邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

新藤兼人の「どぶ」

2006年04月13日 | ★人生色々な映画
京浜地帯の河童沼に掘っ立て小屋が並んでいる。

徳さん(殿山泰司)、ピンちゃん(宇野重吉)、
やくざあがりの安さん(藤原釜足・爆笑)、
元役者の忠さん(信欣三 )たみ(飯田蝶子)、
松枝(中北千枝子)などがひしめきあって暮らしていた。

そこへつる(乙羽信子)という知恵遅れの女が迷い込んでくる。

乙羽信子の体当たり演技にまたぶっとぶ
開いた口がつるのようにふさがらなくなってしまう。

人の良いつるを騙して娼婦に仕立て、
稼ぎをピンはねしようというのが
徳さんとピンちゃんと忠さんのアイディアだった。

まんまとひっかかったつるは真っ白けに顔を塗りたくり
ボロ着物をまとい、夜な夜な駅前で客引きを始める。

この白塗りの顔といいますのが・・・

「志村けんのバカ殿様」そっくりなのである。
バカ殿はこの映画にインスパイアされて生まれたとしか、
私には思えない。

コミカルな展開から一変して
終盤に大きな悲劇が起きる。
画面は一気に緊張感をともない、
劇的なクライマックスを迎える。

音楽は伊福部昭。盛り上げます。

ピンちゃんの慟哭はフェリーニの「道」、
ジェルソミーナを失ったザンパノを思わせる。

河童沼の人たちが悪人ではないだけにやりきれなくなる。
悲惨すぎる結末にまた口があんぐり開いてしまった。

芸達者が揃っている。
山村聡、左卜全、チンピラ姐さん・・みなイイ味ですが、
乙羽信子はすごい。
この人には何度ぶっ飛ばされたことだろうか!

「フォレスト・ガンプ」のトム・ハンクスや
「レイン・マン」のダスティ・ホフマンがアカデミー賞主演男優賞なら
乙羽も同等の賞はもらえただろうに。

1954年 監督:新藤兼人
製作:吉村公三郎 脚本:新藤兼人 / 棚田吾郎 撮影:伊藤武夫
音楽:伊福部昭 美術:丸茂孝

ブログランキングへ応援よろしくおねがいいたします