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ダメな小説の典型『虹の岬の喫茶店』by森沢 明夫

2021年02月20日 | 小説レビュー

『虹の岬の喫茶店』by森沢 明夫


小さな岬の先端にある喫茶店。そこでは美味しいコーヒーとともに、お客さんの人生に寄り添う音楽を選曲してくれる。その店に引き寄せられるように集まる、心に傷を抱えた人人―彼らの人生は、その店との出逢いと女主人の言葉で、大きく変化し始める。疲れた心にやさしさが染み入り、温かな感動で満たされる。癒しの傑作感涙小説。「BOOK」データベースより

 

面白くない小説とは、こういう小説のことを言うのだと思います。

セリフも描写もキャラクター設定も何もかも…。そして冒頭から読者の興味を引き付ける「虹の謎」についても、「それだけ?」と全くの拍子抜け。

もう、ため息しか出ません

「こういう比喩を使えば物語に深みが出る」、「こういうセリフのやりとりなら感動する」と、作者が思ったかどうかわかりませんが、全く使う必要のない比喩や擬音、しょうもないセリフ、ステレオタイプのキャラクター設定などなど、ダメな小説の典型を読まされました。

例えば、

~古いノートの切れ端に、さらさらと走り書きされた五線譜だ。《中略》オタマジャクシのサイズも不揃いで、太いのもいれば、細いのもいた。《中略》俺は人差し指の爪でカウンターをコツコツと叩きながら、スローな四拍子のリズムをとった。そのリズムに合わせて、頭の中のオタマジャクシが泳ぎ出す。つまり、五線譜のメロディが流れ出す。

この文章を読んで「なんじゃそりゃ?」と僕は思う訳ですよ。音符をオタマジャクシに見立てる例えは良く使われます。それもわざわざ例える必要があるとも思いますが… 「オタマジャクシのサイズも不揃いで」と書いた時点で、「音符=オタマジャクシ」だとわかりますね。 よって、「オタマジャクシが泳ぎ出す」で、頭の中でメロディが流れ出したという比喩が成立している訳ですが、その後に「つまり、五線譜のメロディが流れ出す。」って説明文を書く必要あります?編集者も指摘するべきだったと思いますよ。

その他にも、変な比喩が無理やりに詰め込まれていたり、「誰が言うのよ?」と思うような現実感のないセリフが散りばめられていたり、どこかの小説や映画で見たようなキャラクターが出てきて、ありきたりな行動を取ったりと、まぁ「お涙頂戴の三文小説」ですよ。

だいたいアマゾンの評価は間違いないのですが、この作品に至っては、僕の評価とは一致しませんでした。こういうことは時々あるんですけどね。

途中で読むのがイヤになったんですが、やはり小説は最後まで読み切ってこそ評価が出来ると思うので読み切りました。

最終章の台風のくだりがクラマックスだと思うんですが、結局、何にも起こりません最後の一文に至るまで、私の評価は覆ることなく、どんどん沈んでいきました。

いっそのこと、しょうもない比喩やセリフを省き、必要最低限のやりとり、悦子と周りの人々との温かい交流だけを「亡くなった旦那さんの天上から目線」なんかでストーリーに落とし込めば、250頁ほどに収まって、もっとシンプルでハートウォーミングな作品に仕上がったかもしれません。

★☆1.5ですね。(★★2つは時々あったんですが、2つ未満って、「『もう二度と食べたくないあまいもの』by井上荒野★1つ」以来ですね

コメント
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