老いの途中で・・・

人生という“旅”は自分でゴールを設定できない旅。
“老い”を身近に感じつつ、近況や色々な思いを記します。

ややこしい日本語 その(57)「危機一髪」と「危機一発」

2024年03月28日 19時31分48秒 | 面白い言葉や語源など

 “髪の毛一本ほどのわずかな違いで、危険や困難に陥るかどうかの、きわめて危ない状態”を言うのに「危機一髪」という言葉があります。

 多くの場合「危機一髪で助かった」というような使われ方をし、「危機一髪で大怪我をした」とは言わないようですから、メデタシメデタシの気持ちが含まれています。

 また、この言葉は、韓愈(かんゆ)の「孟尚書に与ふるの書」にある、「其の危なきこと、一髪の千鈞を引くが如し」に由来するとの説もありますが、一本の髪の毛で重い物を吊り上げるような、非常に危険なことのたとえとする説もあります。(※ 鈞は中国の古い度量衡の単位ですが、千鈞が何キロになるかは色々な説があるようで確定できませんでした)

 所が、最近は同じ発音ですが「危機一発」という言葉の使われる頻度が増えているようです。

 その大きな原因は、映画の題名で「危機一発」という使われ方をしたり、おもちゃにモ「危機一発」という名のモノが現れて、「一発」がすっかりポピュラーになったということのようです。

 映画の「危機一発」は、1963年のアクション/スパイ映画にショーン・コネリー主演の『007/危機一発』(原題: From Russia with Love)で、私も社会人になった年に先輩に連れられて見に行きましたが、それ以外にもブルース・リー主演の『ドラゴン危機一発』というのもあったようです。

 また、おもちゃの方はタカラトミーの「黒ひげ危機一発」です。
名前だけでは判りにくい方もあるでしょうが、樽のようなものにナイフを差し込み、人形が飛び出せばアウトというものです。   


 尚、調べている間に面白いことが判りました。
『007/危機一発』は、髪の毛一本の僅差で生じる危機的状況を意味する「危機一髪」と銃弾「一発」をかけた一種の洒落で、ユナイト映画の宣伝部にいた後の映画評論家の水野晴郎が考案したようですが、本作により「危機一発」との表記が浸透して新聞社から苦情が来たようで、1972年の再上映時には『007/ロシアより愛をこめて』に変更されたということです。

 因みに、映画の主題歌の邦題は最初から「ロシアより愛をこめて」だったようです。(まさ)

※ この項は、<コトバンク><福島みんなのNEWS>などを参考にさせて頂きました。


映画「007危機一発」のポスター

おもちゃの「黒ひげ危機一発」