邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「好人物の夫婦」

2005年05月12日 | ★人生色々な映画
昨日に引き続き千葉泰樹監督の「好人物の夫婦」を見る。

可愛らしいタイトル・・と思ったら志賀直哉原作だった。

海の近くに住む画家の池部良と津島恵子の夫婦。

「鬼火」を見たすぐ後だったので
津島恵子が裕福な家の奥さんを演じていてほっとする。
最新のモードを着こなしたり
上等の着物を着て町を歩いていたり、先の映画とは大違い。

池部良は独特のムードを持った俳優さんで
シャツとズボン姿でもお洒落。まるで白州次郎のようだと思った。

タキという若い女中が住み込みで働いている。
隣の家には恐妻家の有島一郎が住んでいて、とぼけた演技で笑わせる。

夫婦の日常を描いた淡々とした物語なのだが、
登場人物たちのやりとりを聞いていると
ぽかぽかと暖まってくるようだ。

古い日本家屋での丁寧な暮らしぶりや
女中さんの控えめな態度、奥さん方の言葉遣いなど
ちょっと前までの日本では普通であっただろうことが
平成人の心に新鮮に映る。

このような家や人々の振る舞い、言葉、所作などはもう
映画の中にしか見ることが出来ないのかと思うとすこし寂しい。

古い日本映画を見ていると日本人が得たもの、
失った(捨てた)ものが見えてくるようだ。

池部良はこうしてみると何の苦労も無いような二枚目だけど、
戦時中は壮絶な経験をされたようだ。

食料が底尽きた時
一発の弾しか残っていない銃でトカゲを撃って食用にすべきか
戦闘用に弾を残すべきか迷った経験をTVで話されていたが、
今もなおダンディでお元気そうだった。

短いけど、見た後気持ちが優しくなれるような作品。

ネットに●志賀直哉『好人物の夫婦』テキスト(PDF版)がありました。

1956年 千葉泰樹監督 脚本 八住利雄 東宝

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「鬼火」

2005年05月11日 | ★人生色々な映画
加東大介はガス会社の集金人。
いい年だが独身で、毎日汗まみれで集金に回っている。
部屋代も満足に払っていない貧乏人だ。

だがもっとひどい生活をしている人間もいた。

町のはずれの廃屋のような家に入っていくと、
そこには粗末な着物をまとった女(津島恵子)がいた。
部屋の奥にはせんべい布団に寝たきりの夫が横たわっていた。
女は「どうかガスを止めないで下さい。
夫の薬を煎じるのに必要なのです。」と懇願する。
その様子を見ているうちに加東大介は・・・

46分の短編なのだけど、強烈な印象。
哀れな女の姿が心に焼きつく。
「出かける際に締める帯すらも無い・・」と嘆く妻に、
病床の夫は自分の兵児帯を解いて渡す。
「夜ならこれでごまかせるだろう・・」

ふと現れた加東によってえぐりだされる不幸。
彼の目に映った鬼火とは・・

伊福部昭の音楽がやけに耳に響き、異様な効果をあげている。
昔から個性的な音楽を作っていたのがわかる。

加東大介の達者な演技、中村伸郎らの
味のある脇の芝居が見られる。

凝縮された旨みがある秀作。

原作は吉屋信子です。
監督の千葉泰樹は森繁久弥の「へそくり社長」などの喜劇、
華やかな女性映画など数々のヒット作を飛ばした。
文芸作品の映画化も数多い。
加東とのコンビでは「大番」という傑作がある。

出演:津島恵子 加東大介 中田康子 宮口精二 中村伸郎
1956年  監督:千葉泰樹  脚本. 菊島隆三

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「人形佐七捕物帖・腰元刺青死美人」

2005年05月10日 | ★妖しい映画
なんだろう、このワクワク感は。

刺青が彫られた背中をむき出しにしたお女中が、ずらりと並ぶ幕開け。

まだるっこしい前置きはすっぱり抜き
最初から観客の目を釘付けにする。

サービス満点。
飛ばしてくれます。

観客が見たいものを見せる。
これが新東宝。
面白くてなんぼ・・
これも新東宝。
「死美人・・」というタイトルが多い・・・
それも新東宝。

原作は横溝正史。サスペンスタッチの謎解きもの。
横溝の推理作品の中で
金田一耕助シリーズと並んだ傑作が『人形佐七捕物帖』シリーズだ。

人形のように綺麗な顔の親分に若山富三郎。
ちょっと無理がある?
それが、白塗りで五月人形のように見えないこともない。
難事件を解決するシリーズが好評で、13本も作られた。(うち新東宝作品は8本)
この作品は5本目。脂が乗ってます。

