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史実に忠実な歴史小説『蒼き狼』by井上靖

2020年04月14日 | 小説レビュー

『蒼き狼』by井上 靖

遊牧民の一部族の首長の子として生れた鉄木真(テムジン)=成吉思汗(チンギスカン)は、他民族と激しい闘争をくり返しながら、やがて全蒙古を統一し、ヨーロッパにまで及ぶ遠征を企てる。
六十五歳で没するまで、ひたすら敵を求め、侵略と掠奪を続けた彼のあくなき征服欲はどこから来るのか?―アジアの生んだ一代の英雄が史上空前の大帝国を築き上げるまでの波瀾に満ちた生涯を描く雄編。「BOOK」データベースより)


井上靖氏の作品は、「敦煌」、「猟銃・闘牛」に続く三作目ですが、はっきり言って面白みのある文体ではありません。

この『蒼き狼』は、チンギス・カン(ジンギスカン)の波乱万丈の人生を描いた、歴史教科書のような小説です。



筆者あとがきにも書いてある通り、「元朝秘史(チンギスハンの幼少期から壮年時代を詳しく記した書物)」や、「蒙古源流(蒙古の古代説話)」、そして「アルタン・トプチ(モンゴル年代記)」を元に、史実を忠実に再現した小説であることがうかがえます。

チンギス・カンという名前を知らない人はいないと思いますが、その生涯については、あまり良く知られていないと思います。僕自身はほとんど知りませんでした

日本との関係でいえば、「元寇」が有名ですが、その元寇を引き起こした皇帝が「クビライ(フビライ)」で、チンギス・カンの孫なんですね。ほんとにそれぐらいですわ

そのチンギス・カンの生い立ちは、とても数奇な運命に翻弄されているといえますし、青年期から死の直前に至るまで、戦いに次ぐ戦いの生涯で、小さな集落の族長から、一気に大モンゴル帝国を築き上げ、西はロシアやブルガリア、南はインド国境、東は中国の前身である金国まで侵略し、大版図を広げます。

モンゴル民族が勇壮であることはもちろんですが、チンギス・カンのカリスマ性が本当に凄かったのでしょうね。

しかしながら、井上靖の描写に派手さや演出が物足りないため、どうしてもそこまで感情移入することが出来ません。

「モンゴルって凄い勢いで繁栄した一時代があったんやなぁ~」と、頭の中に残るぐらいですが、東アジアの歴史を知る上で、貴重な小説であることは間違いありません。

★★★3つです。

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