邦画ブラボー

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成瀬巳喜男の「驟雨」

2006年04月24日 | ★人生色々な映画
週末、成瀬巳喜男作品を見る。

化粧品会社に勤める並木亮太郎(佐野周二)
と文子(原節子)夫婦は結婚4年目。子供無し。

早くも倦怠の風が吹き抜けている。
にもかかわらず、原節子がとってもいきいきと輝いて見える。
「山の音」よりも「めし」よりも。
すべてが実に自然なのだ。

ぽんぽんと丁々発止でやりとりされる会話は、
当世のご夫婦にも十分通じるのではないかしらね。
出かけたいくせにいざとなったらなんだか気がすすまない・・
「あるある、そんなこと。」とうなずく女性も多いと思う。

隣に越してきたのは
今里念吉(小林桂樹)夫婦。グラマーで
超わがままな妻(根岸明美)に振り回される小林桂樹。
ギャグも実にはまります。

ざあますイヤミ眼鏡婦人に中北千枝子、
長岡輝子は男言葉の幼稚園園長だし。これがまた上手くて可笑しいのだ~

口うるさい近所とのつきあいや、
自治会の会合での様子などが
面白可笑しく描かれる。

で、そうこうしてるうちに並木さんはリストラされそうになったりして。
ビルの屋上でつぶやく厭世的な台詞は、並木さんの本音らしい。
そのように、風刺やびりっとした毒も効いてます。

テクノロジーは進化して生活は豊かになったけど、
庶民の日常や夫婦間のいざこざなど、
驚くほど変わらないものもあるのだなあ。
水木洋子の脚本が、俳優たちの演技が、人々の心の襞まで見せてくれる。

「驟雨」は夏の季語だと思っていたけど
これは冬の物語。
ざあっと降ってすぐにやむ雨の意で、
一年を通して使える言葉であるらしい。

二人の間にも雨は降ったけど・・・

成瀬組が結集した、気持ちがほっこりする、大人の映画です。

成瀬巳喜男監督作品 
脚本   水木洋子
原作   岸田国士
撮影 玉井正夫
音楽   斎藤一郎
美術 中古智

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