江戸っ子弁が冴えわたる大活躍の親分。
まるっきり役にたたない子分が2人。

「するってえとなにかい?」

ヒロインの日比野恵子さんは他作品にも出ているが、
艶っぽく品がある。

天知茂が妖気あふれ、ただならぬ雰囲気漂う侍を演じている。
色悪の役どころは「東海道四谷怪談」の伊右衛門を彷彿とさせる。

このいかがわしい雰囲気は・・見世物小屋の猥雑な賑わいに似ている。

1958年 山田達雄監督作品  新東宝   モノクロ


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「憲兵と幽霊」

2005年05月07日 | ★恐怖!な映画
新東宝の真骨頂、まがまがしさいっぱい。

無実の罪をきせられた男の処刑、
拷問、突然半裸で登場する美女、骸骨、亡霊。

期待を裏切らぬ盛りだくさんの内容。

だがこの映画は天知茂抜きでは成り立たなかった映画だ。

零下40度のまなざしで誰もが凍りつく!

「憲兵とバラバラ死美人」(何回書いてもすごいタイトル)では
ほんのチョイ役だったが、この映画では堂々の主役。
あっけにとられるほどに極悪非道。冷酷非情な波島憲兵中尉。

「陸軍中野学校」での「軍服を着た待田京介」にもぞっとしたけど、
この天知はずば抜けて鬼畜。
(だがなぜか半裸美人の三原葉子にだけは優しい。)

また新東宝の看板役者、中山昭二も二役でがんばっている。
この人はこの後「ウルトラセブン」のキリヤマ隊長役で人気を博す。
久保菜穂子が凛とした人妻役でやはり美しい。

中川信夫による斬新な亡霊の見せ方や、たたみかけるような恐怖シーンは
のちの最高傑作「東海道四谷怪談」で見事に結実するのだ。

1958年 監督 : 中川信夫製作 : 大蔵貢  脚本 : 石川義寛

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「拳銃無頼帖 抜き射ちの竜」

2005年05月06日 | ★イカス!映画たち
赤木圭一郎が銃を構える姿は天下一品だ!

撮影所の中でゴーカートを乗り回し、
21歳でこの世を去ったトニーこと赤木圭一郎。
白いヘルメット、赤いジャンパーにジーンズをはいていたという・・

やんちゃな裕次郎、豪放磊落な小林旭、
に比べ・・・この人は・・・

憂いを秘めた瞳、ナィーブな横顔、
長身でスレンダー、美しい身のこなし・・・甘い声・・
彼こそ非の打ち所の無い大スターだった!(大ひいき)

名前は知っていても彼の映画をきちんとみたことはなかった。
今回あらためてその強烈な魅力にしびれました。

これだけ素敵でもまったくイヤミが無いのも特筆に価すると思う。

ヒロインは最新モードを着こなしたオードリーヘプバーン・・
じゃなかった、浅丘ルリ子。可憐です。

パステルカラーのカーテン、
洋風の部屋のセット・・大きなアメ車、
そこには憧れのアメリカが見え隠れする。

だが日活映画は国籍不明。アメリカ、はるか超えてます。

ライバルのコルトの銀(宍戸錠)と共に
いきなり民家で銃をぶっ放す主人公、抜き打ちの竜。


麻薬と縁を切った竜は持ち前の銃の腕で恐れられていた・・暗黒街のガンアクション。
西村晃の思いっきり胡散臭い中国人も登場して国際色も満点だ。

宍戸錠は今なお大スターの香りがぷんぷんする数少ない役者である。
人差し指を立てた「チチチ!」ポーズ、
この映画を見て真似してみてください。

小林旭と宍戸錠にはうんと長生きして、
日活映画の魅力を後世に伝えてもらいたいものだ。

そして赤木圭一郎ブームよ、再び来たれ!

1960年 野口博志 監督作品 脚本 山崎巌


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