老いの途中で・・・

人生という“旅”は自分でゴールを設定できない旅。
“老い”を身近に感じつつ、近況や色々な思いを記します。

植物とのふれあいの中で ⑪   ~クスノキと樟脳  その2~

2016年07月13日 20時19分48秒 | 園芸福祉・植物とのつながり
 先日の⑩で、クスノキを原料とする樟脳の用途として、防虫剤/宗教儀式/医薬品を挙げましたが、案外知られていない用途が④セルロイドでしょう。

セルロイドはニトロセルロースと樟脳などから合成される合成樹脂の名称で、最初の人工の熱可塑性樹脂です。石油化学製品のプラスチックが出てくるまでは、象牙の代替品として万年筆の筒眼鏡のフレームなどに、更に文房具(下敷き、筆箱)や洋服の襟(カラー)、おもちゃ、ピンポン玉、フィルムなどに広く利用されましたが、発火性が強いため、徐々により安全な他の合成樹脂に取って代わられました。

 セルロイドのおもちゃといえば、思い浮かぶのが「青い目の人形」ですが、Wikipediaによれば、日露戦争後、日本の勢力が拡大し、米国との摩擦が増加しつつあったのを懸念したアメリカの宣教師が、1927年3月3日に間に合う様に、日本郵船の天洋丸で日本の子供に12,739体もの「青い目の人形」が、遅れて鳥羽丸で各州代表の人形48体とミス・アメリカが贈られました。返礼として、渋沢栄一を中心に「答礼人形」と呼ばれる市松人形58体が同年11月に日本からアメリカ合衆国に贈られたという出来事があったようです。因みに第2次大戦中に敵性人形としてこの多くが処分され、2010年時点で確認された残存人形は323体とのことです。
尚、“アメリカ生まれのセルロイド…”で有名な野口雨情作詞、本居長世作曲の童謡『青い目の人形』の童謡は1921年に作られていますので、これらの人形が贈られる前ということになりますね。
また、一世を風靡したキューピーちゃんも、元々はセルロイド製でした。


<樟脳・セルロイド 余談>
①天然樟脳は、クスノキの葉や枝などのチップを水蒸気蒸留し、それを冷却して結晶化し、冷却器の中の水の表面に浮いた白い結晶を網ですくい集め、乾燥後袋詰めなどして商品とします。一方、合成樟脳は松脂等に由来するテレピン油を原料としています。

②樟脳といえば思い出すのは、子供のころにお祭りなどの露店でよく売られていた樟脳舟で、樟脳を小さく切って船尾に付けた木製またはセルロイド製の小船を洗面器などの水面に浮かべると、のろのろと前に進むのですが、これが不思議で自分でも作ってみた記憶があります。

③大阪市東成区役所の近くにセルロイド会館という洒落た建物があります。
かっては、この地域にセルロイド加工業者が集中していたようですが、今やごくわずかな用途しか残っていないセルロイドのかっての繁栄ぶりがうかがわれます。

④少し前まで、国道26号線で大阪から大和川を越えた所に、ダイセル㈱の工場がありました。
前身を大日本セルロイド㈱といいセルロイド生産の大手会社でしたが、セルロイドの需要が少なくなり、今や工場はなくなり跡地はイオンモールとなっています。
(まさ)