひとつの鍋をつっくのな
んて、ヤじゃん」というのが理由らしい。

 それならば、デパートで家庭用の土鍋が売れているうちは、まだまだ家庭安
泰ということか。もし、鍋料理がひと冬中食卓に登場しなかったり、キッチン
から土鍋が消えていたりしたら、それは赤信号だ。

 さて、ことしの冬も、土鍋は大きな顔をしてデパートのカウンターに山積みさ
れるのだろうか? もし、売れなかったとしたら……たぶん、日本の今年の離婚
率は、去年よりまた上昇するに違いない?

『講評』
 例によって貴女の「文明評論」まことにエスプリとユーモアがあって結構でし
た。小道具として土鍋が出てくるこれがいい。なんともいえぬおかしさのある品
物です。
 中心テーマは夫と妻のこと、男と女のこと、このテーマも一貫して貴女が取り
組んでいること。この路線は、この世の中のいちばん基本的なテーマ。ですか
ら、トコトン書き続けて下さい。
 会社の会合ではナベは出ない。嫌いな人間と囲むのはイヤ、だかららしい。
してみると、家庭用の「ナベが売れる」ということは、夫と妻が依然として好き
同士である。ということの証明。これはまことにうまい。

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