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物語に共感できず『望みは何かと訊かれたら』by小池真理子

2020年01月28日 | 小説レビュー
『望みは何かと聞かれたら』by小池真理子


二〇〇六年二月、夫と娘と暮らす槇村沙織は過去を共有する秋津吾郎と曇天のパリで再会する。
一九七二年、彼女の属するセクトは市民社会の破壊と再生にむかって突き進んでいた。
革命活動という名の狂った坩堝。アジトから脱走したわたしを救ってくれた青年との闇の時空は、不思議な静謐と確かな充実に満たされていた。
そして、いま…。名作『恋』を超えた「愛」の形を描く著者最高傑作。「BOOK」データベースより


著者である小池真理子さんは、1952年生まれであり、まさに学生運動が先鋭化・過激化していく過程の中で青春時代を送った世代です。

それだけに書かれている内容はリアルに感じますし、1971年生まれの私にとってみれば、自分が生まれた年の前後に、「よど号ハイジャック事件(1970年3月)」、「上赤塚交番襲撃事件(1970年12月)」、「印旛沼事件(1971年8月)」、「山岳ベース事件(1971年12月 - 1972年2月)」、「あさま山荘事件(1972年2月19日 - 2月28日)」など、京浜安保共闘(日本共産党(革命左派)神奈川県委員会)や、連合赤軍(日本の極左テロ組織:共産主義者同盟赤軍派(赤軍派)と日本共産党(革命左派)神奈川県委員会(京浜安保共闘)が合流して結成)ら、過激な極左思想を持つ若者が日本中で暴れまわっていたなんて、とんでもない時代に生まれたもんですね。

小池さんの作品である『』や、『無伴奏』などでも、学生運動などのことに触れておられるように、ご自身の青春時代の思い出は学生運動と重なる部分もあったのでしょう。

さて、この作品では、主人公の女子大生が、ちょっとしたきっかけから学生運動にのめり込み、戸惑いながらも、ついには『無差別爆弾テロ』を企てる、革命グループの中心メンバーにまで成り上がってしまい、いよいよ計画が煮詰まってきたあたりで内ゲバが発生し、怖くなってアジトから逃走するというお話で前半が終わります。

物語の肝は、ここからで、身一つで命からがら逃げ出してきた主人公を保護する若い学生との奇妙な二人暮らしが始まり、後半戦に突入していきます。

そして、当然のごとく別れが訪れ、司直の手に掛かる主人公、そしてその後の平穏な生活へと続いていき、エンディングでは奇跡的なことが起こります。

まぁ、ストーリーや主人公の心理、そのほかの登場人物たちの思想や行動に対して、ほとんど共感できる部分はなく、好感も持てません。

エピローグでも、老いた二人がとんでもない生活を送り始めて、その現実離れした思考回路に辟易してしまいます。

小池さんが伝えたかったものはなんなのか?巻末に重松清さんがとても素晴らしい解説を書いておられますが、かえってそれが提灯記事のように感じられ、余計に残念な気持ちになりました。

小池さんファンの一人としては、少し残念な小説でした。

★★☆2.5です。