邦画ブラボー

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「雪之丞変化」

2007年02月13日 | ★ぐっとくる時代劇

衣笠貞之助監督が35年に大ヒットさせた作品を
市川崑監督が腕によりをかけてリメイクしたもの。

耽美派、もしくは自称耽美派、必見プログラム!
薄いベールの上にはらはらと金粉を散らしたような画面の中で
雪之丞の妖しい魅力が炸裂している。

長谷川一夫は50代。
ちょい年を取りすぎてるんじゃない?

NO NO NO・・・!

かえって
熟成された極上のワイン、青かびチーズのような
濃厚な味わいになっております。
大スターの芸に圧倒される。

全編、得もいわれぬ妖気と不気味さ(!)が漂う、
異色の作品と言えるでしょう。

物語は役者に身をやつし、親の仇をとる
雪之丞の一人称語りで進んでいきますが
その声を聞いてふと私の脳裏をかすめたのは
「二銭銅貨」やら「人間椅子」などの
かの、江戸川乱歩の小説だったのでございます。

心の中では恐ろしいことを考えながらも
虫も殺さぬ顔で相手を口説く雪之丞は・・

・・かなり病んでます

恐ろしい復讐計画をひそやかに語るねっとりとした声
女形の作り声のギャップもまた「変化」(へんげ)の妙といえるでしょう。
「亡霊」姿にもなりますが
これが楳図かずおの漫画実写版のような気色悪さであります。

雪之丞を恋い慕う娘、波路の若尾文子は
美しすぎてまぶしい。
そもそも女優になったきっかけは長谷川一夫に気に入られて・・
だったそうだから、
大先生と共演で、息も合っている。
二人の逢瀬は
パッと見て「女と女」に見えるけど
長谷川が「おばさん」なので、一層妙な味わい。

だが全体のトーンの中では違和感は無い
これも芸の深みのなせる業か。

雪之丞の取り巻きとして
山本富士子がべらんめえ口調の姉御、
長谷川一夫は「闇太郎」という遊び人の二役、昼太郎という若者に市川雷蔵。
他に市川中車、柳永二郎、中村鴈治郎 、勝新太郎などで
申し分の無い華やかさである。

長谷川一夫の袂の扱い、
扇子の持ち方、歩き方、型がきっちり決まっていて完璧だ。


松竹版も見たくなったが
光と影、シャープな構図の中で
煌びやかな衣装を身につけた長谷川一夫が躍る市川版も凄い。
(注:このほか東映の大川橋蔵版、美空ひばり版、東千代之介版も
あるそうだ)

江戸時代の、
陰惨な話なのに音楽が軽やかなモダンジャズを使うってところも
市川監督のセンスはハンパでは無い

1963年 監督 市川崑
原作 三上於菟吉
脚色
伊藤大輔 衣笠貞之助
撮影 小林節雄  音楽 芥川也寸志  美術 西岡善信

*映画の中のイイおんな*
若尾文子:この時、おん年30歳!
水もしたたるイイおんなっぷりを堪能出来ます。
唇の形がすごくイイということを
このたび確認いたしました。思いつめた表情が美しい!!

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